第4話180度の大変化?幼なじみが激甘です!
あの日、久しぶりに家に隼颯が来た時から。
いや、あの日私が着替えて部屋から出てリビングに戻ってから。
隼颯の態度が一変した。
見た目はチャラい隼颯が昔の隼颯みたいに、優しくなった。
いや、あれは少し違う…。
まるで恋人を扱うかのように、甘く優しくなった。
その笑顔は元々のイケメン顔が最大限生かされてる感じで、いくら見慣れた幼なじみと言えど心臓に悪い…。
不意打ちの優しさと甘い笑みにドキドキと心臓が騒ぎ出す。
きっと私の顔は赤くなってる……。
そんな私の反応にも嬉しそうに笑うから、私はなんだか勘違いしそうになる。
もしかして、って期待しちゃう。そんなことあるわけないのに……。
アップルパイを食べ終わる頃には、私は落ち着きを取り戻し軽いため息をついた。
すると、隼颯が聞いてきた。
「なんで好物食べたのに、暗い顔してため息なんてついてんだ?」
私の横に流していた前髪のズレた部分をサラッと払って、私の顔をのぞき込んでくる。
ビクッと肩を揺らせば、隼颯は少し傷ついたような顔をするので私は内心驚いた。こんな隼颯、私は見たことがない……。
「別になんでもないよ。これからちょっと忙しくなるから。頑張んばきゃて思いつつ、少し気が重いのもあって自然と出ただけ」
だから、私はそう言って誤魔化した。
本当はこの素直になれない、諦めきれない複雑な恋心のせいだけど。
仕事が忙しくなるのも、主役級の声あても初めてで気が重いのも確かだから。
「でも、やっと掴んだから頑張るよ」
隼颯は私の言葉に目を丸くして聞いてきた。
「もしかして、なにか役が決まったのか?」
「うん。まだ発表前だから詳しくは言えないけどね。やっとメイン級の役を出来ることになったの」
照れつつも今日の結果を踏まえて言えば、驚いた後に喜んでくれる。
「良かったじゃないか!ずっと目指してた目標が叶ったんだな」
そう優しく笑って言ってくれた。
「うん。やっとスタートラインに立てたよ」
私も嬉しさをこらえきれずに答えた。
「なにかお祝いしてやらないとな。なにが良い?」
そんな風に問いかけてくる隼颯は帰ってきた当初と随分違う態度。
でも、この優しい感じは私が元々知ってる隼颯だ。
なんだか、嬉しくなってついつい口をついて出てしまった。
ずっと憧れていたこと……。
「隼颯の車でドライブしたい!」
思い切った私の言葉に、隼颯はサックリ答えた。
「そんなこと、お祝いじゃなくても叶えてやるよ。むしろ紗友里を俺の車に乗せて出かけたいしな。よし、次の火曜休みか?」
私はパラパラと手帳をめくりスケジュールの確認をする。
来週の火曜は私もちょうどオフだ。
「大丈夫、仕事休み」
隼颯は私の返事にニコッと微笑むと
「じゃあ、来週の火曜に決まりな! ドライブデート」
言うだけいうと、おもむろに立ち上がった隼颯は甘い笑みを浮かべて近づいてくる。
「じゃあ、俺明日は朝早いから。またな! おやすみ紗友里」
すれ違いざま、私のつむじにキスを一つ落として隼颯は隣の家に帰って行った。
思いもよらぬ隼颯の行動に私は真っ赤になって熱くなった顔を両手で覆ってソファーにズルズルと沈み込むのだった。
「なんで、急に甘くなったの? デートだなんて……。私、からかわれてる?」
なんてブツブツしていたら、いつの間にか家に帰ってきててこの様子を見ていた妹、紗月に突っ込まれる。
「ブツブツ言ってるけど大丈夫? しっかりしてよ、お姉ちゃん!」
と言われてしまった。
「お風呂、入ってくる……」
そう呟いてフラフラとした足取りでお風呂場に行った私は聞いてなかったが、リビングでは母と妹が語らっていた。
「やっと隼颯兄動き出したか!」
「あの二人、両想いのくせにじれったいわよね!」
なんて、家族に言われているのを私は知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます