第14話
昼休みになり僕はとある部室に行くことにした。と言っても僕はそこの部員ではない。僕は剣の道を行く剣道部だからな。嘘だ。
ガラガラと建付けの悪い化学室の扉を開ける。
「よう。雨嶋」
「鳴宮先輩。こんにちは」
適当に挨拶を交わしそこら辺にある丸椅子に座る。
「ちゃんと来てくれたんですね」
「当然だ。僕は嘘つきだが約束は守る男だ」
そうだ。僕は嘘をつくが約束は破ったことはない。
「それが嘘なのでは?」
「かもな」
ほう。この後輩なかなかやるな。いい心がけだ。僕は信用すべき人間ではない疑うべき人間だ。昨日はかっこつけてみたがそれは変わらない。
「まあ今日は個人的にもお前に用があってな」
「用?」
「実は昨日――」
僕は昨日あったことを雨嶋に噓偽りなく話した。いや多少話をもった。つまり嘘偽りはあったが本質的にはずれてないから問題ないだろう。
「で、お前もそういうのに遭遇したことはあるのか?」
一通り僕を少しかっこよくした昨日の話を話した。雨嶋には「先輩がそんなかっこいいことしたんですか?」と、怪しまれたが気にせず話すことにした。
「いえ。ありませんよ。それにしても皆さんの力は規格外ですね」
「どういうことだ?」
確かにあいつらは規格外だがそれは能力者ならみんな同じじゃないのか?
「私の力はものをちょっと浮かすだけのしょぼい能力です。そんなしょぼい力を利用価値ないんですかね。まあ能力は気の持ちようってところがありますし気持ち次第では私の能力も規格外になるかも」
ん?今何かが引っかかったような……。僕のことだし気のせいか?
「それにしてもお前化学が嫌いだって言ってたが中間テスト何点だったんだ?」
「二十六点」
「赤点じゃないか」
うちの高校では三十点以下はすべて赤点だ。つまり雨嶋の点数は逃れないようのない赤点だ。
「他は?」
「全部赤点でした」
「卒業する気はあるのか?」
「ありますよ。馬鹿なんですか?」
馬鹿はお前だ。
「そういう先輩はどうなんですか?」
「全部八十点以上だった。特に化学は学年二位だったな」
言ってやった。できるだけ憎たらしく。
「先輩って馬鹿そうなのに賢いんですね。気持ち悪いです」
不愉快な感想だ。
「そんなに勉強して何か目標でもあるんですか?」
「まあ、あるな」
「何なんです?」
「警察官」
「え?先輩が警察官ですか?以外」
嘘かもしれないというのにすんなりと信じたな。
「僕はヒーローになりたいんだよ」
と言うと雨嶋の表情が暗くなっていった。
「ヒーローなんていませんよ。結局人間は自分に近しい人間しか助けられないんですよ」
何だ?こいつ。ヒーローに親でも殺されたのか?いや殺したらそれはヒーローではないか。
「訊きますけど先輩が死ぬほど憎んでいる人を助けられますか?」
「ああ。助けるね」
即答した。嘘かもしれないが即答した。
「何でそう言い切れるんです?死ぬほど憎いんですよ」
「誰であれ助けなかったらそれはヒーローではない。それにそっちの方がかっこいいだろ?」
と、当たり前のことを笑顔で語ってやった。随分と下手な笑顔だったけどな。
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