第一章 幕開け


 入学式が終わり、新入生達は、各クラスに戻る。席は。まだ決められておらず、各自、適当に座っていた。


クラスの中を見回し、一番、後ろの席に一也は、腰を下ろした。


「あのぉ。さっきは、ありがとう。」


「えっ?」


窓の外を見ていた一也は、声を掛けられ、そちらを向いた。舞香が隣の席に座り、にっこりと笑っている。


「ああ、君か………誰だっけ?」


そう言った一也に、ズコッと机でコケる舞香。


「松嶋 舞香だよ。あのピョンピョン跳ねてたぁ-。」


舞香が言うと、一也は、フッと笑った。


「分かってるよ、わざと言ったんだから。」


「もぉー……。」


コイツはーと見つめる舞香に、一也は、ボソッと言った。


「矢崎 一也。」


「へっ?」


「俺の名前。」


そう言って、にっこりと笑った一也に、一瞬、ドキッとなる舞香。


「ところで、松嶋さん。ここの席で、いいの?」


「えっ?」


「座った席で、一学期、過ごすことになるよ。ほれ。」


一也は、そう言うと、黒板を指差す。舞香が、そちらに、目を向けると、


『最初に座った席で、一学期を過ごすこと。』


そう書かれてあった。愕然とする舞香。


「こ、黒板……見えない。」


「ここの席の列、男子、多いしね。」


シュルルルル-と、舞香の魂が抜けるような音がした。

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