第6話 あなたが雨に濡れないように☆彡
ぶつかってきたのは鉱石運搬用の大型トラックだった。
辺りには鉱石の破片が転がっており、事故現場の周辺には徐々に野次馬が集まり始めていた。
「アラーム神父、問題が無ければ、こちらへ」
銀髪のアンドロイドは大型トラックに乗るように誘った。
この状況・・・
問題だらけなのだが・・・。
野次馬達の好奇な目、破壊された宗教検察官とその車、反乱罪の罪で連行されかけた神父、よく見るとステレス加工された大型トラック。もちろん違法改造だろう。
そして、違法にチューンナップされた機体の、銀色の髪のアンドロイド。
現状から考えて、最悪・・・極刑。
人だった頃からの記憶を消され、完全な無に帰する。
人として生きた記憶と機械としての生きた5000年の記憶が無に帰する。
すべてが無駄になる虚無感。
「余計な事をしてくれた。
反政府組織か何かかは知らないが・・・。」
と神父は、銀髪のアンドロイドに愚痴った。
「しかし・・・しかし・・・・やれやれ」
一寸先は闇どころか、一里先も闇に思えるこの状況。
闇・・・・無に帰するよりましか。
意外に早い決断に、神父は自分でも驚いた。
神父は、好奇と恐れと侮蔑の入り混じった視線を送り続ける野次馬をチラリと睨み、鉱石運搬用の大型トラックに乗り込んだ。
神父を乗せると鉱石運搬用の大型トラックは、それが当たり前の様に検察官の車を「グシャ」と軽く蹴散らして、走り出した。
「キャハ!」
銀髪は喜んだ。破壊願望が有るのだろう。
神父は、
「こんな事して君は大丈夫なのか?」
「善良な市民として自覚はあるのか?」
「信仰心はあるのか?」
「その違法にチューンナップされた機体は、安全なのか?」
「銀髪は君の趣味か?」
「大体君は何者だ?」
「まさか、反政府組織サインの者か?」
と続けざまに質問した。
「神父様は、反政府組織サインが本当に存在するとでも?あんなもの、政府のえらいさんが考え出した、虚構ですよ、虚構」
「では君は何者だ?」
「俺は鉱石運搬する真面目なトラック運転手ちゃんですよ」
自称・真面目なトラック運転手ちゃんは、運転席に備えられたショットガンを、撫でながら言った。
煌びやかにカスタムマイドされた車内では、遠い昔の演歌が流され銀髪のアンドロイドは熱唱した。
「あなたが雨に濡れないように、私は雨乞いの歌を歌います~♪
あ~あ♪あ~あ♪それなのに~あなたは~ずぶ濡れ~♪
あなたが雨に濡れないように、私は雨乞いの踊りを踊ります~♪
あ~あ♪あ~あ♪それなのに~あなたは~ずぶ濡れ~♪
私の思考プログラムはクラッシュ中♪」
そんな思考プログラムがクラッシュしたアンドロイドの哀しい歌が、車内で流れ続けた。
つづく
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