第8話 ジャヴェル村編 待ち案内
俺はメグ、バルフ、キリリと一緒にラゴルドさんの部屋を出て村を案内してもらう事になった。ギャルスは今後の為にまだ打ち合わせがあるようで同行できない事に最後まで抗議していたがさっさと出てきてしまった。
ラゴルドさんの家は丘の頂上にあり、頂上から麓にかけて警備隊の建物から働いている人達や村の古株の人達の家があると、メグに案内をされながら村を巡った。向かう際にも少し見たが、改めていろんな種類の家がある。因みに窓から見た土を盛ってるだけの家にはちゃんと扉があり、閉まるようになっていた。別の家だが同じタイプの家があった。あの家はたまたま開いていたようだ。どちらにせよ家というより保存倉庫にしか見えないんだが…。
麓には円形のでかい建物があり、太い木が縦に何本も建物の周りを囲っている。ラゴルドさんの家に行く際も疑問に思っていたが、聞く前にメグが説明してくれた。
「この建物が、避難所兼教育施設じゃ。この村の中心的な役割をもっているんじゃ。模擬戦や訓練などをする設備と、教室や図書館。他にも治療をする為に使う部屋や食堂、避難者用の泊まり部屋もあるのじゃ。妾達も普段はこの中で授業や自習を行っておるから、みな学校と呼んでおるんじゃ。他の案内が終わってから最後に中を案内するつもりじゃ。」
学校?前世の言葉だな。意味合いも少し似ているし。
疑問に思いながらも言葉にはできない。因みにメグ曰く先ほどの学校を中心に囲うように家が建てられているそうだ。
「因みに俺はどこで生活するんだ?」
「説明がまだじゃったな。さっきも言ったが、避難者用の泊り部屋に一時的には入ってもらうつもりじゃ。」
「メグー。私お腹すいたよー!!」
キリリがお腹をさすりながら割り込んできた。
「すでに昼を過ぎていたんじゃな。まだ他があるのじゃが、後の案内は食事の後に2人にまか
せるぞ。昼はこの学校でご飯が食べられる。学校は後にしようと思ってたのじゃが、諸々の説明も先に食事をしながらにしようかの。」
「えー!!私達がするのー?」
「当たり前じゃ。今後長い付き合いになるんじゃから親交を深める為にも頼むぞ。夕方には予定があるから無理じゃ。」
「んーー、わかった。」
お腹をさすりながら恨めしそうな顔でメグを見つめている。正直、俺も腹はへってたから助かった。
すぐに建物の周りに沿って玄関へと向かう。その間、キリリとバルフは仲良さげに話している。バルフに何故俺は嫌われているんだろう?挨拶以降一切話していない。話してないと言えばマリカともアレっきりだ。
「メグ。そういえばあれからマリカに会ってないんだけど、どうしてるんだ?」
「マリカなら大人に頼んで戦闘訓練でもしてるんじゃろ。あやつは時間があれば鍛えたり、訓練しとる。ここに来る前に妹をヒト族に拐われたらしくての。強くなりたいそうじゃ。」
「そうなのか。無理しないといいな。」
「妾も言ってはいるのじゃが、どうにもはぐらかされてな。お前も自分の事で精一杯じゃろうが気にかけてやってほしい。」
「ああ。わかった。じゃあ、終わってから挨拶がてら行ってくるよ。」
「ああ。助かる。じゃがバルフの前ではあまりいうでないぞ?」
????
「妾から言うのもなんじゃが、バルフはマリカに気がある様じゃ。妾達が帰ってきて、マリカがお前の話をしてから機嫌が悪い。お前を敵視してるようにも見れるしの。」
「ああー。なるほど。でもなぁ、知り合い少ないから難しい気が。」
「まあ、こればかりは本人達次第じゃからの。妾からは特別何をする事もできん。ただ、弟がお前さんに迷惑かける気がするのでな、教えておいただけじゃ。」
「そっか。まあ、仕方ないかな。どうしようもなくなったら相談するよ。」
「悪いが、そうしてくれ。」
確かにマリカは可愛い。話した感じも気さくな感じだし、仕草もわざとではないと思うがドキドキはさせられた。
そう考えているうちに玄関前に着くとマリカとケンタウロスが仲良く話している。話の話題の本人が目の前だ。メグは俺の横で苦笑いしている。
え!?さっきのはフラグだったの?タイミングおかしいよ。漫画で見たことある流れだよ!!
