第1章 廃惑星テラ

廃墟区画での目覚め

〇〇〇〇―――――〇〇〇〇


『勇者レイト。あなたの次の使命は――――』



…………………………。

………………。

………え?

 次の使命?



 悪夢から目を覚ましたかのようにバッと起きあがった俺の目に映ったのは――――知らない壁と天井だった。

 それは、つい先ほどまでいたはずの剣と魔法の異世界パルキュイアではありえない、人工的な化学素材で作られたかのような壁、それに天井。そして天井には照明らしきものが吊るされて明滅を繰り返しており、壁には―――機械端末のようなものが埋め込まれている。


 これってもしかして………。

 現実世界に帰って来たパターン、とか?


 だがそれにしては、照明は不規則に点いたり消えたりを繰り返しているし、壁はボロボロで所々で穴が空いている。そして、俺は床に放り出されるように横たわっていた。



「………起きるか」



 まず、起きて周囲の確認だな。

 起きあがってから気づいたのだが、俺は異世界パルキュイアで身に着けていた片手剣士用の鎧ではなく、くたびれたシャツとズボン。そしてシャツの上にはポンチョのような上着を着ていた。古い服だと分かるが、その着心地はまるで………現実世界で着ていた服と大差ない。


 そして腰には――――円筒状の機械部品のような何かが吊り下げられていた。

 うーん。この形状。………凄い見覚えがある。


 そう。コイツは現実世界で、エピソード1から欠かさず観ていた某SF大作映画の騎士が使っていた武器の………。




 と、その時。崩れかけた扉の向こうから何やら物音が聞こえてきた。なんというか、ガシャガシャ、といった感じの。




「と、とりあえず出てみるか」


 今俺がいるのは、窓の無い小さな部屋。天井には消えかけの照明。壁には端末。

 端末はパネル部分に触れても、ボタンらしき所を押しても反応しなかった。きっと通電していないのだろう。

 だが扉は手動で開けるタイプのようで、部屋から出るのに特に問題は無かった。

 ボロボロの扉を押し開け、通路に出ると、点々と照明が灯されておりとりあえず視界が闇で遮られることは無かった。


 ただ、ガシャガシャ! という機械音は徐々に大きくなってくる。通路の角からだ。


 俺は後ずさりつつ、通路の角を慎重に睨む。

 すると―――出てきたのは1体の〝ロボット〟だった。



「ひ、人型ロボット………?」


 少なくとも猫型ではない。細い脚部による二足歩行で、やや片足を引きずるようにして通路を進んできた。

 俺は思わずそれに近寄ろうとして………そのロボットの手に〝銃〟らしき物体が握られていることに気付いて、もっと後ずさることにした。


 ロボットが銃を持っている。

 少なくとも俺がいた現実世界はそこまでテクノロジーは進んでないし、ロボットに武器を持たせるほど荒んだ世界ではなかったはずなのだが………。


 だが後ずさる俺の靴が、カッと小さな瓦礫を蹴とばしてしまった。

 その瞬間、ロボットの頭部が俺の方を向く。そして目に相当する部位が激しく光った。

 それに警報。



『―――音響センサーが侵入者を感知。排除する』



 やばい!

 絶対に、やばい。しかもこんな丸腰の状態で………!


 ん? 丸腰?


 俺は腰に吊り下げられたままの細長い円筒に目を向けた。もし、こいつが俺の思っている通りなら………。

 腰の円筒を吊り下げ金具から取り上げ、俺はそれを両手で握ると〝剣〟と同じ要領で構えた。


 次の瞬間、ロボットが持つ銃が真っ直ぐ俺に向かって向けられて、そしてその銃口から、レーザーやビームを思わせる眩い光弾が撃ち放たれる。

 光の速さで発射されたはずなのだが、感覚的には余裕で避けられそうだ。

 だが俺は回避しなかった。


 代わりに円筒に取りつけてあったスイッチを押し込み――――その瞬間、円筒の端から――――金色の光輝を放つエネルギーの刃が出現。

コンマ数秒未満で迫る殺人光線を、光の刃で弾き返す。



 それに、この感覚。

 間違いない。この金色の光といい、かつて異世界パルヴィンにおいて行動を共にし続けた相棒、聖剣〝夜明けの牙〟そのものだ。


 つまりこの世界における〝聖剣〟は、この光の剣――――〝レイブレード〟ということになる。



 攻撃を弾き返されたロボットは、直ちに二射目、三射目を発射する。

 だが俺は、今度は正確にそれを打ち返して偏向し、ロボットの頭部と胸部にそれぞれ命中させた。自分の武器の威力から身を守るほどの耐久性は無かったのか、直撃を食らったロボットはボディの各所から火花を散らしながら後ろ向きに倒れる。


「………ふぅ」


 完全にロボットが動かなくなったことを確認し、俺はレイブレードから光刃を消し去った。とにかくも、これで身を守る方法は大丈夫だ。

 それに、


「もしかして………ステータス!」


 そう叫ぶと、視界にホロウィンドウが出現し、今の俺のステータス一覧が表示された。



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【御堂也 玲人】

【Lv.:99】


【HP:298744/298744】

【攻撃力:8001/8001】

【防御力:7410/7410】

【精神力:9122/9122】

【俊敏力:4671/4671】

【幸運:4009/4009】


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【装備一覧】


【武器:レイブレード】

【防具(上下):古い服、古びたポンチョ、フード付】

【防具(足):古いブーツ】

【防具(手):なし】


【装飾品:―――のお守り ユーティリティ・ポーチ】


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【スキル一覧】


「光の支配者」

光属性魔法を極めた者に与えられるスキル。光魔法や光に関わる事象を支配し、制御することができる。フォトンビームなどのビーム兵器のベクトルを支配することも可能。


「絶対剣技」

全ソードスキルを習得した者に与えられるスキル。世界で最も研ぎ澄まされた剣技を振るうことができる。レイブレードなどの剣型武器において最大の威力を発揮する。


「竜騎士」

ドラゴンに騎乗することを許された実力と名誉を持つ者に与えられるスキル。

ドラゴンを操れるものはあらゆる乗り物を操ることができるとされる。宇宙船や宇宙戦闘機などの操縦も可能。



etc………


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 すげぇ。レベルが2上がってるし、値も満タンになってる。魔王を倒したから、だろうか?

 それにスキル一覧の表示も若干変わっていた。【フォトンビーム】や【宇宙戦闘機】などの表示から、この世界の事情もだいぶ分かってくる。


 装備の方は………まあお察しレベルだが、極端に汚いわけでもないし、当座はこれで充分だろう。

 それにしても装備品のお守りは―――――何だっけ?


「まあ、まずはここから脱出しないとな………」


 まずはそれが先決だ。

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