第4話マリカ

「それにしても、やり過ぎたよ。メグちゃん。」


「そう言うな。妾とてこいつが相当困っているのはわかっている。村の奴らに話を通すにも必要なのだ。いた仕方ない。」


メグちゃんは同じくらいの男の子を平気な顔でオブって村へと向かっている。


「それよりも、マリカがめずらしいな?男に興味を持つとは。いつ時も強くなろうと腕試しばかりしたがる戦闘狂なお前がやり合いたいのでなく、かまうなんて初めて見た気がそるぞ?」


「んー。メグちゃんには話したからいいけど、私前世の記憶あんの言ったじゃん。」


「ああ。暦の国の迷い人じゃな。伝承で知ってはいたけれど、本物は初めてだからな。未だになかなか信じられん。」


「まあその記憶にお兄ちゃんがいるんだけど、なんか似てんだよね。雰囲気が。まあ、レイみたいに男前じゃないけどね!」


「そうなのか。まあ、復讐心で人生の時間を使うよりも、他の出会いで目指す先の進み方に変化をつけてみるのも一つの手とは思うんだけども。未だにあきらめんのか?」


「何言ってんの!!せっかく白夜叉になれるチャンスがあるのに!奪われたものは全部返してもらうに決まってんじゃん!!もう争いは始まってんだよ。まあ私が成人する迄に終ってないと良いけど。メグちゃん、相変わらず否定派だよね?メグちゃんだって大事な人達を殺されたんでしょ?」


「まあな。妾は今は亡き親方様との約束があるから、それが一番優先することなのじゃ。そのためには今回の戦は間違っているし、準備不足じゃ。」


「そっか。まあ、人間それぞれ考え方も優先することも違うよね。まあ、メグちゃんには戦闘の仕方さえ教えてくれれば問題無いよ!」


メグちゃんは私を悲しそうな笑みで見つめてくる。あの顔は苦手だ。母様にもメグちゃんの弟子入りの際に同じ顔をされた。


今向かってる私達の村はもともと避難所としていた場所がみなが協力して村までに変えていった場所だ。村を失くされたり、村を追い出された獣人達が集まって作った。今も変わらず避難所としての機能はある。立ち上げ当初からいる獣人のお爺ちゃんからしたら、昔よりも充実した設備、人員がいると満足気に笑っていた。


私達家族の場合は村を失くされ、生き残った鬼人族の獣人達とここに来た。確かに種族に適した食べ物、衣類、家を用意するのに時間はかかったが、村の獣人達の協力もあって生活の基盤は思っていたよりも早くおくれるようになった。父と母はそれぞれ仕事をもらい生活している。


今の私の名前は紅鬼マルク紫鬼サンの子キリカ。まだ成人の儀を終えてないので鬼名は決まっていない。成人の儀で私の鬼としての色が決まる。色をもらう事で一人前と認められ、色により鬼名を与えられる。

鬼名の中で白夜叉は女性の鬼人の憧れの鬼名だ。昔、龍神族がヒト族との戦の際に活躍した鬼人の女性の鬼名が白夜叉だった。その女性の活躍で負け戦の中、鬼人族は全滅をまぬがれた。

因みに15歳で行うから後6年だ。私は彼女と同じ白髪だ。鬼人のなかで白髪はとても珍しい。だから可能性がある。


私は前世黒桐恵美という名だった。戦争で家族や大事な人達の死を直面しながら私自身も殺されてここにいる。アイツらにすべて奪われた。ヒトに。


私は4歳の頃に目覚めた。すでにマリカという人格はあり、心が二つあるというなんとも変な感じがしていた。もう1人の私は、物静かな子で、私が記憶を思い描くと見えるらしく私が可愛そうだと、よく泣いていた。優しい子なんだ。優しい子だったんだ。

私は前世の記憶から憎しみや怒りが抑えられなかった。そんな心を救ってくれたのはあの子の涙だった。私はあの子で、あの子は私。今はそれが私。憎しみの塊があの子の優しさで解してくれた。だから今世を今度こそ幸せになろうと、家族4人で村の鬼人たちと協力して幸せになろうと。だから私は大きくなったらこの村の生活をより良いものにする為に前世の記憶から恩返ししようって。いつも、いつも願い、今できる事を精一杯がんばろって。それが私にとっての全てにしようって。‥‥思ってたのに。願ってたのに。



私が9歳の時にまたアイツらがきた。 




人族だ。アイツらは全てを奪っていった。親切にしてくれてた隣のお姉さんも、私の幼馴染みたちも、男女関係なく、そして族長の娘のお姉さんも、若い女性たちをアイツらは連れ去りった。

私の妹、まだ7歳のミリ。私も可愛がり、仲が良かった。妹までも連れて行かれた。


さらに族長も隣のおじさんも、かっこよかった隊長さんも沢山の戦った鬼人達は殺された。族長の奥さんは避難隊を逃すために命をはってアイツらを引き止めてくれた。目蓋を閉じれば、あの時の光景が思い浮かぶ。


あの時、わたしとあの子は一つになった。

 

アイツらは許さない。私達の大事な人達を奪い、幸せな時間を、幸せにしていくと願ったことも全て壊した。あの子の中の憎しみが私の憎しみの塊を再構築し、私の中で広がった気がする。

そして、必ず奪い返し、その報いを人族全員に与えようと決意した時一つになった。後3年だ。

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