第7話ジャヴェル村編 協力者

「紹介されました。ギャルスです。よろしくお願い致します。レイ様。」


「よ、よろしくお願いします。」


執事の服装に、小さい眼鏡をした褐色の肌に尖った耳、そして黒い髪をオールバックできめている。…何で固めてるんだろう?ちょっと気になる。

そしてどこか異様な感じの笑顔。俺を見る目がなんか怖い。


「ギャルスの一族は元々、ブシュタリュ族の配下にいたんだ。闇コウモリ族は忠義深くてね。今でもブシュタリュ族の生存者か、その末裔を探しまわってる部族なんだ。私もギャルスのこんな顔見たことないよ。よっぽど嬉しいんだろう。」


ああ、どおりで俺を見る目が違うわけか。


「はい。今私は涙を堪えるのが精一杯。長年ラゴルド様の下で探せど探せど見つからず。その間、さまざまな仕事を強いられ我慢してきてやっと見つけられたのです。」


ギャルスは胸にあるハンカチを目尻に当てながらラゴルドさんを恨めしそうに見る。


「メグさん。本当にありがとうございます。」


深々とメグに対して頭を下げる。侍従関係がないのかな?


「我が一族、先代より賜った使命を長年待ち侘びていました。私もその時代には生まれていませんでしたが、我が一族がここまで生き繋いでこれたのは全て龍帝様のおかげと教わり育ってきました。そして、あの残酷な戦争の折には我が一族、恩を返すことが叶わず、逆に龍帝様に助けて頂き、そこから長年苦渋をしいてきたと。」


すごい熱量で語っていくギャルス。


「いや、でも僕は王族かなんてわからないですし、復興なんて出来ないですよ。」


「もちろんでございます。我が一族の希は、レイ様の幸せにございます。それに対し忠義を、恩を今度こそ報いる事でございます。ですので我ら一族はブシュタリュ族の方を見つけた際にはお側に仕えることが掟となっています。もちろん許可を頂いてからでございますが、先ずはしばらく一緒に行動を共にする許可を頂けないでしょうか?」


困惑しながらもラゴルドさんに視線を向ける。軽く頷かれた。確かに自分の事すらわからない。この世界もまだまだ知らないことがあるだろう。おそらく、ギャルスさんは隠密系だと思う。間違いなく力になってくれるはずだ。


「わかりました。記憶がないので、常識すらわからない状態です。よろしくお願いします。」


「はい!!!誠心誠意尽くさせて頂きます!!よろしくお願い致します。」


こ、こ、こわい…。顔をグイッと近づいてきて興奮しちゃっている。


「ま、まあそちらの話がまとまったところでギャルス。お前を私の護衛から外し、レイ君の護衛兼先生をしてもらう。ただ諜報活動はお願いするかもしれないから引き続きよろしく頼む。」


「承りました。」


あからさまに不機嫌な顔をしながら頭を下げる、ギャルス。さっきまでの興奮から直ぐに冷めた顔つきになる。まったく表情を隠す気がないようだ。


「では、他の人も紹介しよう。彼が私の執事であるチルトだ。ちょうど、レイ君とギャルスの関係に近いと思ってくれていい。チルトは私の護衛を任せる。ただギャルスと連携して、レイ君に関する事と世界の情勢を逐一に調べてくれ。なので、ギャルスはチルトの部下として動く形になる。レイ君のためだ。拒否はしないでくれ。」


「かしこまりました。」


「かしこまりました。」


チルトに続きギャルスも深々とラゴルドさんに頭を下げる。ここは流石に真剣な顔つきに変わっている。


「それと、ギャルスはしばらくメグと一緒に協力してレイ君の常識、戦闘技術等を指導してくれ。チルト、その間だけは必要に応じて別のものをよこすかもしれないからそのつもりで。くれぐれもバレないように指示して動かすように。無茶を言ってるのはわかってはいるが極力知られたくはない。チルトから見て間違いなく信用出来る人物がいるなら相談してくれ。私も誰を代わりにおくか決めかねているのでね。」


「「かしこまりました。」」


「次にそこの2人の子だが、男の子がバルフ。女の子はキリリだ。2人ともメグの教え子達だ。共に学び、普段の行動は基本一緒にしてくれ。バルフはメグの弟だ。世話係のメグと一緒にいれば自動的に一緒にいる時間は多くなると思うよ。」


ここで、今までメグは犬の獣人と思っていたが、バルフはどう見ても狐。明るい赤茶色い毛に尻尾の先は白い。メグは全部黒い毛だからわかりにくかったが狐の獣人だ。改めて見ると狐にしか見えなかった。犬系には間違いないが、軽く衝撃を受けた。


「よろしく。バルフ、服貸してくれてありがとう。キリリもこれからよろしくね。」


俺はメグのことで内心慌てたことを隠しながら2人を見合う。


「「よろしく。」お願いします。」


バルフはひと睨みされすぐ目を背けてしまった。嫌われたかな?服、嫌だったのかな?

