NEW YORK

CKレコード

NEW YORK

俺はNEW YORKに行った事が無い。


学校の授業で社会科の勉強を始めた息子から、


「ねえ、お父さん、世界で一番の都会ってどこ?」


と質問を受けた。



俺は迷わず


「いいか、ボウズ。そいつは、NEW YORKだ」


と答えた。

だが、俺はNEW YORKに行った事が無い。


「ねえ、今度の土曜日、NEW YORKに連れてってよ」


NEW YORKは、そんなディズニーランドみたいに気軽に行ける所じゃねぇんだよ。なんてったって、海を越えなきゃいけないんだぜ。太平洋経由なら、あの広いアメリカ大陸も横断しないといけねぇんだ。


「ああ、わかった。今すぐ行こう」


俺は息子の腕を掴み、車まで引っ張った。


ルー・リードのNEW YORKというアルバムのCDを、車のオーディオシステムに突っ込む。バカでかいギターのイントロが響いた後、1、2、3とカウントが入り、そこから最高の演奏が始まる。


車はすでにハイウェイに突っ込んでる。


「おい、目、瞑れ」


「目、瞑れや」


「目、開けるなよ」


「目、瞑れって」


「目、瞑っとけや」


「目、絶対に開けんなよ」


「喋るんじゃねぇ」


アルバムの三曲目、最高の曲、ダーティー・ブルバードがかかり、ルー・リードが「GET OUT」と抑え気味にシャウトする部分に差し掛かった時、息子の耳元で、


「NEW YORKに着いた」


と囁く。


「目、開けんなよ!」


俺はNEW YORKに行った事が無い。

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