いやしかし目の前のマリカもそうだが楽しげに笑うケンタウロスもなかなかおかしい絵面なんですけど‥。俺的にはモンスターのイメージしかない。
「あ!?クルトだー!!!他のみんなも!おーい!こっち!こっち!!!」
いやー4人いるのに1人だけ名指しで呼ぶのはヤバいよーー!!!勘違いされてる。
ほらー、なんか嫌な目線を感じたよー。わざわざ睨む為に一瞬振り向かないで…。
平常心、平常心。近づきながら心に言いかける。
「やあ、マリカ。この村で世話になることになったからこれからよろしくね。」
「そうなんだー!!良かった。メグが気絶させて連れてっちゃったから心配してたんだ。」
マリカの仕草にドキッとさせられた。本当に気にかけてくれていたみたいだ。
ただ‥バルフの前でやめてー!!俺も別の意味でもドキドキしちゃってるから!
「あ、ありがとう。そ、それで、隣の人は?」
「おー!!お主がユリカのお気に入りのレイか。なかなか面白い魔法を使うらしいな!是非手合わせしたいもんだ!!」
マリカを押しのけて大声で上機嫌に笑う牛の顔…。
「ちょっと、まずは自己紹介しないとダメだよ!!バギ!」
うん。そこもそうだけど、俺が君のお気に入りってとこも否定して欲しいな〜。
「それもそうだな!挨拶が遅れてすまん。ワシはバギ。ケンタウルス族で見た目通りパワー系だ。バルフと一緒にいるなら狩組に入るんだろう。ワシもユリカも組だからこれから頼むぞ!!!」
「レイです。よろしくお願いします。ラゴルドさんから正式に言われてはいませんが、その時はよろしくお願いします。ユリカも狩組なんだね。ユリカも決まったらよろしくね。」
「うん!!私も楽しみにしてる!正式に言われるのは実力みてからだからじゃないかな。まあ、レイなら大丈夫だよ!メグの攻撃も防いだくらいだし。」
「ホー!!それは本当か!?それはなかなか。」
バギはニヤケづらでメグを横目でみている。
「ふん。そこの邪魔がいたからのう。じゃが、まあ狩組に行くのは実力的にも間違いないじゃろ。」
「そうか。そうか。どちらにせよ楽しみだ!ワシとマリカはこれから訓練場に行く。お主たちは村の案内中か?」
「そうじゃ。昼もまだじゃったから食事も兼ねてじゃがな。」
「そうか。レイ、時間が合えば顔を出してくれ。試験官はワシでも問題ないはずじゃからやっちまおう。」
「わかりました。終わったら一度顔を出してはみますね。」
「ああ。そうしてくれ。楽しみにしとるぞ。バルフ、狩のことは少し話しておいてやってくれ。」
「ああ。わかってるよ。」
怒気が、怒気が溢れ出てるよー。
バギさんも知ってんのかどうかわからないが、ニコニコしている。
「頼んだ。では、ワシたちは時間だからいくぞ。」
「了解じゃ。こいつらも終わり次第行けると思うぞ。妾からラゴルドには言っておくからの。」
「ああ。助かる、頼んだ。」
バギはそう言って建物の中へと行ってしまった。
「あ!!ちょっと待ってよ!!レイ、みんな、また後でね。」
中に入っていくバギを追いながらマリカも中へと向かう。
また俺だけ一人称。あーなんかもう疲れた。
「う、うん。また、後で。」
「俺も一緒に行くからな!!」
バルフはバギを追っていくマリカの背中に向かい、前乗りになりながら言っていた。なんかいたまれない。
そんな空気に関係なくメグも建物に入り、俺たちも急いでついていく。玄関を抜け、ロビーに入る全てが木で作られていて、上が吹き抜けになっており太陽の光で中はとても明るい。所々、影になる場所にはクリスタルが壁についていて光を出している。日の光を使いつつ建物全体が明るくなるようになっていた。中に使われている木はほとんどが皮を取ってあるためハダ色だ。そのため清潔感もあり改めて技術の凄さに圧巻だった。ロビー横の階段を上り、綺麗な廊下を通り食堂につくと、上を見れば空が清々しく広がっている。
「メグ。こんなに上が吹き抜けにしていて雨の時はどうしてるんだ?」
「あ!それなら私が説明するね!!この建物の上には魔法壁があるんだよ!エルフの私達と魔族の人達で陣を作り、魔法石に埋め込んで、協力して魔力を流す事で維持してるんだよ。すごいでしょ!!!」
キリリが自慢げに話していた。確かにすごい。
「へー、二つの種族が協力して始めて出来るんだな。この村らしい作りな訳だね。ってか魔族もいるんだね。名前だけは聞いたことある気がする。」
「そうなのか?ちなみにヒト族もいるぞ。」
「え!!?」
「当たり前じゃ。他種族共存がこの村のモットウじゃからな。みなそれぞれ思うことがあるじゃろうが、人種は関係ない。ヒト族とて、今の王が愚者だからだ。ヒト族全員が愚か者だと思うか?」
