悪役キャラ!?なんの話?

クロロロ

第1話 魂が2つ?クルトになりクルトに会う

ここはどこだ⁉︎俺はどうなったんだ⁉︎早く起きないと‥‥。

頭痛と体の怠さから熱でベッドの上に寝かされているようだ。俺は恐る恐る自分の手足を動かして感覚を確かめる。問題ない?ゆっくり起き上がり部屋を見渡した。見るからに豪華な作りの家具に囲まれていて異様だ。間違いなく病院ではない。


膝下には濡れたタオルがある。自分の体の無事を確かめる。しかし、体には欠損部分等の傷は見当たらない。それどころか怪我ひとつない。そんな中、血の気がひいた。


「か、体が小さい‥‥」


「クルト様、気づかれましたか?」


黒髪の眼鏡をかけたメイド服を着た女性が心配してそうに上辺だけの言葉を並べながら、部屋に入ってきた。


「クルト様、そんな呆けた顔をされて、どうかしましたか?体調の方は大丈夫でしょうか?」 



急に嫌味な言い方をされて怪訝な気持ちになったが、唖然と見知らねメイド服の女性を見つめるしか出来なかった。メイドは気にもせずに俺の額に手をあててきた。


「まだ、熱があるようですね。お食事の御用意ができるまでお休みください。」


そう言って濡れたタオルを冷やし直し渡してくれてから部屋を出て行った。布団に入り直して、目を閉じた。


(クルトって誰だ?そもそも日本人の名前ですらない。さっきの女性も、黒髪にはだ色の肌だったが、瞳の色が茶色だったことに加え顔立ちから日本人とは思えない。身体の大きさも、自分の声も声変わりしてない子供の声のような気がして違和感がある。ってか俺の肌、白くねぇーか?‥‥)


訳もわからずに頭の中がグチャグチャになるのを感じながら、気づけばまた、浮遊感に流されながら何もない世界を漂っていた。

ふと泣き声が聞こえ、声のする方に目を向けると、銀髪の男の子がうずくまって泣いていた。ここは夢の中か?不思議な感覚に戸惑いながらも声をかけた。


(大丈夫?)


頭を撫でながら聞いてみると、驚いた顔で涙目を見開きながら見つめてきた。俺は安心させるために微笑んだ。

少年の顔が歪み、さらに大泣きしはじめた。慌てて子供をやさしく包みこみながら、背中をさする。


(レイチェルが居なくなってどうしたらいいのかわからなくなっ◯%♯&%〜)


そまま泣き続けてしまった。そんな子供をあやしながら、


(落ち着いて。落ち着いて。大丈夫だから。レイチェルって誰?‥‥‥‥‥)


(……僕のメイド。)


こんな子供にメイドつきかい!?どんなボンボンだよ!


(そうなんだ。メイドがいたんだね。)


(…グスン、いっぱいいるよ。ただレイチェルがいつも一緒だっただけ。) 


男の子は目頭に涙を溜めて堪えながら話してくれた。


(そっそうか。専属だったんだね。なんかあったの?)  


なんつう世界だ!こんな子供にメイドに専属まで!!価値観が違いすぎる…。


(…言いたくない。)


俯いてしまった。困り果てていると体を揺さぶられる感覚に目を覚ました。


「‥‥‥‥‥様‥‥ルト様‼︎クルト様‼︎起きてください。夜ご飯をお持ちしました。動けるようなら手を洗ってきて下さいませ。」


無理矢理、現実世界に意識を引き戻され気持ち悪い感覚に目を見開きながら、目を覚ました。


「う、うん、ありがとう。メリッサ。大丈夫そうだよ。後は勝手に食べるから、もいいよ。食べ終わったら呼ぶから。」


困惑しながらもなんとか返事を返した。


「か、畏まりました。」


メリッサと呼ばれた女性は一瞬、目を見開いては凝視したが、すぐに一礼して部屋を出て行った。

早足に洗面台の前まで来て、自分の姿を見る。洗面台に手をかけながら蹲る。


鏡には先程、夢に出てきた少年の姿をした自分がいた。

日本人の時にラノベやアニメは好きだったけどまさかな〜。

まじか〜。ってことは俺はもう死んだのか。瓦礫の下敷きになったから、そりゃあ、そうか。あいつにはつらい思いさせちゃったなー。妹も大学受験あんのに、迷惑かけたろうな。親孝行なんもできんかった。いろんな思いが、後悔が、俺にのしかかってくる。


(お兄ちゃん大丈夫?)


