第15話

 放課後、佳華と一緒に帰ることにはなったがなぜだか校門の前で待ち合わせとなった。今日は部活がないはずだ。だとすると僕と一緒に帰るところをクラスメイトに見られたくなかっただろうか。まあ僕には関係のないことだが。


 校門に着くと彼女はすでにそこで僕を待っていた。


「遅い。叩き潰すわよ」


 殺すよりかはましになったのだろうか。


「まあいいわ。はい。お疲れ様」


 と、ジュースを渡してきた。何に対してのお疲れだ?


「永遠に」


「毒でも入れたか?」


 とんでもない言葉を付け足しやがった。


「それは昨日のお礼というつもりではないけれど。それ類のものだと考えてくれていいわ」


「そうか。ならありがたく受け取っておこう」


 今日は空を飛ぶことはなく平和的に帰っていた。いや平和ではなかった。それは


「でね。あの女がね」


佳華が愚痴っていたからだ。平和とはいえない殺伐とした愚痴だった。溜まっていたものが一気に噴き出したのかもしれない。


「だからね。思うのよ。女に生まれて良かったって」


「何でだ?」


「女と結婚しなくていいから」


「皮肉だな」


「あとあなたに会えたから」


 一瞬、こいつ遂にデレたな、と思ったがよく考えたら全然デレてないことに気がついた。随分と紛らわしいことを言う女だ。


「悠斗君に会えたことは本当に感謝しているわ。この能力のことを知っているのはあなただけではないの。何人かに相談したわ。でも全員私のことを利用しようとしている人たちを知って逃げ出したわ。まあ仕方ないわ。怖いもの」


 確かにあいつら得体が知れないし中には空を飛べる人物までいるのだ。怖がって当たり前だ。


「でもあなたは逃げ出さなかった。私の手を握ってくれた。死ぬ気で守ってくれた。それがとても嬉しかった」


「何を言っている?僕はただ逃げるタイミングを失っただけだ」


 身を挺して彼女を守ったと解釈されているようだがそれは心外だ。僕はいい人ではない。悪い人だ。だからそれを訂正した。


「はいはい。あなたがそう言うならそれでいいわ。でもお礼だけは言っておくはありがとう」


 綺麗でおしとやかな笑顔で言った。僕はこの笑顔を守りたいと思ったのかもしれない。

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