誰もいない海

陽の色も形も忘れた僕は

なにも眺めず ただただよう

上下もわからないくらいに

青を通り越した黒

自分の呼吸音さえも

忘れてしまうよ

どこへ行くんだろうね

答えるものは 何もない

ただ漆黒が 僕を笑う


怪物だらけのこの海で

あと何日生きられる?

教えてよ その口で

牙の並んだその口で

ご自由な数字をどうぞ

それが呼吸の限界値

水圧がのしかかる

闇が僕を飲んで消すまで

あと何日漂える?

答えは視界ゼロの向こう

好き好んではめた枷の向こう


月にすら両手で覆った僕は

ずっと深くへ沈むんだ

そうして寂しい暗がりで

諦めた夜明けを待つんだな

自分の呼吸音さえも

消してなくして

どこへ行くんだろうね

答えるものは どこにもない

ただ熱病が僕を食む


闇に向かって 砕いても

壊れることはない

そこに答えはないんだと

わかってる わかってるけど

もがいて 傷つき

なんにもない

嘔気で自分の肺を詰まらせ

吐いてそのまま黙って

消え去るようだ

正しいこと知らないまま

膝抱えた


冷たいブラックスモーカー

あといつまで続くかな

きっと答えはわかってる

背を向けたくなるその結論

誰も覆してくれないか

それが世界の限界値

気づいた僕は水の底

ロストシティを眺めながら

消える失せるまで謳っていよう

見えない目なんていらないよ

聞こえない耳もいらないよ


怪物だらけのこの海で

あと何日生きられる?

教えてよ その口で

牙の並んだその口で

ご自由な数字をどうぞ

それが呼吸の限界値

水圧がのしかかる

闇が僕を飲んで消すまで

あと何日漂える?

答えは視界ゼロの向こう

好き好んではめた枷の向こう


黒い水に押しつぶされて

誰にも見えない

涙を流していようか



―――――――解説だよん―――――――

 大陽の形を忘れるくらいに明るい外界と『僕』の間には距離があった。なぜこの苦しみだらけの世界に生まれ落ちて、どうして生き続けなければならないのかわからず、『呼吸音さえも忘れてしまう』くらいだ。心は『青(ブルー)を通り越した黒(感性すら失われた領域)』にある。

 ここで言う『怪物』は、実在の深海生物でも、人間の具現でもない。『僕』が作り出した幻想であり、勝手に自分自身を苦しめる雑念のようなもの。考えずに周りに合わせて怪物になればいいのに、苦しまずに済むのに、自分自身を捨てきれず、暗い暗い海の底に沈んでいくのだ。

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