第2話 魔力暴走
2話
レイチェルが戻ってきてくれて、もう1年以上が経ち、生活は激変していた。料理は美味しいし、字やマナー、ダンスの練習が再開された。この1年充実した毎日を送くることができた。何よりレイチェル、マジで美人さんだった。
今更ながら知ったが、自分が住んでいる建物は母屋とは別の父様使用の別宅だった。どおりで、俺は母様と面識がないのかがわかった。
ほぼ確定ごとだが、今の母様とは血縁ではないのだろう。弟が生まれて、すぐに別宅での生活が強いられた。最初は子育てが大変だからと、思っていたみたいだが、未だに別宅なのはおかしい。弟とは4つしか違わないし、それから一度も母様は別宅には来ていない。
それまでは、別宅には使用人は配置されておらず、父様が用がある時のみ父様専属の使用人達がきていたみたいだ。それは今でも変わらず、父様がくる際は必ずきている。
今、自分の身の回りをしてくれている使用人達は俺と一緒に左遷扱いで回された人達だそうだ。どうりで、態度が変なわけだ。
ただその中で、レイチェルのみ志願して、メイドになったようだ。マヂ感謝‼︎
因みにこの1年で、レイチェルはメイド長にまでになっていた。メイド以外の仕事もこなしているらしく、この別宅において、レイチェルがもっとも権限をもっているらしい。少し前までいた問題児達も何人か母屋に配属されるなど、更生施設となっていた。因みに今はほとんどが、新人の教育施設へと変貌をとげている。
マヂですげー!レイチェルの昇進と一緒にメリッサも補佐として動いてるらしい。あれだけ酷かったメイドがだ。最初はレイチェルを犬猿してたみたいだが、レイチェルのおかげで、昇給したのがきっかけらしい。現金なもんだ。その頃から、俺への態度も使用人らしいちゃんとした対応をしてくれるようになった。レイチェルが俺のそばにいる時は、メリッサが基本他を見て回っている。男性の使用人もいんだけどな〜。今は立場がないらしい。
レイチェルが戻ってから知ったが、別宅には母屋にはない書庫がある。この世界に来てわからないことだらけだったから、本当に助かった。最近では暇な時間に書庫に来て、物語や神話、この世界のことを学んでいる。僕の方の知識の補助もあり、大体字が読めるようになったからだ。
レイチェルには子供なのだからもっと外に出るべきだと口すっぱく言われるが、探究心は抑えられない。
そして!!なんと、この世界には魔法があります!!
まぢ嬉しい。テンション上がりまくりだ!!直ぐにでも試したい!!!
が、魔力操作の仕方を教わり、試験に合格しないと使ってはいけないらしい。一応12歳で魔法学校に入り、直ぐ様適性を調べて、魔検に向けて授業が始まる。貴族の血縁者は強制的に受けるみたいだ。一応、平民でも、魔力持ちであれば無償で受けられる。魔法学校の正式な入学は魔検の合否で確定する。落ちた者は、普通科のある学校に移される。
以前、父様から俺は母様の血筋で魔族の血が入ってるらしく、間違いなくエリートコースだと言われた。ただ、他人には言うなと口止めされたが。
因みに弟は違うらしい。この件で母様とは血縁では無いと確定した。他人に言うなの他人には、家族も含まれている。知ってるのは俺、父様、レイチェル、父様付き使用人数名とのこと。父様もそれ以上のことは教えてくれなかった。時が来たら話すとだけ言われ追及できなかった。
レイチェルにも聞いてみたが、はぐらかされた。ただふと、思ったのだが、俺とレイチェルの瞳の色は黄色で一緒だ。もしかしてとは思うが、でも、そうだったらいいなーと思う。一度、母様と呼んでみたくなったが、恥ずかしくて断念した。血縁であろうと、なかろうと俺たちにとってはレイチェルは母親同然だ。最初は萌てたが、今では母親としか見れなくなった。良かった〜。
書庫のおかげで、この世界のことも少しはわかった。
今住んでいるバング国が母国で、人間を主にした国。周辺諸国にはエルフの国、魔族の国、ドワーフの国、魚人族の国、魔獣族の国(人型の魔物)があり、個々にいくつか国が別にあるようだ。全ての国で、交流があり、国の中でも、種族多様に暮らしているらしい。周辺諸国で争いがないのはいいことだ。
しかし、ある国境越えると話が変わってくる。今は停戦時期らしく、大きな争いはないようだが、その国境を越えると、侵略国家がうごめているようで、今でも争いが絶えないらしい。そんな国々から身を守る為に同盟国として、それぞれの国から人を集め同盟軍なる軍隊が存在する。物流の警護は全て、この軍隊がしている。こういった軍隊の活躍もあり、友好関係が成り立っている。それが、原因で、どの国も軍隊のトップには逆らえないらしい。それはそれで問題がある様な気はする。
