面接の日の夜
帰宅した夫はダイニングに座るとさっそく聞いてきた
「で、どうだった?やるの?」
夜の8時。いつもの帰宅時間よりは少し遅い。2人の子ども達は既に夕飯を済ませて隣のリビングでゲームだ。風呂に入るように声をかけないと終わりやしない。
「うん。やってみようと思う。まあ、時給はナースとしては最低ラインの1200円だけど。しゃあない。勤務時間も自分で決めていいし、学校行事がある時は休んでも早退してもいいっていうしね。条件は悪くないよね。なり手ないのかね」
「ふーん…まあ、保育園看護師なんてあまり知られてないからな。」
レンジで温めたおかずをテーブルに出してやると、夫は自分で冷蔵庫から出したビールを一口飲んだ。
「何時から何時までにするの?
次男の明は4月から小学校に入学する。しばらくは帰りも早いだろう。
「勤務は一応8時半から15時半までにした。明はとりあえずはお母さんに頼むわ。こういう時実家が近いのって便利よね。」
実家は今住んでいる家から歩いて10分ほど、しかも小学校からここまでのちょうど中間点にある。まだまだ元気な母とはなにかと連絡をとり一緒に出かけたりしている。
「ふーん、ま、いいんじゃない?頑張ってみたら。お金のためっていうより楽しみのための仕事って感じだろ」
「ま、そういうことね〜」
夫が出したつまみ代わりのアラレをひとつ口にほりこんだ。からい。
夫は総合病院に勤める医師だ。お互い大学病院で新人として出会い、病院の食堂や酒の席で指導者や患者に関する愚痴を言い合ったりしているうちに意気投合して付き合いが始まり、7年後には結婚に至った。結婚後すぐに夫は隣市の市民病院勤めに代わり、私は1年後に出産を機に看護師を辞めた。
夫は人気のある開業医ほどではないが、同年代の一般勤め人よりは倍ほどの収入がある。実家の近くに一戸建てを購入し月々のローンを支払っても生活には余裕がある。おかげで私は仕事を辞めて子育てと家事に専念できた。
「まあ、せいぜい保育士さんと仲良くね。」
そんな夫の言葉に一瞬、清水先生とその横にいた若い先生の顔が浮かんだが、
「だーいじょうぶ!対人運だけは昔からいいんだから。」
と笑ってやった。
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