『小さなお話し』 その21の5
赤銅いろの、ばかでかいお月さまが、真上に差し掛かろうとしていた。
かれら、『地球ごき』には、当たり前の風景だったが、かつての地球人類が見たら、ぞっとしたに違いない。
いや、かつての『地球ごき』、も、同様だったはずである。
地球の大気が、かなり変貌していて、やたら、赤い色だけを通過させていた。
第一に、月が、地球のより近くに来るようになっていたのだ。
これらは、宇宙人たちの仕業である。
月の引力が、彼らにとって、重要な何かをもたらしているらしいことは、地球ごきも想像していたが、詳細はわからない。
人類が生き延びていたら、わかったかも、しれないが。
『理由がわかれば、苦労なんかしないさ。でも、さあ、もう、真上に来る。なにがおこるんだ?』
今夜は、スーパームーン、というわけではなかったが、なかなか、迫力がある。
教授と弟子は、月と、その不可思議な光に反射するモニュメントを、ずっと下から見上げていた。
『あ、教授、あれ!』
『ああ、見えてる。なんだか、あかりが灯ったみたいだ。』
モニュメントが、次第に強く、白色に輝き始めたのだ。
地球ごき、は、こうした技術は使わない。
しかし、ノミ・スギー星人たちは、こうした明かりも使うし、かつての地球人類も、似たようなものを利用していたらしいことは、残された数少ない資料から、窺える。
まもなく、塔全体が、明るく輝き、上方に佇む、『ごき大将』と、『やましんさん』の姿を、夜空に、まるで実際に空中にいるかのように、美しく、浮かび上がらせたのである。
だれも、見ることもなく、このモニュメントは、長く同じことを、繰り返していたのだろうが、その以前には、『ごき』や、『にゃんこ』や、『わんこ』や、『人』たちが、集まって、楽しく眺めていた時期も、きっと、あったのだろう。
『む、下側に、なにか、あるな。』
上側ばかりに気をとられていた弟子に、教授が指摘した。
確かに、モニュメントのずっと下側に、赤い光が浮き彫りのように、輝いていた。
『なんだろう?』
ふたごきは、その光に近寄って行った。
トラッシーと、ジェニファーは、地面の上で、はんぶん、うたたねをしていたが、ふたごきが動くと、立ち上がって、それに、ついていった。
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