2章
《プロローグ》可愛い幼馴染さえいればずっと幸せでいられると、俺は思った。
◇◇◇
――人は変わらなくては幸せになることはできない。
とある偉人が、そんなことを言ったという。
俺は今まで、そんなことは絶対にないと思って生きてきた。変わらない関係でも日々幸せを感じていたし、これからその関係が変わらなくても、幸せであり続けられると信じていた。
それは今でも、変わらない。
そもそも、俺がこんなに考えを変えていないにも関わらず、常日頃から溢れんばかりの幸せを享受している時点で、かの偉人の格言とやらは破綻しているのだろう。
『反例、俺と琴葉』と書いてQEDだ。
とはいっても、俺は別に変化していく人たちが幸せにならないと思っているわけじゃない。実際に身の回りの人たちの関係が変わっていくのを目の当たりにして、でも彼ら彼女らならきっと、これからもうまくやっていけるんじゃないかと思ったことも事実だ。むしろ、ちょっと羨ましく感じたまである。
ただ、俺がこの迷言にひとつ言いたいことは、自らの考えがすべて正しいかのようにして他人に押しつけてくるなということだ。
普通に考えてだとか、一般的にはどうだとか、そういう社会の枠組み的なものをすべての人間に当てはめようとしてくるのは、あんまりよろしくない。
最低限のルールだとかモラルだとかは別として、少なくとも昔の俺にとって、そういう価値観の押し売りは気持ち悪くて堪らなかった。
だからそんな偉人様には、ひとつありがたい名言を授けてやりたい。
――可愛い幼馴染さえいれば、ずっと幸せでいられる。
とある男子が、頭の中でずっと思っていた。
俺だった。
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