第11話チートな2人

一緒に訓練をし、やはり魔法制御はアメリアはすごいと実感した。お茶を飲みながら聞いたのだが、アメリアは9歳にして回復魔法が使えたわけだが、通常、知識的にも魔力制御的にも難しいらしい。


ザハルさん曰く、回復魔法を正確に出来るようになるには、身体の仕組みを知る事で成功するか、元の状態に戻す想像力とそれに担う繊細な魔力制御をする事で成功する2パターンがある。前者は、無詠唱もしくは重症患者でも対応できるほど回復力が高い。後者は詠唱が必要で回復力も、術者の魔力量によって変わってしまう。人によっては擦り傷を治すしかできないそうだ。


アメリアは前者の入り口らしい。擦り傷なら詠唱無しででき、ザハルさんの見立てでは詠唱をすれば医者レベルまでできるんじゃないかとおもっているそうだ。9歳で?流石に重症患者と出会うことがないので試したことは無いそうだが。因みに前者という事は少なからず身体の仕組みをしっているということ。そこまで勉強したのがすごい。

しかし、この世界に転生して、この世界の医療技術がどこまで発達しているのか勉強してこなかったのでわからないが、他の分野はせいぜい中世より少し進んでいる程度だろう。魔法があるおかげだと思う。最低限の知識があれば、後は魔力でなんとかなるのだから。医療技術は本当に発展しているのか?


アメリアは俺と違うが、その知識も魔力を制御するセンスもずば抜けて優秀なのだろう。もしかしたらアメリアも俺みたいに転生してチートで知識も前世の知識なのかとも思った。そうすれば、俺が惹かれた理由も、この世界で身分に関係なく他人に思いやりのあるのも納得できる。だが、確証も無いことだし聞くのが怖い。

普通に考えれば馬鹿げた話だ。頭がおかしいのではと思われやしないか。嫌われないとは思うが今の関係が少しでも揺らぐのが怖い。


「クルト!どうかしましたか?」


「いや、何でもないよ。今日の最後の訓練が上手くいかなかったから、ちょっとやり方を模索してただけだよ。」


「そうですか。あまり根気を入れすぎないでくださいね。身体を壊してはもともこうもないのですから。」


「そうだね。やれることを一つずつ進めよう。」


「はい!」


「クルト様。アメリア様のいう通りでございます。お二人とも大変優秀で、今日指示した訓練も一般的な人はまだまだ先の訓練になります。今の時点で十分進んでますので、もう少し気長にお考えください。」


「そ、そうですか。わかりました。」



その日、夕食はアメリアと食べた。父様は残念ながらいなかったので、家族を含めての食事はまた次回となってた。


「アメリア様。今日は私がお風呂の方ご一緒させていただきます。」


「はい。お願いします。」


このやり取りで驚愕の事実が!!なんと、週末はウチに泊まるらしい。

え!?ありなの!?まあ、子供だからアレだけど、はしたないとか言われない?


「クルト様。大丈夫でございます。今日アメリア様達が来てる事はこの別館にいる者以外知りません。もちろん本館の方々も使用人含め旦那様専属者以外はしりません。」


「そ、そうだったね。安心したよ。」


顔にでてたかな?何も言ってないのにレイチェルが説明してくれた。

 

その日の夜、何故か何故か直ぐには眠れずにバルコニーに出た。夜風が吹き少し肌寒い。でもなんかちょうど良い。星空を見上げてここ最近の事を思い返す。なんか濃ゆい日々を過ごした気がする。


「眠れないのですか?」


後ろを向くとカーディガンを羽織ったアメリアがいた。


「ア!アメリア!?…そっかバルコニー繋がってるんだったね。」


ちょっと目のやり場に困った。ロリじゃないよ!ロリじゃないけど内心焦った。


「はい。外を覗いたら、クルトが歩いてるのが見えたので。」


そう言ってアメリアが俺の隣に来る。


「そっか。アメリアも眠れないの?」


「はい。なんか目が覚めてしまって。自分の部屋以外で寝るのもあまり無いですから。」


「そうだよね。俺なんて1度もないし。」


「それでどうしたんですか?」


「ん?…んーなんかあっという間にいろいろな事が決まって、一緒にやるべき事が増えて…。でもなんか凄く充実しててまだ子供なはずなのに。なーんていろいろ考えてた。」


「なんですか?それ?この歳で婚約者がいるのは普通ですよ。生まれた時から決まってる家もあるくらいですし。」


「そうなんだよね。俺って友達いないからな。社交場事態出た事ないし、話せる知り合いがいなかったから実感がわかないんだよ。」


「確かに。クルトは体のこともありますから仕方なかったと思います。…私は今幸せですけど。」


この子は顔を赤くしながら急に何を言ってるんだ?誘ってんのか?……いかん、いかん。邪心が。俺はロリじゃない…ロリじゃない。


「俺もアメリアの婚約者になれたから頑張れるし充実してるよ。」

 