キリリは慌てながら頭を下げて、緊張した面持ちで笑顔を作ろうとしてる。


「キリリ。君には今後、レイ君の監視を頼む。いつエルフ族に漏れるかわからないからね。レイ君と共に過ごし、レイ君が本当に危険な存在かをキリリの目で確かめてくれ。時期が来ればエルフ族にもレイ君のことは教えるつもりだ。その際の協力体制を作る上でのパイプ役を頼むからそのつもりで。」


「え!?えーーーーーーーーーー!!!!!無理ですよ!!!」


いきなりの大役に慌てふためくキリリ。周りに助けを求めようとみなを見回してソワソワしている。茶色の髪に少し癖毛で、エルフらしい顔立ちで綺麗ながらも子供ならではの幼さにより可愛らしくみえる。髪の毛が茶色いエルフなんているんだな。最初は髪の毛が茶色いからエルフとは思えなかった。まあ、イラストでしか見た事ないけど。


あ!諦めてションボリしてしまった。


「心配しなくても、すぐの話ではないよ。成人を過ぎた頃か、更に先になると思っている。バルフ君もだが、いつレイ君の存在がバレるかは長い目を見ればわからない。この場にいる誰よりも寿命を全うした場合、2人が残る形にはなるだろう。ここ150年位は我々がいるが、それ以降を2人を中心にレイ君のサポート兼監視を頼むよ。」


「「「え!?」」」


これには俺もバルフもキリリと一緒に眼を丸くしてラゴルドさんを見つめる。バルフは恐らく、「おれまで!?」とでも思ったのだろう。

俺は150年はラゴルドさん達大人は生きている?ここに驚いた。平均寿命って何歳なんだろ?そしてそこまで先のことを考えてくれている事に驚いた。ついさっき初対面したばかりの子供になぜそこまでしてくれるのだろう?


「まあ、キリリ長い目で見てくれ。どちらにせよさっき話した事はエルフ族の中でも秘匿されている重要機密事項だ。協力を求める際に私だけでも話は済むかもしれないが、保険が必要なんだよ。コトが大きすぎるからね。もう知っちゃってるから逃さないよ!」


あー悪い顔になってる。キリリはもう震え上がって絶句している。なんか、かわいそう。嫌なら俺の為に申し訳ない気がする。


「キリリ。嫌なら無理にはいいよ。なんか、申し訳ないし。ラゴルドさんも子供相手に酷いですよ。俺の為なのは有り難いですが、やり過ぎです。」


「それは悪かった。キリリ、当の本人が言っているから今なら断っても構わないよ。」


キリリは余計に困り始めた。なぜだ!?断ればいいだけだろ!尽かさずラゴルドさんを見る。ニコニコしてる。再度キリリを見るまだ怯えてる?そのやり取りを数回繰り返し、キリリが震える声でラゴルドさんに質問した。


「な、何故レイ君にそこまでしてあげるのですか?まだこの村に来たばかりなのに。まだ村民でもないんですよ。」


ラゴルドさんがニカーと悪い笑みを浮かべた。皆が一瞬たじろぐ。


「それはね。私の母もブシュタリュ族だからだよ。私は父の血筋の方が強かったからレイ君と同じ眼は継承されなかったけどね。」


皆、硬直する。若干、一名キラキラした目でラゴルドさんを見つめ返してるが、今は気にしない。

それよりも、その事項も絶対知っちゃまずい事ですよね?


「あ!これも他所に村長がブシュタリュ族のハーフだってバレたら間違いなく潰されちゃうから内緒だよ。」


和かに皆に微笑みかけ、最後にキリリを見た。


「ヒッ!!……ん〜、私は…この村が好きです。出来る限りで良ければ協力します。」


キリリが折れた。


「ありがとう。そう言ってくれると思っていたよ。」


満面の笑顔で言った。あーラゴルドさんって怖いな。子供に、対しても容赦なさ過ぎでしょ。ただまあ、ラゴルドさんが信用できるのは間違い無いからメグとマリカの出会いは不幸中の幸だったんだな。

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