小さき幼女の英雄譚─短編─

リゥル(毛玉)

プロローグ ─チュートリアル─

「──おいおい……。こんな奴が、何でチュートリアルに出てくるんだよ……」


 物語の主人公トウカちゃんの、先程結成したばかりのパーティーメンバー、物知りのヌイ君から悲痛な叫びの声が上がりました。

 彼が驚くのは当然です。まだ最初の町を出て然程さほど経っていないのに、目の前には身長が二メートルを越すだろう巨大なウリボウの姿があるのですから……。


「とても……大きいね。でも大丈夫、ボクに任せて! この召喚士様から頂いた、伝説の武器を使えば!」


 トウカちゃんは、背中に背負っていた伝説の装備を手に取りました。自分の背丈ほどある純白の武器を構え、相手の動きを警戒しています。


「こら、流石に無理だから! 急いで逃げるぞ、こんなの勝てるはずが──」


 なんと言うことでしょう! ヌイ君の台詞が言い終わる間も無く、目の前の化け物はトウカちゃんめがけ、走り出したのです。


──トウカちゃん達に戦慄せんりつが走ります。


 トウカちゃんの身長を優に越える化け物は、彼女のすぐ手前まで来てしまったのです……。もう避けることは出来ません。


「避けれないし、やることは一つだよね?」


 トウカちゃんは構えていた武器を、振り上げました。その姿を見たヌイ君は腰を抜かす程驚き、その場に座り込んでしました。

 なんと、その一撃の威力は地面を抉り、目の前の化け物を木っ端微塵に粉砕し、肉片へと姿を変えたのです……。


「なっ……!」

「流石……伝説の武器だね。思ってた通り、すごい強いや!」


 驚きの声をあげたヌイ君に向かって、血の雨の中トウカちゃんは指を二本立てました。そして得意気に「ムフー」っと声を上げポーズを取ったのです。


 この物語はそんな一人の小さな少女が、仲間と共に英雄になる夢を叶える為、多くの困難に立ち向かう……そんなお話なのです──。

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