周りを見渡すが誰もいないよな?あれ?頭からか?ああ俺か。


(大丈夫だょ。さっきのメイド何あれ?) 


(いつもあんな感じだから気にしないで。)


頭から声がする。違和感半端ないなー。ってかいつもってそれはダメじゃないかな?なんか今世、訳ありっぽいな?死んだ悲しみや後悔があるが、今の問題が優先と心に言いかけながら食事を食べた。


(今日もまた、このメニューか〜)


自分とは異なるところから思いがでてくる。ハァー↓。


(体調が、悪いんだから仕方ないさ。)


(でも、いつもこんなもんだよ。レイチェルがいなくなってから酷いもん。)


(レイチェルさんはなんでいなくなったの?)


(僕が…追い出しちゃったんだ。)


食事を取りながらの会話。はしたないと思いながらも実際には話してないからいいのかと自己解決させながら事情を聞いていった。


(なんで?またそんなことになったの?)


(…言いたくない。)

 

頑なに訳を言わない僕。


(じゃあ、レイチェルさんには戻ってきてほしい?)


(……うん。)


おーーーーー!!!僕の感情が俺を侵食していくー。俺まで泣きたくなってる!!気持ち悪いーー!!


(そうか。状況はいまいち飲み込めてないけど、やり直したいんだね?)

 

(うん。)


(なら、謝ってレイチェルさんに戻って来てもらうしかないのかな。)


(む、無理だよ。だだこねて無理矢理追い出したんだから。それに会いづらいし。)


(それだと、もうレイチェルさには一生会えないかな。)


また泣きたくなる感情がーー!


(………。)


(僕が悪いの?レイチェルさんが悪いの?)


(…………ぼく。)


(じゃあ謝らないとね。)


(え!?でも……。)


(ぼくが悪いと思ってて、やり直したいなら謝ろ?俺も協力するから。謝るのは俺がするから僕はなるべく出てこないようにして。俺が謝ったらでてきてよ。僕もちゃんと謝って2度と無いように良い子になるよう努力すればいい。理由はわからないけど、今の君には俺がいる。1人じゃないんだ。2人で頑張ろう?)


(う、うん。やってみる。)


早速、飯を急いでたいらげて、メリッサを呼んだ。


「失礼します。…今日はちゃんと、全部めしあがったのですね。」


意外だったのか、嫌味気味に言ってきた。さっきからなんなんだこいつ?見るからに使用人だろうに。


「う、うん。大分調子が良くなってきたからね。

ところで、父様をよんでくれないかな?」

 

「ご主人様はお忙しい身です。そう簡単に呼んでは、ご迷惑になるかと。何か不都合なことがありましたでしょうか?」


「い、いいから直ぐにつれてきて‼︎」


急に感情が高まり、メリッサを睨み、ヒステリック気味に叫んでしまった。


「はあ、畏まりました。一応、かけあってみますね。」


冷めた目で見つめながらメリッサは部屋を後にした。


(急には勘弁してよ。驚くでしょ、なるべく俺に任せて。)


(ご、ごめんなさい。)


