7話 誰も知らない思考回路の奥に潜む自分が笑った。

ソフィー達の部隊は発電所を脱出後、反政府組織の重要拠点・カラーライズに集結しつつあった。


発電所占拠に参加したアンドロイドは、ソフィーが知る限りでは200機前後だった。


カラーライズにはかなりの数のアンドロイドが、既に到着していた。

倉庫は、野戦病院の様になっていた。


人間の野戦病院だとしたら血の匂いが立ち込めているのだが、機械たちの野戦病院は、油の匂いが立ち込めていた。


ソフィーが到着するなり、サミエルがソフィーの元へ駆け寄ってきた。


「ソフィー報道見たか?」


「今、着いた所だから・・・まだ。」


「いいから、来いよ」


野営テント内で、報道された映像を、ソフィーやデューカやニナに見せた。


「俺達が発電所を爆破したことになっている。ソフィーが爆破の命令を?」


「私は何も・・・」


「あの爆発は発電所側の自爆だろ?」


いつのまにかソフィーの隣にいたデユーカが、フォローを入れた


「報道ではそうは言ってない。犯行声明を出したのは君か?」


「私は出してないし、そういう命令も出してない。」


「じゃあ、誰が?これじゃ俺達ただのテロリストだ。」


サインの幹部の不安に満ちた視線が、ソフィーに集まった。



アンドロイド・・・機械なんだから、不安を表に出さないことも出来るのに、そんな余裕もないらしい・・


その位の情報操作で、動揺する反政府組織サインの幹部に、ソフィーはちょっと呆れた。


評議会にしてみれば、そこいらの犯罪者とは訳が違う、惑星政府を滅ぼしかねない、極悪人の集団なのに・・・


そう言えば、ここに集まった奴らは、善良そうな奴らばかりだ。

人類来訪の熱狂に浮かれ、勢いで参加した連中ばかりだ。


共犯関係で成り立つ悪の徒より、大義名分の元で戦う正義の徒の方が強いはず。

しかし、力のない正義など、正義とは言えない。


負ければ、大義名分は汚され悪へと簡単に転落する。


ソフィーは、記憶装置の奥で、そんな事を思ってみたが、今は周囲にあわせて、動揺するリーダーを演じた後、微笑んで見せた。


意味深に・・・


すると、僅かだがサイン幹部の表情が少しだけ落ち着いた感があった。

その善良なアンドロイドたちのその表情に、ソフィーは和んだ。


深みなどない仮の微笑だったが、効果はあったみたいだ。

その成果をほくそ笑む自分を、誰も知らない思考回路の奥に潜む自分が笑った。



つづく

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