第一章 幕開け


夢日記の役割が決まった。


夢で起こったことを書く。-俊一。

嘘の夢を書く。-梨菜。

夢で起こったことと嘘の夢を書く。-叶多。

先輩の残した夢日記を解明する。-一也と舞香。


「よしっ!実行は、明日からだ。今日は、これで解散。」



 部室を出て、廊下を歩きながら、舞香は、一也に聞いた。


「矢崎くん、どうして、私と一緒にやってくれるの?」


舞香に問われ、一也は、応える。


「実際に、夢日記を書いていくのは、何だか、危険な気がしただけさ。これが一番、安全だと、思ったから。」


「そうなんだ。」


一也は、足を止め、舞香を見つめる。舞香は、一也を見上げ、見つめ返す。窓から入る風が二人の髪を乱す。しばらくの沈黙が続く。


見つめる一也の瞳が少し、揺れている。その瞳を見つめながら、舞香は、思った。


『なんて寂しく……悲しい目をしているんだろう。』


一也は、フッと笑みを浮かべると、舞香に、こう言った。


「まっ、焦らず、ゆっくり、やっていこう。松嶋さん。」


「う、うん。」


優しい一也の声に、舞香は、小さく頷いた。


「じゃあ。また、明日ね。」


クルリと背を向け、一也は、先に歩いて行く。


『不思議な人……。』


歩いて行く一也の背中を見つめながら、舞香は、呟く。


「首……いたぁ~。」





第一章 幕開け 【完】

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夢日記 こた神さま @kotakami

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