UNTIL THE DAWN

閉め切った窓を片手で開け

喧騒の消えた

絵画の街を見下ろした

灯台の灯りは何を導くのか

終わりのない航海の先に

待つのはただの日常か

行き場のない後悔のあとに

残るのは無為な絶望か


鳴り止まぬ速報

傷ついたものの数を

数えるものはいるのか

水平線の果てに

あといくつの国があり

あとどれくらいの人が

この闇を呑んでいるのか


錆つきだした時計の針は

今日もただまわりにまわり

また同じ位置ところに戻り来る

夢よ夢よと願う僕らは

いまは窓にもたれている

夏のうだる暑さでさえ

暗がりから目を背けてみせた

扉を開けたところで

少しばかり

淀んだ空気が逃げるだけで

無慈悲な暗闇があるだけだから

あとちょっとだけ

閉じこもっていようよ


明けない夜はないと誰かが歌う

救世主に見立てた字面に

確証の色はみえず

僕ら譜面を叩きつけた

夜と書いて夜明けと読むと

平たい仮定は平たいままだ

曲がった運命さだめは曲がったままで

僕らを腐らせるのさ

唯一の救いを歌おう

「そこに確証の色はない」


祈ることさえままならなくとも

この世界には勇者がいる

列に並べよ

手をとりあわなくとも

ひとりじゃないと

列に並べよ

日常を取り戻せば

きっと傍らには

ともに讃えあえる者がいる

耐え忍んだぶんだけ

触れ合える日のぬくもりは

きっと強くなれるだろう


後戻りできなくなるくらい


人生百年時代だと

謳った日々がただ懐かしい

我々はもう一度だけ革命家になろう

人間のうぬぼれを悟った僕らは

きっと前よりも 強いのだろう

後戻りできなくなるくらい

だから今は

液晶越しに盃をつきあわす



――この詩を、今を生きる皆様に贈ります。

      いつか来る夜明けを願って――


作成人格: 相葉優樹

編集:星野響

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る