第27話
神ノ原が登場した途端そこは僕らが夜空を見ていた場所ではなくなっていた。そう。場所が変わったのだ。いや空間が変わっているのか?つっこみどころしかないが今更神様につっこもうとは思わない。こいつは弱体化しているとはいえ規格外なのだ。レベルというか人種が違う神様なのだ。もう何も言うまい。とにかくそこは仄暗く、神秘的で、どこか安心できる空間に変わっていた。
「ここどこだ?」
「地球の内部だ。そこに無理矢理空間を作ってお前たちを連れて来た」
ほらな。こいつが言うことは議論するだけ無駄なことだ。
「先に行っている。後で追いかけてこい」
そう言って神様は前へ進みだした。先の見えない道だった。
「どうやらそろそろ終わりみたいね」
「馬鹿野郎。終わらせはしない」
「そうよね。だから私少しも怖いと思ってないわ」
と言った佳華の瞳は涙をためていた。
「安心しろ。僕は噓をつくが約束は破ったことのない男だ」
「そうね。そうだったわよね。……あのね悠斗君。私、あの時あなたに傍にいてくれって言われたときとて
も嬉しかったの。それだけで私の人生はいいものだったって思えるほど……私には最高の贈り物だった」
「ああ」
気の利いたジョークも励ましの言葉も思いつかない。もう僕には相づちを打つことしかできなかった。しなかった。でないと何かがこぼれだしそうだったのだ。
「ねえ。悠斗君。私のこと忘れないでくれる?」
変な質問をする奴だ。答えは言うまでもないことだろう?
「もちろんだ」
そう言った瞬間僕はさっきまで彼女といた夜空の下に戻っていた。
これからだ。自分に言い聞かせた。
「いやこれで終わりだ」
ん?誰だ?声が聞こえた方を見るとそこには神ノ原がいた。
「お前何で?」
「そんなこと聞くまでもないだろう?俺は神だ。理由はそれだけで足りる。それより佳華真音からの伝言だ。お前を愛しているだとよ。お熱いな」
「わざわざそれを言うために僕の所へ来たのか?」
「違う。さよならを言い来たんだよ」
「は?」
「さよならだ。鳴宮悠斗」
次の瞬間僕の目の前は真っ暗になった。どこかのゲームみたいに。そのあと取られたのはお金ではなく記憶だったのだがな。
三章完
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