第16話 小南のお願い1
「ご注文が決まりましたらお呼び下さい」
爽やかな笑みを浮かべた店員さんに俺は軽く会釈する。
まさかほんとに並ぶとは…………行列を見て新薗か小南のどちらかが『別の店にしよう』と 諦めてくれることに
俺はメニュー表を手に取り、ざっと目を通す。
でもまあ待ち時間に新薗の誤解も解けたし、
メニュー表を戻し、向かいに座る小南と新薗に視線を移す。一つのメニュー表を二人で食い 入るように見つめ、あれもこれもどれも捨てがたいと決めかねているよう。カンカン照りの空 の下に肌をさらしてたってのに、呆れるくらい元気だな。
……今更だが初めて見るな、二人の私服姿。
小南は存在感を
「…………なに?」
ジロジロと観察していたのが新薗に気付かれ、射るような眼差しとぶつかる。
「え?あーいやその…………二人が仲良かったのが意外だったから」
当たり障りのない言。しかし意外に思ったのは嘘ではない。最初から気にはなっていた。
「んー仲良くなったのは最近かなー。紡希経由だよね」
「ええ、そうね。たまたま三人会う機会があってそこから」
「そうそう」と首を縦に振る小南はそのまま流れ作業のように近くを通りかかった店員さんに「注文いいですか?」と呼び止めた。
「あたしこの
「私も美波ちゃんのと同じでいいわ」
「あ、じゃあ二つお願いします!」
球磨熊スペシャルとやらを指定した二人、残る俺も特に
「んんッ!―それじゃ本題なんだけど……お願い花川!あたしに協力して!」
店員さんが去るや否や、わざとらしい咳ばらいを一つ挟んだ
「……単に協力と言われても、内容を聞かない限りはなんとも……」
箱の中身がわからない以上、断ることも応じることもできない。ただ漠然とした不安を覚え るだけ。
俺が協力要請した時、練馬達も同じ心境だったんだろうな。
「ごめん気持ちが先走り過ぎた……明後日に花火大会があるじゃん?それであたしと冬華と 紡希の三人で行くんだけど……がっくんともう一人誰か誘って花川も来て欲しいの!で 『え!めっちゃ偶然じゃん!』から『せっかくだから一緒に!』てきな感じで一緒に行動し てほしいの!」
小野町さんも来ると知って俺の中で期待と不安が
「それだけですか?」
「それだけなわけないじゃん、寧ろここからが重要!ある程度一緒に行動したらあたしが男 女同人数を利用して男女のペア三組作ろうって持ちかけるから花川と、それからもう一人来て もらう男子には賛同してもらいたいの。冬華も協力してくれるし、そうすれば多数決で押し切 れるはず!」
そこまで聞いて俺は理解した。小南の望みに。
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