第7話 はしゃぐ銀髪アンドロイド☆彡

「真面目なトラック運転手が、宗教検察官の車を襲うものか。」


神父の言葉に、銀髪のアンドロイドは嬉しそうに笑った。


「何が可笑しい・・・君のせいで私の堅実な神父生活はおしまいだ。」


「堅実な・・・。」


銀髪は、また嬉しそうに笑った。


鉱石運搬用のトラックは山道を、猛スピードで登り始めた。


悪路を走る車体はガタガタと揺れ、それが嬉しいのか銀髪ははしゃいだ。


神父は、何故自分が反乱罪で逮捕されたのか推測してみた。

敵を作らず慎重かつ穏便に、今の地位を築いてたはずだ。

訳が在るとすれば、あの評議会の意志に反した演説ぐらいだ。


しかし、硬直化した官僚機構の宗教検察省が、演説から1時間もたたずに逮捕に踏みきれるだろうか?


それに、宗教検察庁とは言え、教会に属する神父をそう簡単に逮捕出来るはずが無い。


神父が思慮に耽っている時、すでに遥か遠くに見える街の方角から、花火の様な爆発音が聞こえた。


神父が慌てて街の方角を見ると、それまで光り輝いていた街が暗闇に包まれていた。


「何だ?」


銀髪のアンドロイドは


「何でしょうね。」


と関心なさそうに言った。


「電力施設か?」



神父は、その不穏な動きに眉を顰めた。

余談だが、この眉を顰めるアクションは、教会技術部が試行錯誤を重ねて開発したアクションだ。

眉の些細な形や動きの違いが、見る者の印象を大きく左右する。

しかし、残念ながら今回のアクションは、無駄になったようだが。



銀色の髪のアンドロイドは、神父の眉の動きも爆発音の事等気にせず、ひたすら運転に集中した。


鉱石運搬用のトラックはトンネルに入った。

街とは電力系統が別なのか、トンネル内を照らす赤い照明が、やたら眩しかった。


トンネルを抜けると天文台の白いドームが見えた。


鉱石運搬用のトラックが、天文台の前に停まると、天文台の建物の中から、数人の研究員が駆け出してきた。


「おお!我らのヒーロー!アレム神父の登場だ!」


と叫びながら神父に抱きついて来たのは、天文台長のコーリー博士だった。


神父はそのテンションの高さに苦笑いをした。

そもそも、神父と博士は全く面識が無い。


「演説、感動いたしました。

あなたの演説こそ事の始まりの合図。

いよいよ我々が行動を起こすときが来たのです!」

とコーリー博士は高揚感あふれる声で、そう叫んだ。


また、テンションの高い輩が・・・


もともとテンションの低いアレム神父は、その高揚感にはついていけず


「何の事でしょう?」


自分でも解るほどかなり冷めた声で言った。


「まあ、とりあえず、中へ中へ。

政府の狙撃兵がどこで狙っているかも分かりませんし」


コーリー博士はアレム神父を天文台の中へ誘った。




つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る