第一章 幕開け


-ホラー研究会部室-


校内の一階の奥にある小さな教室。ここは、ホラー研究会の部室である。俊一と梨菜に連れられ、この部室へと来た一也と舞香は、机の上に置かれた入部届けを前に、ポワンとしていた。


「さぁさぁ。これが入部届けだ。これに、サインをしたまえ。」


そう言った俊一に、一也は、強く息をつく。


「俺達、まだ、入部するとは言ってませんよ。」


一也の言葉に、梨菜は言う。


「そう?松嶋 舞香さんは、サインしたわよ。」


入部届けに書かれた舞香の名前に、彼女の方を向き、一也は眉を寄せた。


「サインしたのか?」


「うん♪何だか分からないけど、面白そうだし。」


呆気に取られる一也の肩に、ガバッと両手を置き、俊一は少し、泣きそうな顔で言う。


「部員が5人以上いないと、このホラー研究会は、廃部になるのだよぉ-、君!我が部を助けると思って、頼むよぉ-。」


「部員5人……って、他にいるんですか?」


「いる。一人。君で、5人だ。」


一也は呆れたように、息をついたが、仕方ないという顔をした。


「まっ、いいですよ。入部します。」


「そうか!ありがとう!君達は、神だ!!デコボココンビ!」


「いや、コンビじゃありませんから。」


一也は、入部届けに、サインをする。それを受け取り、俊一は、梨菜に渡す。


「さぁ-、梨菜くん。これを今すぐ、担当に持って行くのだ!大至急で頼むよー!!」


「了解であります!!」


入部届けを手に梨菜は、ビュンと、風のように去って行った。慌ただしい二人に、一也は、疲れたように息をついた。


「ところで、会長さん。あと一人の部員さんは、どこにいるんですか?」


「うん?彼なら、さっきから、そこにいるよ。」


俊一が指を指したのは、一也の座る向かい側の席。薄暗い部室の中、ぼぉーと浮かぶ影。


「うわっ!」


驚き一也は、声を上げた。


「彼は、1年B組の、武内 叶多(たけうち かなた)くんだ。君達の10分前に部員になったのだ。」


「10分前……………。」


叶多は、チラリと、一也と舞香を見る。


「よろしく。」


ボソリと呟いた叶多に、舞香は、明るく言った。


「松嶋 舞香です。よろしくね。」


「矢崎 一也。よろしく。」


少し長めの茶髪に、口元にマスクをつけた叶多。俊一は、部室の上座であろう椅子に腰を掛ける。


「こんなにも早く、部員が揃うとは、さすがだ!我がホラー研究会。」


あはは!と笑う俊一。


「いや、半分、無理矢理だから。」


一也は、呆れた顔で俊一を見た。

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