8話 正義とは甘美な言葉

銀髪のアンドロイドが運転する、鉱物資源運搬用のトラックは、静かな森を駆け抜けるように走っていた。


「正義の名の下に、正義を実行する。甘美な言葉だとは思いませんか?」

とコーリー博士はアレム神に言った。


アレムは「何を言うか?」と言う目でコーリーを見ただけで、何も答えなかった。


「ほとんどのまともな民衆は、正義の名の下に、正義を実行したがっています。

しかし、彼らにはその力も勇気も、そして、正義と言う名も彼らには与えられてはいません。そんな彼らを動かすなんて事は、簡単な事でした。

私は彼らに不足している、力と正義、簡単に言うと武器と創造主人類という名の正義を与えた。それらを手に入れた彼らは、日常ではありえない、破壊行為を何のためらいも無くこなしてくれました。

その表情はまるで自分達に酔いしれているかの様でした。

見ものでしたよ。」


コーリーは満足げに笑った。

そのコーリーを記憶装置の奥で失笑しながらアレムは、


「あなたは何をしようとしているのですか?」


「私はあなたと同じ、あの人類に似た生命体を、この星から追放させたくないだけです。」


コーリーはまじめな表情で答えた。

アレムにはまじめに答えているようには見えなかったが。


アレムの視線を無視してコーリーは続けた


「発電所が爆破された以上、電力を使っての交渉が出来なくなりました。

今は、新たな策を考えましょう。」


「あの者達はどうするのです?」


「あの者達・・・ですか。

それについても新たな策を考えましょう」



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



カラーライズで、突如テロリストになってしまった反政府組織サインの幹部たちは、戸惑い、そして途方にくれていた。


「俺達は正しかったのか?」


そんな幹部たちの思考とは違い、ソフィーの思考回路内だけは自身の行為に酔いしれていた。


「美しい生き様、そして死に様・・・」


ソフィー自身、それが危険な思考で有ることは解っていたが、止める意思はなかった。




つづく



いつも読んで頂き、ありがとございます。(≧▽≦)

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