第一章 幕開け
美しい花を咲かせた桜の木から、ヒラヒラと花びらが舞い散り、まだ肌寒いが心地好い風の吹く、4月上旬。
新しい制服、新しいカバン。期待と不安を抱きながら、一年生達が学院の門を通って行く。
その中に、一人の少年の姿があった。
彼の名は、矢崎 一也(やざき かずや)16歳。
地元を離れた高校へ入学した一也は、学院の寮に入り、そこから通学することになった。
短く切った黒髪に、スラリと背の高い一也は、学院の中へ入り、廊下に貼り出された、クラス分けの表の前に立つ。
「えーっ……と。俺のクラスは………。」
わんさかいる新入生の後ろで、一也は、自分のクラスを探す。
「……あった!1-Cか。」
呟く、一也の隣で、ピョンピョン跳ねてる一人の背の低い少女がいた。長い髪を二つ結びに三つ編みにし、瞳の、くりくりと大きな少女は、眉間に皺を寄せ、何度も、ピョンピョン跳ねている。
「み、見えないって!」
その少女を見て、一也は、声を掛けた。
「君、名前、なんて言うの?」
一也の声に、跳び跳ねるのを止め、彼を見上げる少女。
「えっ………?」
「名前だよ。な・ま・え。」
そう言われ、少女は、少し焦ったように言った。
「あっ、わ、私、松嶋 舞香(まつしま まいか)。16歳。松は、松の木の松に…………。」
舞香が、そう言っている間、一也は、表を見渡し、彼女の方を見る。
「1-C。俺と同じクラスだよ。」
「あっ、えっ、そうなの?あ、ありがとう。」
ペコリと頭を下げる舞香。しばらく、舞香を見つめていたが一也は、スッと、そこを離れた。
「ほぇー……。背が高いのね。首、いたぁ-。」
片手で、首を押さえ、舞香は呟いた。
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