第8話 魔力制御と顔合わせパーティー?

早朝、早めの朝食をとり、適度な運動の為に散歩をし、体力づくりのランニングをする。これは8歳から続けている俺の朝の日常。事前に公爵に願い出ておいたのですごせている。

ランニングを終えると、アメリアが朝食後のお茶をテラスで飲んでいた。どうやら、この後に魔法制御の練習をするらしい。ザハルさんから着替えが終わったらここにくるように言われた。


待ちに待った魔法!!急いでテラスまできた。

席に着くと、ザハルさんが説明をしてくれた。


まず、魔法の源の魔力を使って様々な効力に変えること。もしくは大気中の魔力を集めて効力を得ることの二つが基本。第一級魔法に属するものはどちらも使い効力を出すものらしい。国防の魔法障壁がいい例だそうだ。自身の魔力を使う場合、魔力を蓄える気管とそれを外に通す魔管が身体にあるそうだ。魔法を使ったことのない者は、魔管が細い。それゆえに慣れと知識が必要になる。魔力暴走は基本、魔管が原因だという。魔力は万力共通で、空気中の魔力も、生き物にある魔力も、技術次第で干渉できる。


これからやる訓練は、先生が干渉をして魔力を引き出す。生徒は一切なにもしないのが、鉄則とのこと。俺は挙手をする。


「どうぞ、クルト様。」


「はい。今の説明ですと、学園ではどのように訓練するんですか?先生が足りない気がします。」


「その通りでございます。お金のある家、王族は基本事前に会得するのが常でございます。それでも人数は残りますが、王城や軍隊より暇な職員を回してもらいやっています。」


やり方は同じなわけね。


「それでは、さっそくクルト様よろしくお願い致します。何もしないでいてくださいまし。」


「あれ?アメリアは?」


「もう、アメリア様は済んでおります。アメリア様はたった一回でご自身の魔力を操ることができました。まさしく天才です。今はご自身の魔管を大きくする為、ご自身で魔力を体内で循環させる練習をお願いしています。」


すでに始めてるとは聞いていたけどここまで差があるとは。


「クルトも頑張って!!」


ヤバイ。可愛い。


「うん。」


まあ、最初は何もしないから頑張りようがない。


「では失礼します。」


ザハルは俺の後ろに回ると、背中に手をあてた。自分の意識と関係なく、全身に血が通っていくような感覚におちいった。血でなく魔力なんだろうが。


「これは、なかなか。骨が折れますな。」


俺、魔力膨大にあるみたいだから、そりゃあそうだろうな。体中に魔力が循環させているのがだんだんわかってきた。しばらく、そのままの姿勢で時間だけがすぎていく。しばらくして、ザハルは額に汗をかきながら手を離した。相当疲れるみたいだ。


「休憩いたします。やはり歳には勝てませんな。」


「ありがとうございます。」


「どうですかな?」


「はい。今は魔法が伝わるのがわかります。」


「良いでしょう。しかし、まだ外には出さないでください。」


「わかりました。」


隣を見ると、アメリアが目を詰むっている。可愛い。でもなんか不思議だ。今、アメリアの周りが水色に発光していた。目で直視できるぐらいの明るさだ。

あれ?消えた?


「すみません。感覚が消えました。」


「いいえ。思っていた以上でしたよ。あそこまでの時間掴んでいたなら、2、3回やればいけるでしょう。お嬢様が特別なのでございます。それにしてもクルト様の魔力は暴力的でございますね。さらに量もそこが見えません。」


「そ、そうなんですか?自分では全くわからないのですが。」


「いいえ。ここまでの才は見たこともございません。精進を怠けなければ、素晴らしい成長をされることでしょう。」


「ありがとうございます。」


それにしても、アメリアの集中力は凄いな。初めてから1度も目を開けずに、循環させ続けている。そして、3回目で、俺も循環に取り掛かることができた。ザハルさんが、再度手を置く。


