第6話 初めてのスキル獲得

「さて、クエストの方はどうなってるかな?」


 優斗は早速スキルボードを取り出した。

 すると、


「おおっ!!」


○優斗(18)

○レベル5→7

○スキルポイント:6→8

○スキル

・基礎

 └筋力Lv0 NEW

・技術

 └剣術Lv0 NEW


 レベルが2つ上昇した上に、スキルが新たに出現した。


「スキルが来たぁぁぁ!!」


 まだダンジョンの中だというのに、優斗は大声を上げた。

 それも無理はない。

 これまで優斗は、習熟さえすれば必ず出現すると言われているスキルさえも、1つも取得出来なかったのだから。


 しばし歓喜した優斗は、冷静さを取り戻して分析する。


「このクエストって、報酬に種類があるのか」


 一つは、クリアすると経験とスキルポイントが貰えるクエスト。

 もう一つは、経験とスキルポイントに加え、スキルが貰えるクエストだ。


「クリア報酬も、クエストの難易度によって少し変化があるみたいだなあ」


 今回のクエストは、討伐数がとても多く、クリアするまでにかなり時間がかかった。

 その分だけ、デイリークエストよりも多くの経験とスキルポイントが貰えた。


 その上、新スキルが2つだ。


「やっと、このスキルポイントの意味がわかったな」


 新しく入手したスキルの横に、上昇マークが付いている。

 ここを押すと、レベルが上がるのだ。


 無論、ただで上がるわけではない。

 スキルのレベルを上げるためには、このスキルポイントが必要なのだ。


「よしっ、さっそく念願の振るぞ!」


 気合を入れて、優斗はスキルにポイントを振り分けた。


○優斗(18)

○レベル7

○スキルポイント:8→2

○スキル

・基礎

 └筋力Lv0→Lv2

・技術

 └剣術Lv0→Lv2


 レベルアップに必要なスキルポイントは、レベル1が1ポイント。レベル2が2ポイントだった。

 このことから、上昇させたいレベル数が、上昇に必要なポイント数だと推測出来る。


「1ポイントずつ上げられるものだと思ってたけど、まあ、そんな上手い話はないか」


 スキルレベルは、その技術の習熟度によって変化する。

 具体的な強さの指標は、大まかに冒険者ランクと紐付けられている。


 Lv1=E Lv2=D Lv3=C

 Lv5=B Lv6=A Lv7=S


 無論、このスキルレベルになれば対応する冒険者ランクに上がるわけではない。

 これはあくまでスキルの程度を判断する、1つの指標である。


 今回、優斗は筋力と剣術がそれぞれレベル2に上昇したが、これはDランク冒険者並だ。


「……大丈夫かな?」


 あまりに簡単すぎて、逆に疑わしく思えてくる。

 だが、優斗はこれまで10年間も下積みを続けてきたのだ。


 その下積みなくば、まる1日ぶっ続けで五百体のゴブリンを、手傷も負わずに倒すことは出来なかった。

 諦めることなく、歩み続けた過去があったからこその、今なのだ。


「よしっ。じゃあ、そろそろ帰るかな。――っと、その前に」


 新たなゴブリンが2体、通路の奥から現われた。

 優斗はその姿を見て、口元をつり上げた。


 折角の機会だ。

 レベルを上昇させたスキルの具合を、このゴブリンで確かめる。


 優斗が剣の柄に触れた。

 その感覚に、優斗は目を見開いた。


(ぜ、全然違う……。すごい! 剣が手に吸い付くみたいだ)


