18話 魔法使いソフィー
『渓谷・B地点』 【ソフィーと参謀の直通回線】
参謀はソフィーの記憶を取り込む際に、恐怖のプログラムも取り込んでしまったらしい。
>欠落した記憶って、探せる?
ソフィーは参謀に聞いた。
>捜索任務は、反乱分子鎮圧を主任務とする機械兵の職務の範疇を越えますが・・・
>要するに、やったことが無いから不安?
>確実性及び、安定性に欠けます。
>機械が不安がってどうするの?
>・・・
>ここに居る事自体、アローン兵の職務の範疇を超えている。今更、気にしないで。
とりあえず、ここのアローン兵は、地下鉄遺跡跡に隠しておいて。
機械なのは自分も同じなのだが、不安が危険を予知するために必要な感覚なら、ある程度知能があれば、備わるものか。
アンドロイド社会初期に、プログラム的に恐怖を取り除いた集団のクーデターが頻発したため、アンドロイドの恐怖を取り除く事が禁止された。
恐怖は支配するための道具でもある。
ソフィーは不安げに見える参謀を一目見た後、意識を自分の機体へと戻した。
初めて知る恐怖に戸惑う惑星最強の機械の兵隊か。
『サマルカンドへ至る道』
自分の機体に意識を戻したソフィーは、自分を心配そうに見つめるデューカに言った。
「こんな所で、何ぼんやりしてんの?」
「何してんのじゃねえよ。お前が、ぼんやりしてっから、アローン兵の動きが止まってしまったんじゃん」
ソフィーは、後ろを振り返って「あらま!」と、そして魔法使いの様に指を回して、
「アローンちゃんたち動け!」
するとアローン兵達の車は動き出した。
「お前は魔法使いか」
デューカは、元に戻ったソフィーを見てほっと微笑むと、車の外で密かに話し合っているコーリーと銀次に叫んだ。
「おい!アローン兵が動き出したぞ。そんな所で悪巧みしてないで、車に乗れ!」
「悪巧みとは!失敬だぞ!」
コーリーと銀次は抗議の声を上げたが、2機の表情は輝いていた。
悪巧みしている時のこいつらは、アンドロイド人生を謳歌しているように輝いて見える。
「大好きなのだろう、悪巧みが!」
「大好きさ」
コーリーと銀次は声をあわせ答えた。
「あいつら、ソフィーが動かなかったら何してたか、解ったもんじゃない」
魔法使いが気に入ったのか、ソフィーは指をくるくる回していた。
その度に、アローン兵が変な動きをするのだが・・・
中には踊り出す奴も・・・
一応、奴らは惑星最強のアローン兵なのだが。
つづく
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