「幸せって言ってくれないんですか?」


アメリアがちょっと拗ねた顔で顔を背けてしまった。


「いや、それは幸せだよ。ただなんか…。」


「急に熱が上がりすぎてる…ですか?」


言いにくかったことをアメリアがあっさり言ってきた。それにしてもアメリアも同じように感じてたんだな…と。


「そうだね。別に悪いこととは思ってないけど、怖いかな。」


「それは私もです。クルトがいつか冷めたらどうしようーって。」


「それはないと思うよ。アメリアの事知るたびに好きになってるんだから。」


「また、平気でそんなこと言って。そういうのはもっと私を知ってから言って下さい!!」


アメリアは少し怒り気味で言ったような気がした。


「確かにそうだね。でもアメリアのことはここ数日でも見てたつもりだよ。アメリアは礼儀正しく、相手の顔色をよく見てる。ただたまに見過ぎている感がある。普段から周りを見ていて、相手を喜ばすことが好きなんだと思う。だけど相手や周りを気にすぎるあまり、貴族だからと振る舞おうとしてから周りをしてる。後は周りに認められないと不安になり周りにあたってしまう。本心ではしたくもないのに。後は好きなことにはのめり込みやすいのと、イタズラは昔から好きだったもんね。」


アメリアは顔を赤くして慌て始めた。


「なっなっ何故?」


「見てるんだよ。これでも。間違ってたらごめんね。」


「いいえ。なんか恥ずかしく思いますが嬉しいです。私から見たクルトは頑張り屋さんで優しい方だと思います。周りを見るのが苦手で、でも関わるみなさんを慕いたいと慕われたいと願っているのかと。その為なら頑張るのは良いところなのですが頑張り過ぎてご自身のことが疎かになる所は心配になります。それに人の気持ちに対しては無頓着と言いますかもう少し察していただけると。」


ん!なんか不満まじりになってないか?


「そっそうなのかな?気をつけるよ。」


「まあ、そんなところが可愛らしくて思います。それにほっとけないといいますか…支えたく思います。」


「可愛いはちょっと複雑だな。でもありがとう。アメリアも結構、物事をはっきりいうんだね。確かに自分の事言われるのは恥ずかしいな。」

  

「そうでしょ?クルトはここずっと私に対していつもこんな感じだったんですよ!今のクルトみたいに赤くなるのは仕方ないんです。でも確かに私が言った事でクルトが、赤くなってくれるのは嬉しくなりますね!それと、元々知り合いですし、短い時間しか話してないですが、クルトを知るのも好きになるのも充分だったように思えてきました。」


満面の笑みで俺を見つめてきた。多分、俺は顔が赤いはずだ。嬉しくてしょうがない。心臓がバクバクしてる。俺は我慢ができなくなって手を繋いだ。抱きつかなかった俺、よく我慢した!!…それともヘタレかな?…アメリアが一瞬ビクッと動いたが繋ぎ返してくれた。俺はしばらく顔を見れなかった。 


「確かにそうかもね。時間だけが全てじゃないかも。」


「はい!でもこれから時間をかけて私のこと見てくださいね!!」


「え!?…うん。もちろん。」


してやられた感じがした。


『カーティス公爵視点』


何故だろう。こうなる事は予想出来たはずなのに。いや、考えないようにしていたというのが正しいか。ウチで学院に入る前に魔法制御を教えたのは良かったのだろうか、学院で騒がられるより良かったかもしれないが。それでもこれからどう動くかがあの子たちの将来を大きく左右することになる。


私は先生の所に向かって馬を走らせている。馬車を使わずに移動するのは久しぶりだ。気持ちはいいが、今はそれどころではない。今日からアメリアは先生のところで泊まっている。しかし、着く頃には寝ているだろう。会えないのは仕方ない。


娘のアメリアはよく出来た子だ。ただうちの家系の精霊の加護のみ無かった。妻の態度は明らかにおかしい。娘に対しての接し方ではない。完全に見捨てている。そのせいであの子は曲がってしまった。いつからか笑わなくなった。誰に対しても厳しく子供なのに甘えることもせず、わがままも言わない。うちの影では逆にわがままし放題だと聞いていた。さらに、あるお茶会でのあの子が笑っているのを見た。あの笑顔には感情が無く見ていて只々悲しかった。何故周りは気づかないのか。怖かった。その日を境にクルト君の所にいかせられなかった。

しかし、このままではあの子は政治のために妻に利用される。なら、先生の所なら角が立たず受け入れてくれると思いクルト君との婚約をすすめた。


あの子が自発的にレイチェルに会いに行くと申し出た時、婚約を了承した以上許すしかなかった。ただ心配だった。外見だけの子。中身のない子になってしまった。そう思っていたから。

あの子がまた感情豊かに表情を変えて赤面したり、笑ったり楽しげだったと知らされた時はこの目で見るまで信じられなかった。



「おかえり。急に出て行ったから心配したぞ。許可は出したがすぐ行くとは思わなかった。クルト君とはどうだった?」


「ただ今、戻りました。お父様。ク、クルト様から…せ、正式に婚約を申し込まれました………。」


目の前の子はだれだ?顔を赤らみながら下を向き、恥ずかしそうに話している。昨日までの子と本当に同じ子か?


「あ、ああ。その様だな。クルト君から、アメリアに本気に惚れたから正式な婚約者として、私に会いに来たいと申し出があった。良かったな。望まれて婚約者になれるんだ。」


「はい!」


パーと笑顔になり嬉しそうに私に笑顔を向けてくれた時、不覚にも涙が流れてしまった。


「お、お父様?!」


「だ、大丈夫だ。気にするな。」


すぐさまアメリアから顔を背けて、涙を拭う。まさか、この私が自分の感情に流される事がまだあるとは思わなかった。


「でも。」


「嬉しかっただけだ。私もクルト君に会えるのが楽しみだ。」


すぐ涙を止め、私は笑顔で娘を見た。


「はい。」


あの日のことを、あの笑顔を思い出しながら先生の部屋の前に来た。



  

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