そうなると、気付いてないだけで、この屋敷にも人間以外の種族も住んでいるのかな?今度レイチェルにでも、聞いてみよう。まあ、そもそも俺が人族ではないんだけどね。
読み終った書物を片しながら、読んだ内容を頭の中で整理していると、一つの本が目に入った。
「魔法制御技術指南書」
いわゆる、魔検の参考書になる本だ。父様には禁止されているが、見つけちゃったら読みたくなる。読みたい。んーー、と考え込みながらも、その本を手にした。都合がいいことに、今、この屋敷には父様もレイチェルも出かけてていない。ここで、読まなければ次にいつチャンスがあるかわからない。基本レイチェルが一緒だから、このタイミングは奇跡だ。
うん、読んじゃえ。
最初のページには注意事項で、12歳以下の子供は魔法検定第三級合格者同席のもと、読むようにうながしていた。そんな資格もあるのか。
続きには魔法制御ができず、暴走すると死に至る危険性と、過去の事故例が3ページにわたって書き記されていた。
流石に戸惑い、一度本を閉じる。ちょっと甘く考えすぎてたかな。めっちゃ怖いぞ。
よし!意を決して読んでみる。読むだけであれば大丈夫!好奇心に負けた。読み進めていくと、なんとなく理解してくる。理解してくると、自然とやってみたくなるのは仕方ないと思う。
ああ、これかな?自分の魔力の源みたいなのを感じ始めた。体が暖かくなっていく。
ん⁉︎これどうやって止めるんだ⁉︎俺の中の魔力が溢れ出してくる感覚に訳がわからない。一緒に体温も急激に上がっていく。頭が痛い、これはマヂでやばいぞ。急に俺の周りに透明な枠ができ始めた。枠が出ると、急激に上がった体温が下がっていく。頭痛も多少和らいでいく。枠はどんどん膨れ上がり、しまいには、ヒビが入り割れる。割れると同時に俺の意識が消えた。
「だから、書庫には入れるなといっておいただろうが!!」
「申し訳ございません。」
薄らと近くで誰か話をしいる声が聞こえる。やたらと目蓋が重い。
「いや、すまん。少し取り乱した。私もわかってて黙認していたから、非は問わん。それにしても、幻惑の呪いをかけていたはずなのにどうやってみつけだしたんだ?結界のおかげで命に問題はないようだが、お前が直ぐに気付いて魔力の補充をしてなかったら、危なかったぞ。まさか結界をも壊すとは‥‥。」
「と、父様‥‥。」
やっとのことで言葉を出せた。目もなんとか開けられた。どうやら自分の部屋で寝かされているようだ。
「おう、意識が戻ったか。すぐに医者を呼べ!異常がないか調べさせろ。」
「ク、クルト様!!」
レイチェルが直ぐに駆け寄り、俺の手を握りながら、顔を俯かせて、震えている。
「良かった。ご無事で、本当に良かった。」
震える声で、俺の手を強く握りしめている。だいぶ、心配をかけてしまったみたいだ。
「レイチェル。父様。ごめんなさい。」
「うむ。先ずは医者に診てもらう。話はそれからだ。」
しばらくして医者が来た。レイチェルは自分で歩けないようで、他のメイドに支えながら俺から離れた。診断を受け、別状はないとのこと。念のため数日、薬を飲んで安静にしておけば大丈夫だそうだ。終える頃にはなんとか、体を起こすくらいにはできるようになっていた。でも、体中が痛い。全身筋肉痛になってるようだ。
「馬鹿者!!一歩間違えば死んでいたぞ!!!レイチェルがお前に魔力補給をしてなかったら、間違いなく死んでいた。どうやってあの本を見つけた?」
「父様。心配かけて、ごめんなさい。たまたま目にはいったんだ。特に何もしてないよ。」
レイチェルは俺と父様の話を、俺の手を握ったまま黙って聞いていた。
「んー、そうか。ちょっと調べた方が良さそうだな。」
父様は眉間を、手で摘みながら考え込んでしまった。
「調査は私の方でしとくが、ことの重大さを理解してもらう。先ず、あの本は13歳以上にならないと、認識出来ない呪いがかけられている。そして、書庫には魔力暴走を食い止める結界がはられている。この結界は私がしたもので、術者の私が寝ていたり、意識がない状態でない限り、弱くなることはない。何か細工等をすれば、直ぐ私に分かる様になっている。ここまで、いいか?」
「はい。」
「それでだ、この結界は魔力暴走の際溢れ出した魔力を吸収し、魔力の放出を止める作用がある。」
「あ!?」
