第2話「与えられた権利

ヴィア「その驚きっぷり・・・堪らないね」

ヴィアはクスクスと笑う。

ヴィア「坊やは何で裏路地なんかに住んでいたのかな?」

少年「それは・・・」

少年は自分のことを何から何まで全てをヴィアに打ち明けた。

ヴィア「ふふふ」

少年「なんだよ、何笑ってんだよ」

ヴィア「いやねえ、ぼうやが何か言う度に右肩の不恰好なジャガイモが動くもんで可笑しくて・・・ふふ」

俺は生まれつき右腕が無かった。いわゆる奇形児だったのだ。

少年「悪かったな、不恰好で」

ヴィア「笑ってすまなかったね、ぼうやは右腕が欲しいかい?」

少年「は?」

ヴィア「だから」

そう言ってヴィアは懐から小瓶を取り出す。

ヴィア「欲しいのか欲しくないのか、だ」

少年「・・・・・欲しい」

ヴィア「そうか、ならばあげようその代わり・・・」

少年「?」

ヴィア「私をお母さんと呼びなさい」

少年「はぁ!?・・・・ふざけてんのか」

ヴィア「大真面目さ」

少年「・・・・・」

ヴィアを無言で睨みつける少年。

ヴィアその様子をニヤつき伺う。

ヴィア「この小瓶にはホムンクルスの幼体が入っているの」

少年「それがどうしたって?」

ヴィア「今は腹の中の胎児みたいな状態、コレから右腕を切り離し培養すれば・・・」

少年「俺の右腕に成ると?」

ヴィア「そう、ここまで言わせておいて要らないとは・・・」

チラッとこちらを見るヴィアの物欲しそうな目。

少年「ちっ・・・用意周到な魔女め」

少年は観念したようにヴィアを見据える。

少年「腕をくれ・・・か、かか」

ヴィア「か〜?」

ヴィアがしゃがみこみ少年の顔を覗き込む。

少年「か・・・・・母さん・・・っ」

ヴィア「良く言えました」

ヴィアは急に優しい声になりギュッと少年を抱きしめた。

初めて知る人肌の温もり、荒みきった心を癒す様な優しい抱擁。

少年「くそ・・・」

胸がキュッとなる。

少年「なんだってんだよ・・・何でこんなに、染みやがるんだ」

ヴィア「大丈夫、もう辛くないよ・・・ずっと私がそばにいてあげるからね」

少年「クッ・・・・」

耐えきれず少年は泣き出した。声は出さずただ静かに涙を流した。

数分後

ヴィア「落ち着いた?」

少年「ああ」

ヴィア「ぼうやはね、魔女と出会ってある権利を与えられたんだ」

少年「権利って・・・何の権利だ?」

それを聞いてヴィアはフッと笑った。

ヴィア「知る権利さ」

少年「知る?」

ヴィア「愛を、他者を、世界を、真理を、森羅万象全てを知る権利さ」

少年「全てを知る権利、か」

ヴィア「学び、知り、理解すれば自ずと答えは見えてくるんだ

魔術もまた然り・・・ああそれとぼうや」

少年「ん?」

ヴィア「サービスを付けてあげよう」

少年「サービス?」

ヴィア「腕に加えて名前をあげるよ」

少年「俺の、名前・・・」

ヴィア「魔魔術を始めるなら名前と魔導書(グリモワール)も付けるよ」

少年「グリモワールって何だ?」

ヴィア「魔導書、奥義書、悪魔学書なんて呼ばれている書物さ」

少年「それで?」

ヴィア「魔術の指南書かな、召喚術や儀式の作法なんかも書いてある」

少年「教科書みたいなモンだな?」

ヴィア「簡単に言えばそうだね」

少年「是非くれ!」

ヴィア「なんだ、結構積極的じゃない?」

少年「ずっとぼうやが嫌なだけだ、それに」

ヴィア「それに?」

少年「解呪方法を学んで早く首輪を外したいんだ」

「そうか、だったら後で母さんの部屋においでね、儀式をするから」

そう言ってヴィアは自室へと入っていったのだった。

第二部「与えられた権利」終

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