第11話 幼馴染の弟と妹もまた、幼馴染である。(3)
◇◇◇
「ゆーくん、昨日家に脱いだ服置いていったでしょ! 仕方ないから洗っといたよ」
「おい琴葉、あんまり大声でそういうことを言うなって」
ゴールデンウィークの中日。あ、ドラゴンズじゃないよ、なかびね。
とにかく、連休モードに入ってまったりとしたい学生たちが心にむち打って登校している今日。
俺は可愛い幼馴染のせいで教室中の冷たい視線を一身に集めていた。鮫島なんて、すごい顔でこっちを見ていた。
「おっと、琴葉ちゃん爆弾発言!」
「その話、詳しく訊かせてもらおうか!」
相変わらずの野次馬根性。親友たちがそう言って琴葉を問い詰める。
「別に、昨日私の誕生日だったから、ゆーくんが家に来て泊まっていったってだけだよ。実はゆーくん、今日もそのまま私の家から登校したんだけどねー」
「新婚さんかよ……」
えへへ、と笑う琴葉に、あきれ顔で呟く瑛太。
「あっ、そういえば琴葉。この間、面白いもの見たよな」
「面白いもの? なんだっけ」
「ほら、駅前のショッピングモールで……」
思い出した様子の琴葉を見て、咲はなにかに感ずいたらしい。一瞬びくっとして、しかしすぐさま何もなかったかのように取り繕った。
「面白いものって何を見たんだ?」
一方の瑛太は全く気付かないらしく、そんなとぼけたことを言っている。咲はごみを見るような目で瑛太を一瞥した後、ごまかすようにして口を開いた。
「いやっ、あれはその、私たちも琴葉のプレゼントを買いに行ってたのよ。はい、これ私たち二人からね。一日遅れだけど誕生日おめでとう」
「おい、何の話だよ。もっとびっくりさせるようにサプライズで渡そうって言ってただろ。あんまりいいものじゃなくて悪いけど、琴葉ちゃん、誕生日おめでとう」
「二人とも、ありがとう!」
咲はうまく話を逸らせたことがそんなに嬉しかったのか、喜んでいる琴葉の頭を撫でて心底幸せそうにしている。
「本当はもうちょっとお高いネックレスとかにしようと思ったんだけどさ」
「いや、そういうジュエリー系って、友達からだとちょっと重いかなって思って」
「こいつがこういうからさー」
俺がプレゼントしたの、がっつりダイヤのネックレスなんですけどね……。
まあ俺は琴葉と超仲良しだし、ただの友達じゃないからいいんだよ。うん。重くなんてないよね!
「あれ? 琴葉ちゃん、そんなネックレスしてたっけ? そんなおしゃれなの持ってたなら、買わなくて正解だったな」
琴葉の首元できらりと光ったそれを見て、瑛太はそんなことを言う。
「あぁ、これは昨日、ゆーくんが――」
「そういえばそのプレゼント買いに行ったって時、お前たち二人でパフェ食ってたよな。いやぁ、偶然見かけちゃってさ。あれは結局、瑛太が奢ったのか?」
「お、お前、見てたのか?」
「あんたが余計な話するから……この馬鹿!」
ふぅ。危うく俺が『重い男』と思われるところだった。
二人が同じ中身の入った弁当箱のふたを開けるのを見ながら、俺はそっと胸をなでおろした。
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