「一定の量を出してください。出しすぎたら私が止めますのでご安心ください。」


「はい。わかりました。」


ゆっくりザハルさんがやっていた通りしてみる。んー波状になっちゃうな。オーっと!!咄嗟に目を開ける。どうやら、止めてくれたらしい。


「やはり、なかなか上手くいくには難しいようですね。先程も伝えましたが、暴力的で、量が多いのが理由です。薬をお持ちですね?」


え!?しってるんですか!?声が出なかった。


「伯爵様から特別にと。伝え聞いております。再度あるかもしれませんし、飲めばやり易くなると思います。」


「薬ってなんのことですか?」


いつのまにか、アメリアがこちらを睨み付けていた。可愛いんだけど。


「あ!?えっと、実は一度魔力暴走を引き起こして死にそうになったんだ。持病みたいなものかな。その薬。黙っててごめん。」


ザハルさん?あえて口に出したでしょ。絶対そうだ。読唇術使えるの知ってるくせに。ザハルさんへの文句を心にしまいながら、弁解した。


「アメリア!?」


「私は、もうクルトの婚約者です。そういったことは事前に教えて下さい。心配します。さっきは一瞬息をするのを忘れたくらい心配したんですからね!」


泣きながら怒られた。なーんかお互い急に熱が上がったよな。理由はわからないが、恋したのも、恋されたのも間違いなさそうだ。


「ごめんなさい。」


横に顔をずらしながら拗ねてるようだ。


「いいです。それよりも、早く飲んでください。飲まないと、私の心配が収まりません。」


「ああ。そうするよ。ありがとう。」


さっと、水が出される。流石レイチェル。薬を飲み、一呼吸をする。


「アメリア様、クルト様、一度休憩にいたしましょう。お茶の替えをお持ちいたします。少々お待ち下さい。」


ザハルさんが席を外す。アメリアが俺を睨む。まだ怒ってる。


「他にはありませんか?」


「え!?えっと。じゃあ耳貸して。」


「はい。」



アメリアが近くにきて隣に座った。そして、俺自身が魔人とエルフのハーフだと伝えた。だから魔力暴走が起きるかもしれない事。万が一があった時に彼女が覚悟を持ってもらうために伝えた。しばし、涙目を俺に向けてくる。我慢しているようだ。が、急にアメリアはただ俺を抱きしめた。


「心配かけるんだろうけど、大丈夫。アメリアの為にも無理はしないから。それに今までだって平気だったし、レイチェルもザハルさんも皆んないるから。」


「私、魔力をコントロールをするのがとても優秀だと言われました。だから、大丈夫です。私がクルトを支えますから。」


「ありがとう。無理はしないでよ。」


「クルトもです。」

 

「はい。わかりました。」


頭を撫でながら、ただ心配される立場が申し訳なかった。



あっという間に顔合わせの日になった。今日まで午前に魔力の制御と座学。午後はマナーと、アメリアとは別れて、剣の訓練をしてもらった。ザハルさん強すぎる。魔法が専門かと思ったら、あれは執事になった時に必要になると思い免許を取ったとのこと。前職が騎士だそうで、なんと軍隊に所属していたらしい。そりゃあ、強いよな。


顔合わせは用は洋式の結納だった。両家の当主の、挨拶から始まり、家同士で一人一人挨拶をし、結納品の譲渡。俺は覚えさせられたセリフを言い、慎ましく行われた。アメリアが綺麗すぎた。そのせいで余計に緊張した。何度か見惚れるもなんとかやりきった。はじめての弟とは話す機会すら与えてもらえず、見たただけとなった。


顔合わせが終わり、公爵、父様、俺、アメリア、ヴァンディスクは部屋を変え、婚約パーティー等の今後のための話し合いをすることになった。公爵夫人は三男を連れていなくなっていたし、家のは馬車を手配してたから、帰ったのだろう。母様達に関してはダメな気がする。身分はうちの方が下だからね。


「それでは、まず婚約パーティーをどうするかだな。」


父様が開口一番言い出した。いや、せめてそこは公爵に譲れよ。


「そうですね。すぐやりたいが、現状先生のところも含めてあまりよろしくない。うちのは、先生は好きみたいだが、今回の婚約は納得していないようなので。変な噂が流れるのは困るのでむずかしいですね。」


おい、公爵!?それでいいのか?先生って?たしかにそうだが、あなたの方が身分上ですよー。ヴァンディスクも困惑してるよー。アメリアは普通にしてる。‥??


「そうなんだよな。うちもうちだから何もいえない。」


「すみません。発言よろしいですか?」


「ん?なんだ?いいぞ。クルト。」


いや、だから父様ー‥‥。わざわざ、公爵に向けて言ったのに。


「‥はい。今日まで公爵夫人を納得させれず、すみませんでした。今回の件は今日、両家だけでパーティーをしたことにしまして、公は改めてというのはどうでしょう?理由としては、これから学院に行く準備のためということで。」


「うん。私もそう考えていた。クルト君はやはり、優秀だな。因みに今日パーティーをするぞ。準備はさせておいた。ただ一時的には大丈夫だが、理由にもうちょっと何か欲しいんだ。」


「ありがとうございます。確かに理由としては弱いとは思ってはいました。」


「仕方ない。クルトの体調ということにするしかないか。どうせ、知られていることだしな。」


「え!?」


どいうこと?