 まるで、優斗のためにあつらえたかのように、柄がぴたりと優斗の手にピタリと吸い付いた。


 鍔を親指で弾き、鞘から抜く。

 剣は鉄製だ。全体でおおよそ2キロはある。

 だが、まるで木の枝でも持ったかのように、剣が軽かった。


 ――筋力レベル2のおかげだ。


「「ゲギャゲギャ!!」」


 威嚇するゴブリン目がけて、剣を横に一閃。


「――ッ!」


 体が、想像以上に軽やかに動く。

 これまで感じたことのない強さで、剣が2体のゴブリンの胴を切り落とした。


 残心を解いて、血振をしてから長剣を鞘に収める。

 振り返った優斗は、


「うわぁ……」


 自分のやったことだというのに、思わず引いた。


 優斗が手にしている剣は、腕に良いドワーフ鍛冶師が作ったとはいっても、最も安いものだ。

 その上ゴブリンを五百体も切り倒してきたため、折角研いだ刃はほとんど潰れている。


 にも拘らず、まるで高級な剣を使ったかのように、ゴブリンを切り裂いてしまえた。

 それも、胴を一度に2体もだ。


「スキルって、すごい……」


 スキルの有無を、優斗はアリアリと実感したのだった。




 地上に戻ると、既に太陽が落ちていた。

 神殿には煌々と、魔術の灯りが灯されている。


 優斗はダンジョンの入り口から、ギルドの買取カウンターに向かう。


「すみません。買取をお願いします」

「はい。それではギルドカードと、こちらに品物をお願いします」


 受付が、買取査定用のお盆を優斗に差しだした。

 それに優斗は首から提げたギルドカードと一緒に、ゴブリンの魔石を乗せる。

 

 ゴブリン五百体分の魔石はかなり多かった。

 だがギリギリ、お盆からはみ出ない。


「た……ただいま査定いたしますので、少々お待ちください」


 若干顔を引きつらせた受付が、魔石を零さぬようそっとお盆を持って奥に消えた。

 ――しばし後。


「お待たせいたしました。こちらが今回の査定になります」


 受付が、両手で抱える程の麻袋を持って現われた。

 ここまで、優斗はおおよそ10分は待った。


 いつも優斗が狩る量であれば、1~2分で査定が終わる。

 それだけ今回は魔石の数が多かったのだ。


(なんせ、ゴブリン五百体を1日で狩ったのなんて、初めてだからなあ……)


 いくら最弱モンスターの1匹とはいえ、1日で五百体狩るなど尋常ではない。

 迷宮都市クロノスにおいても、1日五百体の魔物を倒した冒険者は、そういない。


「今回頂いた魔石は、すべてゴブリンのものと確認いたしました。魔石1つにつき、相場通り10ガルド。全部で502個ございましたので、5020ガルドでの買い取りとなります」

「おおお!」


 優斗は歓喜に沸いた。

 優斗の冒険者人生で、たった一人で稼いだ額として最高記録だ。

 それも、これまでの最高記録を優に5倍は上回っている。


 クロノスでは、最低100ガルドあれば食事が食べられる。

 優斗はさらに格安のお店を見つけ、1食50ガルドまで抑えている。


(食事換算で100日分だ、すごい!!)


 これで、しばらくは食事の心配をしなくて済む。

 優斗は安堵の息を漏らす。


 優斗は報酬と、ギルドカードを受け取り、ほくほく顔で神殿を後にした。




 部屋に戻った優斗は、そのままベッドに倒れ込みたい衝動をぐっと堪える。


 体はもう、くたくただった。

 このままベッドに倒れ込めばどれほど気持ち良いだろうと思う。


 だが、まだ今日のデイリークエストが終わってない。


○デイリークエスト

・腕立て伏せ×100(0/100)

・腹筋×100(0/100)

・背筋×120(0/120)

・スクワット×100(0/100)


 ランニングについては、家を出た時と、戻って来た時を含めて終わらせている。

 このクエストは一度にすべてクリア出来なくても、行った分だけカウントされるのだ。


 休み休みでも行えるのはありがたい。


 さておき、優斗は疲れた体を押してデイリークエストを消化した。

 クタクタになった体をベッドに預けて、泥のように眠るのだった。



>>レベル7→8

>>スキルポイント:2→3

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