第一章 幕開け
「それで、その先輩は、どうなったんですか?」
舞香が聞く。俊一は、少しの間をおいて、こう言った。
「この学院の屋上から、飛び降りて、死んだんだ。」
「ええっ!」
俊一の言葉に、舞香は、少し怯えたように、声を上げた。
「夢日記を書き続けると、どうなるか……知りたくないかね?」
声を落とし言う俊一に、一也は、息をつく。
「そんなに危険なら、やめた方がいいんじゃないですか?その先輩も、書いてはいけないと書いているじゃないですか。」
一也の言葉に、俊一は、バンッと、両手で強く、机を叩く。
「矢崎くん!君は、それでも、ホラー研究会の一員かね?!危険だと知りながらも、それを解明していく、それが!ホラー研究会なのだよ。」
「素晴らしい。さすが、会長!」
パチパチと、拍手をする梨菜。
「会長さんよぉ、それで、もし俺達に、何かあったら、その時は、責任取ってくれるんですかね?」
叶多の言葉に、一也と舞香は、深く頷く。俊一は、はぁ-と、深く息をついた。
「君達は、情けない。情けないよぉ。何の為に、このホラー研究会に入ったんだい?責任?そんなの自己責任だよ。」
「無責任な。だいたい、やるとしても、この中の誰がやるんです?」
一也がそう言うと、俊一は、腕を組んだ。
「5人、みんなでやるのさ。だったら、文句はあるまい?えっ?ノッポくん。」
「矢崎です。」
冷めた口調で、一也は、言った。それを無視して、俊一は、話を続ける。
「そこでだ。ただ、みんな同じことをするのは、面白くない。でっ、考えたのだよ。一人は、普通に、夢日記を書き、一人は、嘘の夢の話を書く。そして、一人は、本当の夢と、嘘の夢を書く、一人は、人から聞いた夢を書く。その場合は、聞く相手にも、夢の内容を書いてもらう。そして、残りの一人は、この先輩の夢日記を解読する為、情報を集めるのだ。」
「面倒くせぇ。特に最後のヤツ。」
叶多は、はぁ-と、息をついた。
「面倒臭くても、やるのだよ!」
黙って聞いていた一也が俊一に、こう言った。
「人から聞いた夢を書くというのは、やめましょう。そんな頼みを聞く人もいないだろうし、部に関係ない人を巻き込むのは、マズイと思うんです。先輩の日記の謎を解くには、一人では、やはり、厳しいと思うので、これは、二人でやることにしませんか?その役目は、俺と松嶋さんとで引き受けます。どうです?会長。」
うんうんと頷きながら、俊一は聞いていたが一也の手をガッと掴むと、瞳を輝かせた。
「素晴らしい、素晴らしいよ、君は!ノッポくん、それで、いこう!」
「矢崎です。」
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