第1話 英雄の卵─誕生─
──大都市ソフィアの町。この物語はこの町の片隅にある、普通の一件の民家から始まります。
そこに住まう少女トウカちゃん。
彼女は指では数え切れないぐらい、たくさんの人を助けた英雄達の物語。そんな英雄に憧れる、普通とはちょっとだけ違う。可愛らしい女の子です。
しかし悲しいことに、トウカちゃんはその夢を語る度に笑われておりました。彼女はいつも真剣に夢を語っていたのに……誰も叶うとは思ってはいなかったのです。
この世界の
彼女が読んできた物語の書き出しは、決まってこうでした。
『高名な占い師に見初められし英雄の卵◯◯が、◯◯に生まれた』っと。
いにしえより、この書き出しは世界のルールになっているらしく、これ以外の書き出しで英雄を語ると、重い罪を与えられるのです。それは何の為なのかは誰も分かりません……。
よって、過去の英雄が
──そしてある日、英雄を夢見ていたトウカちゃんに奇跡が訪れたのです!
「──トウカ、起きなさい! あなた宛に手紙が届いてるわよ!」
「うん~……。後もうちょっとだけ寝かせて……」
窓からが差し込む暖かい陽だまりが、とても気持ち良さそうです。
昨晩、夜ふかしでもしたのでしょうか? トウカちゃんの目が中々開きません。涎を滴ながらも、とても気持ち良さそうに寝続けています。
しかし、トウカちゃんのママはそんなには甘くはありませんでした──!
「──起きなさいって……言ってるでしょ!」
トウカちゃんのママは、そう言葉にしながら彼女が寝ていたベット事、トウカちゃん共々思いっ切りひっくり返したのです……。しかもそれは、一握りの手心も加えずに……。
「いたた。ヒドイよママ……僕が何かしたかな? いくらなんでも、これはやり過ぎだよ……」
「何をしたのか聞きたいのはこっちよ! この手紙、何をしたらこんな所から手紙が来るの!」
手紙? トウカちゃんには一切身に覚えがありません。文通をしたことも、それどころか、今月のお小遣いもピンチだったのです。
トウカちゃんはママから手紙を受け取り、差出人も見ずに、中身を確認したしました。その内容に彼女は驚き、先程までの眠気が嘘みたいに目が覚めたのです。
「──や、やった……。やったよお!」
手紙には『占い師により、貴殿英雄の才が見出された。手紙を持ち、ソフィア城に来る事』と、書かれておりました。
これは彼女の夢が叶うかもしれないチャンスです。トウカちゃんは沢山思いを巡らせます。
「──高名な占い師に見初められし英雄の卵トウカが、ベットの上から生まれた……なんてね。ってあれ? ちょっとカッコ悪いかな?」
嬉しさのあまり妄想を、つい口にしちゃいました。すると、それを聞いていたお母さんが口を歪めます。
「良いから早く説明してくれるかしら? あなた宛に、城から手紙が届いた理由を……」
トウカちゃんのママは、拳を握りしめました。そんな姿を見て、慌てるように説明を始めました。英雄の卵も、ママには勝てないのです──。
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