第3話 ベースキャンプ?

茂みをかき分け、メグの声の方へ行った。ベースキャンプ?そこには変哲もないテントが一つ置いてあるだけだった。いやいやいやいや。


俺が現実逃避をしてる間に、メグが薪に火をつけ木の枝を組み合わせた台に鍋を置いて、何やら入れている。


「レイ?どうかした?」


マリカが、またもや顔を覗かせながら見つめてきた。顔近いんだよ!そんな仕草で勘弁してくれ!!

また目線を背けてしまう。こういうの慣れてないんだよ。

ふと、前世を思い出す。そういえば、恵美もよく、こんな仕草で俺をからかってきてたな。空襲で死んだ妹を思い出した。家の中ではいつも元気で、戦争が始まっても、周りを元気づけていた。


遠目になった俺の顔を、マリカは不思議そうな表情で見つめてくる。

「だからその覗く姿勢変えてくれよ。可愛いんだよ!マリカがやると。‥‥‥あ!?」


声出しちゃった!!どしよ?どうしよ?きもいよね?俺キモいよー。ね?昔を思い出していたから急な顔の接近につい声をだしてしまった。


「なんか、切ない表情してるから、何かと思えば、私を口説いてるんですか?呼び捨てだし。まあ、でもレイはかっこいいから悪くないかも!」


「いや、そういう意味じゃなくて女の子と話すの慣れてないっていうか、まあ、確かにマリカさんは可愛いとは思ってるけど口説くとかじゃないから。」


自分でも支離滅裂になってる気がする。


「なーんだ。でも、レイならいつでも口説いても良いよ!因みに、さん付け禁止ね!!さっきもう呼び捨てしたんだから許しません。」


俺に背を向け腕組みをしている。すねてるのかな?


「おい、ガキども!!!戯れてないで、飯じゃ!!冷めないうちに食べなさい!!!」


さっきの鍋ができたみたいだ。

3人で干し肉を分け合い、スープを木で作ったお椀に入れてくれて食べた。スープはキノコ汁だ。味噌かな?近い味がする。結構美味い。


「美味いです。このスープ。干し肉も俺の分までありがとうございます。」


「別に気にしなくて良い。汝はショミの味が好きか。これは妾の母上から教えてもらった自慢のショミじゃ。気に入ったなら良かった。」


「ショミってなんですか?」


「そうじゃな。…お湯に溶かすだけでスープに下味をつけれる乾燥玉じゃ。日持ちもするしで、我がコクウ族に伝わる秘伝のダシじゃ。因みに家により全然味が違うのがまた奥深いんじゃ。」


「へー。便利なものなんですね。僕、この味は好きです。コクが出てて、キノコがよく合う!」


「そうでしょう!!美味しいよね。私もメグちゃんの作るスープ大好きなんだ!!」


あれ?晩飯はマリカが作るって言ってなかったっけ?普通に食べてるが…。


「そ、そうだね。この味なら飽きないかも。」


「レイじゃったか?先程、マリカを誰かとかぶらせていたように見えたのだが、何か思い出したのか?」


うっ!バレてる。俺たちのこと見てたんかい!!


「別に見てたわけではないぞ。この周辺に妾の結界をはっておるからたまたま見えたんじゃ。」


ん?俺の右目みたいなもんかな?でもそれは見てるのと同じだし。


「まあ、はい。一瞬ですが、妹がよく、マリカみたいに覗きこんで、照れてる僕をからかってたのを思い出しまして。ただ顔とかは出てこなかったんですが。」


「そうか。兄弟がいるのか。会えるといいの。」


「‥‥そうですね。」


「はい!!!暗いお話はお終い!!!ところで、右目って見えないの?眼帯してるけど?」


マリカが急に仕切り直してきた。俺も気持ちが重たく感じてたのにマリカの声でどっか消えちゃった。‥マリカは元気だな。本当に恵美にそっくりだ。顔はマリカの方が可愛いけど。


「えっと‥」


話すかどうか、信頼してもらうためにも話したいけど、この目は普通じゃないよな。多分。


「ん?それに模様が書いてある。家紋とかかな?」


「おい!!マリカ!おぬし、前回教えたこと復習しとくよう言ってあった筈じゃが?」


急にメグが怒り始めた。勉学?メグが先生なの?この2人の関係がわからん。歳は同じぐらいに見えるが‥。そもそも子供だし。

でも子供なのにメグさんおっかないよー!!気迫がすごい!なのに‥‥マリカはケロっとしてる。なんかメグさん可愛そう‥。


「そうだっけ?んーでも確かに眼帯に刻まれてる紋章、近いの見たことあるかも。」


まったくどうじないマリカはそう言いながら俺の顔に身体ごと前乗りしながら覗いてくる。だからいちいち近いって!!

