6話 少女は踊り、少年はログインする。

『大気圏外・人類を乗せた宇宙船』



宇宙船ブリッジ内で、新体操のレオタードを着た12歳の少女・知佳(ちか)は、ボールを上空に投げ、くるりと足を回した後、綺麗に受け取るはずだったが、ボールは錬(レン)の頭に直撃した。


その間、アンドロイドの宇宙船は、人類の宇宙船を取り囲み、静かに接触した。


慣性で動いていた宇宙船は、静かに動きを止めた。

その微かな異変に、宇宙船内を走り回っていた子ども達(知佳と錬以外)は、一斉に沙羅(さら)を見つめた。

その視線に沙羅は、自身の弱さと無力感を感じた。


にも関わらず!錬(レン)&知佳(チカ)は!


錬(レン)は、いつの間にかゲーム機をチェックしていた。

人類の乗る宇宙船内で、未知の数万のゲームソフトが煉(レン)によって発見された。そう、ゲーム少年の錬(レン)に取って、それは空前絶後の発見だった!

もう機械の惑星どころではないらしい。


知佳は知佳で沙羅の目の前で、くるりと足を回した。


「この状況であなたたち・・・」

「今、大切なところだから」

「それはこっちだよ」


13歳の錬(レン)と12歳の知佳(ちか)は、いわば年長組だ。

頼りにしてるのに。


この状況で、アホなの?

まだ幼い子供たちの方が、状況を理解している。


スクリーンモニターに映るヤーシャはニヤけていた。


「ご安心ください。宇宙ステーション・アントンまで、安全に曳航致します。」


 


『首都近郊・地下鉄遺跡跡』


地下鉄遺跡で、アローン兵一個師団を収容し終えた青い視野レンズの参謀兵は、まるで思慮深い老人の様に、空を見上げた。


そして、自分達の思考回路内に、ソフィーでも無く自分達でも無い思考が動き始める気配を感じた。


その存在の背後には、まだ参謀兵も知らない膨大な情報が眠っている気配がした。



『宇宙ステーション・アントン』



沙羅達を乗せた宇宙船は、宇宙ステーション・アントンへと入港した。


沙羅は宇宙ステーション内を、じっと観察した。

「私達のステーションと、さほど違いはなさそう・・・」

と沙羅が思考に耽っている間、錬はまだゲームに熱中し、知佳の投げたリボンはブリッジ内を飛翔し、錬の頭に絡まった。


「避けて錬。もうやれやれだよ」

知佳の言葉に、ゲームに夢中の錬は

「こっちがやれやれだよ!」


それは私の台詞。

沙羅は思いこの後を思考した。


錬&知佳以外の子どもたちは、不安な表情で、外の様子を眺めていた。


宇宙ステーション・アントンの管理官ケイは、港を警備するアントン駐在武官アンドロイド・レッドイーグル隊に、指示した。


「アローン兵の作動は、確認されていないとは言え気をつけろ!」


沙羅達を乗せた宇宙船が港に完全に停泊すると、無重力状態の港をレッドイーグル達は、ゆっくりと近づいてきた。


完全武装したアンドロイドたちは、しっかりとライフルを構えていた。


銃口こそ、沙羅には向けられてはいなかったが、その気配は発していた。




つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、土曜日に更新です O(≧∇≦)O イエイ!!



キャラクター達♪



【沙羅】この惑星に漂流してきた人類の少女14歳。錬の兄が好き♪

【錬】ゲーム好きな人類の少年13歳。

【知佳】躍るのが好きな12歳の少女



【ソフィー】アローン兵と唯一リンクするアンドロイド

【デューカ】ソフィーと同じ職場で働いていた同僚


【参謀1号】ソフィーに忠誠を尽くす参謀タイプのアローン兵

【参謀2号】参謀1号の予備


機械兵には禁止されている人工知能を、獲得しつつある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る