14話 あなたの笑顔を切望する

 地下鉄駅構内で、仮設のベットに横たわったソフィーを、4機のアローン工兵が分担して応急処置を施し始めた。

ちょっとした宇宙船なら、部品さえ有れば組み立ててしまう程の工兵達だ。


「でも、その凶暴さゆえに、民衆に恐れられたアローン兵が、寄って集って私の修理を施してるなんて、かなり怖い」


ソフィーの言葉に、参謀は

「はい、その様です」

と相槌を打った。


ソフィーは少し「苛っ!」とした。

プログラム通りに反応しているに過ぎない相槌。

違和感を感じた所で、アンドロイドの自分とは程度の差なのだが、それを人間だったら、面白がっていたかも知れない。


ソフィーは、今後の事を検討するために、眠る様に自らの思考回路に意識を沈めた。


「特殊機械兵、通称アローン兵。

高性能∧強力すぎる為に、反乱を恐れた政府上層部が、アローン兵への人工知能搭載を禁止したはず。

にも関わらずアローンは政府を裏切って私の味方に付いた。

強く制限され、自ら判断を下す意思を持たないはずなのに。

アローン自身の意思が働いたのか?

それとも私の知らない誰かの意思?


確か、最初会った時、

『我々はあなたの意思を愛する

我々はあなたの記憶を愛する

我々はあなたと伴に在りたい』


とアローン兵には似合わない事を言ってた。これは、どういう事?」


ソフィーは、側に控えている参謀兵の思考回路を探った。


参謀兵の思考回路の中には、簡単な言語マニュアル、戦闘マニュアル、敵味方の識別信号表、惑星全域の地理地形のデータ等が存在していた。


その中に、『自我意識の塊』は確認できなかった。


「『自我意識の塊』が無い以上、アローン兵の意思とは、考えにくい。

こいつらの主はどこかにいるはずだ。この惑星がもしくは惑星外か」


工兵は手際よくソフィーの破壊された視野カメラを取り除くと、アローン兵が標準装備している眼球の無いカメラを、ソフィーの頭部に備え付けた。


数分後、ソフィーは久しぶりに自らの目で、周囲を見渡した。


「やっぱり、自分の目で見る景色は素晴らしい」


ソフィーは参謀兵の

「はい、その様です」と言う返答を期待したが、

参謀兵は何も答えなった。


「さっきの『苛っ』としたのを感じて今回は言うのを止めたの?

まあ、悪い気はしないよ。

でも今は、デューカみたいに、馬鹿騒ぎして喜んでくれる誰かを切望かな」


ふと気づくと100機のアローン兵たちが不可解な動きをしていた。


「踊ってる?」


それはまるで一般アンドロイドをぶっ壊し、記憶装置を容赦なく踏み潰しているかのような、恐ろしげな動きだった。


もしかして馬鹿騒ぎして喜びを表現している?

アローン兵にとって、一般アンドロイドの破壊行為は、仕事であり、彼らにとってはとても良い事なのだ。


恐怖の対象の機械の兵隊が一斉に床を「ドンドン」と。

その床に響く音にソフィーは恐怖したのだが。



つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。O(≧∇≦)O イエイ!!

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