「いや、それは思わない。」
「そういうことじゃ。ここはあくまでも共存を守るための村じゃ。スパイが入ろうと、この村と革命軍とは命を助ける為には協力しとるが、戦闘に関しては一切助けは出しておらん。それどころか、捕虜を預かったり、奪ってヒト族に返したりもしとる。まあ居座る奴もいるがな。ここにはヒト族も革命軍も嫌になった者たちでできたようなものじゃ。それでも防衛の為にみな協力して攻められないように工夫をたくさんしとるのじゃ。因みにうちの防衛軍は強いぞ。」
「そうか。なんかすげー村だな。でも軍隊みたいな人達は見たことない気がするけど。」
「ああ、それはここ以外で三つの村が他にあるんじゃ。この村を囲うようにあってな、軍隊の者たちのためだけの村じゃ。滅多なことがないとここには来ない。」
「なるほど。それもまたすごいな。村だけど合わせたら相当人は住んでるんだな。ほぼ国だね。」
「そうじゃな。防衛の村まで繋げられたら国を設立することは決めておる。合わせたら、普通に町以上にはなったからのう。それを守り大きくする為の村じゃ。ただ1番の強みは魔族、エルフ族の双方が協力なしではできぬ魔法壁じゃ。我が村の自慢じゃな。未だ破られていないからの。そういえば、お主はご飯はなんでもいいかの?」
「あ、ああ。何かもわからないから任せるよ。」
「わかった。それではお前とバルフで席をとっといてくれ。私等で頼んでくる。」
「「え!?」」わかったよ。」
おれは承諾したが、バルフはメグを睨んでいる。
「わぁーたよ。」
俺はバルフと空いてる席に腰を下ろした。そっぽを向いている。理由はわかったが、一方的に敵視されても困るかな。
「改めてよろしくね。服もありがとう。もらっていいって聞いたけど、大丈夫?」
「ああ。平気だ。新しいのくれるらしいからな。それにもう俺じゃ着れねぇしな。」
尻尾用の穴がないからか。
「ああ、そうだね。確かに。すまないね。狩組って、狩以外やることあんの?」
「基本は食材調達だ。狩だけとは限らん。まあ、説明してやる。…まったく面倒臭い。」
嫌がってんのを隠す気がないようだ。あからさまに睨んでくる。
「悪いね。嫌かもしれないが、足手纏いにならないように頑張るよ。一応、狩りはしたことあるし、血抜きは得意だよ。」
「へーそれはお手並み拝見したいもんだ。血抜きは俺らでやるから得意なら任せるぞ。あれは手間でめんどいからな。」
「そっか。俺なら簡単に血抜きできるから任せておいてよ。」
仲良くなるにはきっかけが欲しい。
「ああ、頼んだ。基本3人1組で狩りをする。だいたい午前と午後、夜の3回。狩りだけでなく釣りや畑の収穫の手伝いをする時もある。釣りと手伝いは当番制だから、正式に決まったら掲示板を教えてやる。まあ最初はお前の適性を見る為に俺と、おそらく大人が1人ついて狩りからだろう。それから全体の組み合わせを変えるんだろうな。まあ、今の組み合わせが変わるのは助かる。」
意外にちゃんと説明をしてくれた。根はいい奴なんだろう。メグの弟だから姉に似て世話好きなのかな?
「ありがとう。助かるよ」
「ところで、お前は…」
バルフが言い終わる前に奥からご飯をメグとキリリが持ってきてくれた。何かの肉と、豆が入ったスープ、ナンみたいな形のパン?を持って来てくれた。みな基本同じものだ。キリリだけ見た感じ肉が違う気はするが。
「持って来たぞ。レイもキヌは3枚でいいかの?ん?バルフどうした?」
「んっ、なんでもない。」
「そうか。ならいいんじゃが説明の邪魔でもしたかの?」
「大丈夫。簡単にはした。後は姉上の後に話しとくから。」
「プッ!!」
やべ笑っちった…。だってなんで呼び方姉上?
「ん?どうかしたかの?」
うっわめっちゃ睨まれた…。
「いや、ごめん。呼び方がなぜか違和感があって。」
「そのことか。まあ、どうせ知られるだろうから良いのじゃが、妾は巫女なんじゃ。だからバルフも敬意をはらってくれておるから妾のことを姉上と呼んでおるんじゃ。前までは姉貴だったがのう。」
「うッ!そうなのか、それは笑ってすまない。バルフ、ごめん。」
意外な理由だった。流石に失礼だったと反省し頭を下げる。
「まあ、いい。謝罪は受け入れる。俺も未だに言いづらいからな。わからんでもない。」
「そう言ってもらえて助かる。ありがとう。」
改めて頭を下げた。
「まあ、良い良い。ほれ、お前のじゃ。」
「あ、ああ。ありがとう。」
食事を受け取り、4人で昼食を食べ始めた。
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