それにしても、さっきの起こし方といい、あのメイドおかしいぞ。


しばらくして、ノック音と共に狐顔の30台前後の男性が入ってきた。今の俺と同じ銀髪で、清楚な服装、立ち振る舞いから、この人が今の自分の父親だと、認識できた。


「入るぞ。今度はどうした?何かあったのか?父さんも忙しいから毎回は来てあげられないぞ。」


男性は迷惑そうな顔をしながらも、目にはどこか優しげな目をしていたので、警戒心は直ぐに無くなった。


すぐさま、ベッドの上で土下座した。


「父様、ごめんなさい。すぐにでもお願いしたいこどがあるんです。」 


「あ、ああ、別にいい。それよりもあまり無理をするな。まだ熱があるんだろ?」


「大丈夫です。この後はちゃんと寝ますから。」


「そっそうか。ならいいが…それで変わった頭の下げ方までしてどうしたんだ?」


頭を下げたままだからわからないが、声から動揺させちゃったみたいだ。


「レイチェルを探して下さい。もう一度会って、話がしたいです。」


「急にどうした?何故突然そんなことを?お前が望んで、専属を外すだけでなく辞めさせたのだろう?」


「ごめんなさい。間違っていました。お願いします。」


「んー、そうか。しかし、追い出した者を戻すのは難しいぞ。それに探すといっても王都は広い。そう簡単には見つけられないぞ。」


「む、無理を言っているのはわかっています。お願いします。」


「ひとまず、頭を上げろ。それに今更会ってどうする?謝ったところで、何も変わらないかもしれんぞ。」


「わかっています。それでも会いたいのです。」


「そこまで言うなら、いいだろう。明日連れてくるから、心の準備はしておきなさい。」


「え⁉︎でも、居場所は‥‥?」


「ああ、大丈夫だ。居場所は把握している。後、お前も貴族の子だ。メイド相手に頭など下げぬよう頼むぞ。私も敵が多いのでな。どこで漏れるかわからん。くれぐれも無いように。時間帯によっては、私も同席する。よいな?」


「は、はい。わかりました。ありがとうございます。」


「明日は、この部屋で話をする。お前もまだ、完治してないようだから早く休むように。では、またな。」


「おやすみなさい。」


かまかけれた〜。明日か、まぢか⁉︎こんなに早く出会えるとは思ってもみなかった。なんでやめたメイドの居場所を把握してたんだ?でも早く会えるならいいか。考えてもわからん。諦めよう!

ベッドに入り直した。今の状況は転生だろう。ただ違うのは俺だけじゃない、僕という本来の人格はそのままいるんだよなー。感情が2人分だからなんとも言えない気持ちだ。

目を閉じて今の状況の複雑さや意味不明な事に頭が疲れた。目を閉じてため息を吐くと

ふと気が緩んだ。眼からは涙が溢れてくる。転生して、早々に厄介ごとだらけで疲れた。死んだことにヒステリーを起こさなかったことに自分を褒めてやりたい。ちくしょう涙が止まんねー。



目が覚めると、体の怠さは消えていた。まだ、頭は痛いが、昨日に比べれば良くなってる。まだ早いのか誰も部屋を訪ねて来ない。顔を洗い、寝癖を直して、身支度を整える。どの服も貴族様って感じで引き笑いになりながら、派手でないものを選んだ。そのつもりだ。

鏡で確認しながら、自分の姿をまじまじと見る。目がすわっているせいか冷めた印象をもつが、結構イケメンだな。成長したらいい線いくかも。まだ幼いせいか可愛さがあるが‥。


「おはようございます。クルト様。朝の身支度にまいりました。朝しょ‥くも‥‥⁉︎」


ノックの後、メリッサが部屋に入ってきた。すでに身支度がととのっているのをみて、唖然としている。


「既に終えているようですね。レイチェルが、きたのですか?」


少しイラつきながら聞いてきた。あーマヂでムカつく態度だな。


「ううん。僕が1人でやったんだよ。レイチェル、もう来てるの⁉︎」


「はい。昨日のうちに向かいに行ったようです。それにしても、一度も1人でされたことがないのに、どうやってなさったのですか?」


疑いの目で見つめてくる。ってか早くね。近くにいたのかな?


「本当に1人でやったんだよ。やってもらっていたのを覚えてたから。どう?大丈夫そう?」


「ええ、問題は無いようです。」


隅々まで見られながらOKでて、一安心だ。さー早くでてけー!!


「良かった。朝食はいつも通り、部屋で食べるから持ってきて。」


「はい。かしこまりました。では、でき次第お持ちいたします。朝食が終える頃にはこの後の予定も決まっていると思いますので、後程お知らせいたします。」


疑いの目のまま、苛立ちを隠しきれない様子で部屋を出て行った。



朝食を終えて、メリッサが片付けに部屋を訪れた。


「この後、すぐに旦那様とレイチェルがいらっしゃいます。」


「う、うん。わかった。ありがとう。」


(いよいよだぞ。ひとまず、僕は冷静にね。頼むよ。」


(う、うん。)


しばらくして、父様とレイチェルが部屋に入ってきた。一瞬レイチェルに抱きつきたい感情になったが、なんとか下を向いて耐えた。僕を抑えんのがきちーな。レイチェルさんは、見た目、二十代前半くらいの金髪で、長い髪を後ろでしばって、ポニーテールにしている。服装は、上質とは言わなくても、それなりの物をきこんでいる。ただ、気力を感じれない。肌も少し青白く見える。


「レイチェル。息子がどうしても話がしたいそうだから聞いてやってくれ。私は立会人なので、一切口を挟まん。」

 