「マリカ。ち、近いって!それよりもこの紋章なにか、わかるんですか?なるべくならこの事はあまり知られたくない事なので僕も説明しずらいんですが。」


「はー。マリカは帰ったらみっちり教え込むから覚悟するんじゃぞ!妾がわかる範囲じゃが、恐らく、封印系統の紋章じゃな。ただ作者によって様々な紋章が存在する故、詳しくはわからん。まあ、無理にとは言わんが、妾も気になっておった。」


「そうですか。」


んーどうしよう。この2人のこと知り合って間もないけど、頼れる人いないし。2人の関係を良くしたいしな。じゃないと迷子に逆戻りだし。


「わかりました。お願いですから裏切らないで下さいよ?記憶がなくても、この右目が異常なのはわかってるんで。」


2人は好奇心旺盛な顔つきで、ってメグさんまで!?早く!早く!と言わんばかりワクワク感たっぷりで見てくる。本心だしすぎでしょ!

俺、これ知られるの怖いのに‥‥。ため息出しながら眼帯を外し、右目を開く。周囲の情報が入ってくる。2人からも魔力が体中を巡ってるのがわかる。だが、メグさん!?いや、おかしいぞ?貴方の魔力量も、巡り方も体から溢れ出してる。周りに意識を向けると、


「凄いですね。自分の毛を使って周辺に結界をはってたんですね。この空間だけメグさんの魔力で溢れてますし。」


メグさんは驚嘆の顔で俺を見つめてくる。マリカは何故か嬉しそう。何故?


「カッコいいーーー!!何その目?なんで黄色なの?ん?金色?綺麗だね!!」


「おぬし、本当に何者じゃ?またこの目でその瞳を見る日が来るとは。それが遺伝なのか、後から埋め込まれたのかは知らんが、その目は今はいなくなった龍神族の目じゃ。妾もかつては、龍神族の貴族のもとで働いておったことがある。しかし、これはただ事ではないぞ。しかし、記憶が無いんじゃ、わからんか。」


「はい。その龍神族と言われても何も感じないですね。龍神族は片目だけこうなるんですか?」


「いや、人それぞれじゃ。まあ、両眼は王族しかいなかったと記憶しておる。そもそも龍神族みながその目を持ってるわけではない。龍神族のみ、その目を持つものがいたという話だ。

しかし、その眼もそれなりに使いこなしているようじゃな。妾の結界にも気づいたか。であらば、妾がどういう存在かわかったであろう。」


「え!?何がですか?まったく分かってないんすけど‥。まあ魔力が身体に合ってないのはわかります。」

 

「そうか。その目を持っていても勉学がダメだとわからんか!しかし、どうしたものか‥‥。」


何やら考え込み始めたけど、この眼なんか訳ありなの?


「うむ。それは後にして、先に謝っておく。汝を信じるためじゃ。許せ。」


メグは自分の指を噛み、血のついた手を地面につけた。

次の瞬間、地面に魔法陣みたいな模様が赤く光だし結界内を赤く染めた。いつのまにか、俺がうつ伏せになっている。


「え!?」 


「心配せんでも悪いようにはせん。」


いや、それだいたい悪者が言うセリフ‥‥。

俺の意識が消えた。



「メグちゃん!?なにしてんの?なんでレイを。」


私は信じられなかった。まさか、メグちゃんが、封印結界を発動しちゃうなんて。レイは怪しいかもしれないけど、悪い子じゃ無いと思う。


メグちゃんは普段から森などの魔物がいる所では、結界だけでなく、封印術も仕掛けておくのはいつものこと。結界内に入られた時の手段だ。相手の力の源を封印。および相手の意識を奪う効果がある。術はすごいが、作るのには時間も痛い目もに合う。発動には、自分の血、自分の代わりになる分身(メグちゃんは自分の毛を代用とした。)が必要。


「心配するな。妾とて、用心のためじゃ。妖刀に操れられてるかもしれん。これで妖刀の力は一時的だが、レイから離れた。意識が戻った時に妾達のことがわかれば操れられてないとわかる。その為じゃ」


「んー。それなんか、授業の時にきいたきがするけど‥。」


「おい!マリカ!?一昨日の授業で教えたばっかじゃぞ!!」


痛い!メグちゃん容赦ないんだよ。殴られた頭をさすりながら、メグちゃんを睨む。


「まあ、村に連れて行くのも、この方が安心じゃ。」


「かんがえすぎだよ!メグちゃんが運んでよね。」


「もちろん。そのつもりじゃ。さあ、日が落ちる前に村に戻るぞ。」


「は〜い。」

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