7話 それを言う事によって失われるもの

5000年前、地上の空に君臨していた鷲。


既に伝説上の鳥となっていたが、宇宙ステーション・アントンの警備隊レッドイーグルの背には、誇らしげな鷲の姿が紋章として、在りし日の鋭い目で周囲を見つめていた。


練習用の藍色のレオタード姿の知佳の足が、ゲームに熱中しているの錬の肩に乗った。知佳のふくらはぎが錬の頬に当たった。


「鷲?この星に鷲がいるのかな?」


知佳は、足を錬の肩に乗せたまま聞いた。

錬はチラッと知佳のすらりと伸びる綺麗な足を確認した。


知佳と錬は学年的には同じ学年で、宇宙船内でも、同じグループと見なされることが多い。


「ん?」

「ん?」


錬は目のやり場に困るのだが、それを言う勇気は無かった。

または、それを言う事によって失われるものを恐れたのかも知らない。


レッドイーグル隊が宇宙船の扉口に取り付くと、管制官が沙羅に扉を開けるように要請した。

「正気?」

沙羅は焦った。





『アントン・管制室』


宇宙ステーション・アントンの管理官ケイが待つ、管制室に着いたばかりのヤーシャが入ってきた。


ヤーシャは

「無事、任務完了・・・」

と言いかけたが、ケイはその言葉を遮った。

「まだだ、奴ら往生際が悪い、扉を開けようとしない」


管制室の映像無線モニターに沙羅が映っていた。

目は凛々しく輝いてはいるが、表情はまだ幼かった。


「10数歳か」

5000年も生きた・・・いや、存在しているケイにとっては、短すぎる時間だ。


モニター内の沙羅は、強い視線を投げかかると、

「外には空気が無いから、開けられない」

と伝えてきた。


「空気?」

ケイは独り言の様に呟いた。

ケイとヤーシャは、記憶装置の奥にある遠い記憶を思い出した。


2機のアンドロイドは、遠い昔に肺を満たし体を駆け巡った空気の匂いを思い出すと、微かに思い出し笑いをした。


「そう言えば、我々も昔は呼吸をしていたな」

「はい、懐かしい感覚です。もう一度呼吸をしてみたいものです」

「呼吸か、まあそれ故に、宇宙空間での自由が効かない。

それはそれで面倒だが・・・」



つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、土曜日に更新です O(≧∇≦)O イエイ!!



キャラクター達♪


【沙羅】この惑星に漂流してきた人類の少女14歳。錬の兄が好き♪

【錬】ゲーム好きな人類の少年13歳。

【知佳】躍るのが好きな12歳の少女


【ソフィー】アローン兵と唯一リンクするアンドロイド

【デューカ】ソフィーと同じ職場で働いていた同僚


【参謀1号】ソフィーに忠誠を尽くす参謀タイプのアローン兵

【参謀2号】参謀1号の予備

機械兵には禁止されている人工知能を、獲得しつつある。

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