「そうだ。お前の場合、吸収はできても止めることは出来なかった。結界が、お前の魔力に耐えられなかったんだ。ここで、以前話した、お前の母親が、魔族の血をひいてる話はしたな。実は、それだけではない。私の祖母はエルフだ。お前はエルフの血も受けづいだらしい。まさか、本当にどちらも継ぐとは思わなかった。魔族の血だけならあの結界は壊せない。ついでだ。お前は魔力の高い別々の種族が子供を作らないのは知っているか?」
「いいえ。初耳です。」
「そうか。まず、エルフ、魔族、魚人族、魔獣族が魔力が高い。人間と、ドワーフは4種族に比べると低い。低いだけでなく、魔力そのものも、持たぬ者がいるくらいだ。高い4種族は強弱あれど、必ず魔力持ちだ。上げた4種族の間では、結婚はあれど、子供を産むことはない。
もともと、できにくいのだが、もし産まれてもある時期に魔力暴走が強制的におきて死亡してしまう。助かっても、後遺症で体が動けなかったり、自我がなくなるのが殆どだ。因みに低い種族のハーフ同士でも、高い種族の別々の血筋を2つ継げば同じことになる。」
「⁉︎それじゃあ、僕は‥‥‥。」
「まだ分からんが、その時期はもう過ぎている。油断はならんがな。お前は容姿から魔族の血を継いだのはわかっていた。時期が過ぎて、大丈夫だと思ってたんだが‥‥‥。」
父様は深い溜息を吐きながら、不安な様子で俺を見つめていた。父様のこんなら表情は初めて見る。いつも威厳があり、弱さを出さない人だからだ。
「実はな。お前の母親は、今の妻ではない。」
自分は静がに頷く。
「そうか。母親が、魔族の血を継いでいる話でわかってたんだな。お前の母親とは、馴染みでな、私の初恋の相手だった。ただ、身分の差で結婚は出来なかったが。今の妻はなかなか子供ができなくてな。私のエルフの血も関係していたと思うが。
そこで、妾をとる話になったんだが、私はどうしても、彼女と一緒になりたかった。まあ、ふられてしまったが。私との間に子供だけは了承してくれてな。ただ、そこでお互いが他種族とのハーフだとは知らなかったんだ。それを確認するのを忘れてしまった。うかれてたからな。それでも、奇跡的に子供ができ、今の妻の子供として育てることになったんだ。」
「今でも母様をすきなんですか?」
「ああ。」
まぢかー。父様って一途なんだな。でも、なんから安心した。
「でも母様は?」
無意識的にレイチェルを見る。
「でていった。因みにレイチェルはお前の母の妹だ。だから、お前の叔母にあたる。」
だから、僕のことあんなにも気にしてくれてたんだ。
「レイチェル。ありがとう。」
自然と感謝の気持ちを伝えたくなった。
「めっそうもございません。姉の大事な子を死なせるところでした。姉が出ていった日に、クルト様を守ると約束をしていたのに。一度ならず、二度も裏切ってしまった‥‥。」
レイチェルは俺の手から手を離した。
「違う!今回は自分が勝手にしたことだし、前のも僕が悪いんだからいいの!!そうじゃなくて、今まで面倒見てくれてたから‥‥。」
なんだかスゲー恥ずかしいんだけど。恥ずかしさに顔をうつむかせてしまった。
「私はそろそろ戻る。クルト。さっきした話は誰にもするなよ。お前の体に関しては、一度医者と相談する。おそらく、定期的に検査をする事になるだろうから、そのつもりで。詳しくは体調が戻ってからだ。魔法に関しても、自分一人でやるな。家庭教師を探してやる。伝手があるわけではないから、あまり期待されても困るんだが。
レイチェルはあまり自分を責めるな。今回は何事もなかったんだから、次がない様にしてくれれば、それでいい。ではな。」
そう言って優しい顔でレイチェルの頭を撫でた。なんか父様カッコいいー!!
「はい。申し訳ありませんでした。」
レイチェルは直ぐ様、立って父様を見送った。
「レイチェル。本当にごめんなさい。‥でもレイチェルが僕の叔母さんって、なんか嬉しいな。」
満明の笑顔でレイチェルをみる。
「めっそうもございません。」
慌ててレイチェルは頭を下げる。
「レイチェル、‥‥‥‥お願いが‥‥‥あるんだけど。」
「なんでしょうか?」
「2人の時だけでいいんだけど、他の人に聞かれない時とかにさ、ええと‥‥。」
自分の顔が赤くなっていくのを感じる。滅茶苦茶恥ずかしい。でも、もう決めたんだから。
不思議そうな顔で、俺の顔をみている。俺は意を決して、
「母さんって呼んでいい?」
レイチェルが固まった。
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