「か、かしこまりました。」


ああー、そうだ。レイチェルさんの見た目を気にしてる場合じゃなかった。どうしよう。ここまできたんだから、早く話さないと。僕の方の感情で、泣いちゃってる。上手く言葉が出てこない。目に涙を浮かべながら頭の中真っ白だけど、必死でレイチェルを見た。


「元気でしたか?」


自分の第一声に父様は身を震わせながら笑っている。声に出さずとも明らかに笑っている。レイチェルは泣いている僕を見て戸惑っている。俺も第一声があれはどうかと思う。思うけど‥‥。僕の感情が優勢中!!俺が表にでれないーーー!!


「はい。クルト様は体調を崩されたとお聞きしました。もう大丈夫なのでしょうか?」


「うん。今日で、大分楽になりました。それよりも少し痩せましたか?」


自分の言葉に驚いた顔をして顔を俯いてしまう。


「見苦し‥」


「見苦しくなんかありません。僕はレイチェルが大丈夫か知りたいだけです。」


「食事があまり、ちゃんととれていませんでした。クルト様には食事をちゃんと取るよう言っていたのに、ダメですね。」


痩せこけた顔でうっすらと笑いかけてくれる。


「レイチェル‥‥。ごめんなさい。ぼ、僕はレイチェルに甘えてばかりで、文句しか言って来なかった。あの時も八つ当たりで、本心じゃないです。」

  

僕が喋るのを任して震える声をなんとか言葉にして補助をする。涙を堪えながら頭を下げたい気持ちを抑えながら謝った。んー俺が考えてたよりも、少年に任せたほうがいいかな。このまま言葉選びだけ手伝おう。


「いえ、クルト様は何も悪くありません。私が駄目なせいでクルト様のおつらい気持ちを察してあげられず、悪いのは私です。」


「僕はそう思ってない。も‥もう一度、ぼ‥僕のメイドに戻ってくれませんか?」


レイチェルは口に手を当てて、しぼるような声で、


「わ、私にはそんな資格‥‥」


あ!体が勝手にー!!


僕は我慢しきれずにレイチェルのもとに駆け込んで、抱きついた。レイチェルも、僕がきたことに困惑しながらも抱きしめ返してくれた。


「僕はレイチェルがいい‼︎」


「で、でも‥私なんかが‥」


「僕が嫌?」


「いえ、そんな、私にはもったいないくらいで‥」

  

「じゃあ、僕の側にいて。僕はレイチェルがいいんだ◯%✖️ー。」


堪えきれず、最後は言葉に出来なかった。レイチェルに顔をすり寄せた。しばらくレイチェルがただ泣いていた。


「よ、よろしいのでしょうか?」

  

レイチェルはなんとか言葉を絞り出した。


ただ強く抱きしめた。そして一度離れ、レイチェルを見つめた。


「これからも、そばで支えて下さい。命令です。」


「!!!…はい。こちらこそ。側にいさせてください。」


俺もレイチェルも震える声でなんとか言葉を交わした。そして涙いっぱいになった目で、この家の家主を見る。


「ハハハハハ。まったく世話がかかるなー。クルト、もうこれ以上のワガママは許さんぞ。レイチェル、先ほども言ったが、お前が良ければ戻ってきて、かまわない。むしろ、我が息子をここまで育てて成長させてくれたことに感謝してるくらいだ。これからも息子を頼んだぞ。」


「父様、ありがとうございます」


少し躊躇したが、父様も両手を広げてくれたので父様にも抱きついた。軽々と、抱きかかえられた。勝手に身体動くんだからどうにもできない。三十前の男が、父親に向かって抱きつくなんて‥‥その前の行動も恥ずかしくて死ねる。


「旦那様、ありがとうございます。一生この身、クルト様に捧げます。何があろうと、側をはなれません。」


深々と頭を下げながら、涙をながしつつも、力強い声で誓いをたててくれた。


「う、うむ。よろしく頼む。まあ、独り立ちする頃は見誤るなよ。メイド好きになられても困るのでな。」


賛成です。父様!今は不健康そうで、わかりづらいけど、多分、レイチェルさんは美人だ。少年が俺の好みに引っ張られないか怖い。


「はい。かしこまりました。これからも末永くお使いさせていただきます。どうか、どうかよろしくお願い申し上げます。」


うん。結果オーライ!!俺、ほとんど、何もしてないけど‥。

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