2話 今を嘆き過去を恥じた。

『西都・サマルカンド』



内務省のハミルと繋がった扇動者に煽られた民衆は、装甲騎兵に押され、鉱物資源企業団公社ビル前の広場に向かって敗走を始めた。

民衆の動きは、明らかに何者かに誘導されていた。


その何者が何者なのか、考えるまでもない。


総裁の機体は、全身を木で覆った鼻の長い人形、ピノキオ。

動き回るその姿は、とてもメルヘンだった。


「いとも簡単に扇動されやがって馬鹿どもが!」


鉱物資源企業団公社ビルの最上階総裁室いた総裁は、恐怖に震え、と警備室に命じた。


「ビルのゲートを閉めろ!デモ隊をビルの中に入れるな!」

「しかし、あの中にはわが社の社員も・・・」

「急いで閉めろ!」


警備員は急いでビルのドアの施錠をしたが、すぐに何者かに叩き壊され、デモ隊のビルへの進入を許してしまった。


デモ隊に続き、それを追う装甲騎兵、そして、ハミル率いる精鋭α部隊が、ビル内へ進入した。


「至急、民兵を集めろ!アレム神父を奴らに渡してはならん。

ソフィーはどうした?まだ来ないのか?

おかしいだろう!このデモは評議会に対するデモだぞ!

なぜこちらに来る?おかしいだろう!」


総裁の喚き散らす声が総裁室に響いた。


その間、ハミルとα部隊は、突然止まったエレベーターのドアをこじ開けると、

最上階総裁室へと駆け上っていた。





『地下鉄線路跡・坑道』



ソフィーとデューカ、そして、銀色のアンドロイドとアローン兵1万2千機は、地下鉄坑道をサマルカンドへ向けて進んでいた。


「デューカ、さっきから何が不満なの?」


デューカは銀髪を一瞥した。


「こいつだよ。こいつ信じていいのか?大体、俺はこいつの名前すら知らない」


「俺は名乗る程の者じゃない」


銀髪は即答した。


「色々、事情があるのよ。前科があるとか、変態趣味があるとか」

ソフィーの言動に、銀髪は反論しなかった。

「えっ?反論無し?」

「・・・」

「前科なのか?変態趣味なのか?または両方か?」

デューカは銀髪の表情を探ったが、どうやら両方らしい。

「それは歴史に残るほどの前科と変態行為なの?」

ソフィーの問いに、銀髪は沈黙した。

「それは人類時代の前科と変態行為?」

デューカの問いに、銀髪は沈黙したが、どうやらそうらしい。


ソフィーとデューカは、銀髪のアンドロイドを激しく軽蔑する視線を送って十分楽しんだ後、


「名乗りたくないなら俺が勝手に名づけてやる・・・・お前は銀髪だから銀次だ。」

「単純かつ、想像力の欠片も無い発想」

銀髪のアンドロイドは、地下鉄坑道の中で、今を嘆き過去を恥じた。




『宇宙ステーション・アントン』


宇宙ステーション・アントン管理官ケイに、ヤーシャは報告した。


「地上から連絡で、宇宙ステーション内に滞在中の、鉱物資源企業団公社のアンドロイドを、拘束せよとの命令通信が届きました。」

「拘束?」

「公社自体に反乱罪の疑いが掛けられたようです。」

「反乱罪?」


管理官のケイは、青く輝く星を見下ろした。


>厄介な命令。


宇宙ステーション内で公社の連中は、重要な技術者の集まりだ。


>色々面倒な事になりそう



つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、土曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!

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