「クルト君。魔法結界を壊した子で、生きているなんて今までにいないんだよ。だから、去年はクルト君の名前が知れ渡っていたからね。未だにじゃないかな。」


「そうなのですか?知りませんでした。」


「ああ。だから、外に出したくとも出せなかったんだ。知らないのも無理はない。いってなかったしな。」


「では婚約パーティーは後程、機会が良い時に再度話し合いましょう。」


公爵の話し方が違いすぎて気持ち悪い。まあ、あれが本来なんだろうが。理由がわかっててもなんで、父様はこの場でえらそうなんだろう?


「アメリアもそれで良いな。」


「はい。」


「それでは、クルト君。ザハルが君の専属家庭教師になるわけなんだが、ウチでやるよりも先生の所でお願いをしてある。アメリアも了承ずみだ。そこで、週の前半はそれぞれの家で別々に行い、後半にザハルとアメリアがそちらに行く。クルト君に関しては前半はザハルが代わりの先生に指示を出しておいてくれるから心配しなくていい。」


「はい。よろしくお願いします。」


すでに決まってたみたいだな。


因みに、事前にレイチェルからおしえてもらったのだが、1週間は8日あるそうで、火・水・風・土・木・植・闇・光の順番で11月あるようだ。年・週・月・日は前世と同じ。ただ1か月は40日前後あるらしい。1日は前世と同じだ。24時間である。


今更言われた。今まで気にしなかったおれがいけなかったんだが。教えたことはあったようだ。うちにいた時は毎日同じスケジュールで変わらない日々を過ごしてたから分からなくなってた。レイチェルも気にしていたようで、レイチェルからしたら改めて教えたとのことだった。


「細かいことはまだあるが、おいおい話し合おう。それでは皆、準備に入ろう。」


全員席を立ち、それぞれの部屋に案内された。みなうちの中のパーティーとあって、ラフな格好に着替えるとのこと。


まあ、今日はアメリアとのはじめてのダンスを楽しもう!!!のはずだったのだが‥‥。


もちろん最初は俺とアメリアがおどる。中央までいくまでの所作は上出来だったと思う。


「ク、クルト様。私今とっても幸せです。」


アメリアの手を取りこれからダンスが始まる時にすごい笑顔で言われた。完全に見惚れてしまい、スタートを遅らせてしまった。


「アメリア。今日はいつもと違う美しさがあって、何度見惚れたか。今日の式典のドレス。今のドレスもすごく似合ってる。今俺も、すごく幸せだ。」


なんとか挽回し、耳元でささやきながら、頬にキスをした。


俺もさっきの照れのせいか、自分でも恥ずかしくなってきた。2人ともきっと赤くなってる。

 

ダンスを終えて、目に入ったのが父様と公爵と3人で話している夫人がいた。まさか、参加してくれてるとは。


「両親が仲がいいのは一安心だよね。」


「はい。そうですね。あんな母見たことないのでおどろきました。」


飲み物を飲みながら2人で話していた。


「それにしても、ごめんね。スタート遅れちゃって。」


「そうですよー。本番ではダメですからね。緊張しすぎです!!」


「仕方ないじゃん。婚約者がこんなにも綺麗なんだもん。見惚れてただけだよ。緊張もしてたけどさ。」


「っ〜……………。そっ…それでも私のクルトがカッコいいってみんなに見せつけたいんで、本番では頼みますよ!!」


「え!?あっ…うん。…わかった。」


「これはこれはクルト様。アメリア様。微笑ましい限りで何よりでございます。この度はご婚約おめでとうございます。」


「…クルト様。……アメリア様。ご…ご婚約おめでとう……ございます。」


ゼハルと母さんが挨拶に来てくれた。やばい顔が赤いままだぞ!!アメリアも!!…一呼吸。それにしても母さん。泣きすぎ…。


「ありがとうございます。ゼハル、レイチェル。」


「…ありがとうございます。…ゼハル。…レイチェル。」 


アメリアも、もらい泣きしてるし。俺はそんな3人を見てるのが嬉しくて……あれ?…ゼハルさんまで。

俺は涙を堪えながら、アメリアにハンカチを渡した。

4人仲良く泣きながらこの婚約を喜びあった。


夢のような時間はあっという間に終え、馬車に乗っての帰り道。ただアメリアのことを考えていた。

素敵な女性だ。容姿も、性格も価値観も雰囲気も。あげればキリがないほどに。この世界で唯一だろう。ただ何故彼女にそこまで惚れたか。キッカケが何だったのか、わからなかった。ただ、思い浮かぶその笑顔を守りたいと強く思う。そして周りの人たちが祝福してくれた事に感謝しきれない。みなを守りたい。この幸せを守りたいと強く願った。








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