紅い月

白夜

第0夜

見上げると、満天の星空に大きな月が浮かんでいた。

いつも通りの夜空の筈が、少年にはとても美しく見えた。

しかし、どこか寂しくもあった。

人里を離れ、疎外された様な薄暗く、虫も獣も寝静まった孤独な夜の森の中で、少年は独り、佇んでいた。

冷たい風が吹きつけ、少年は身震いした。

風が止むと静寂が訪れ、再び少年を孤独にした。

「そろそろ帰らなきゃ。」

少年はそう言うと、裸足で暗闇の中へ走り去っていった。

次の日の朝、都心から遠く離れ、森が隣接する小さな村の新聞の一面に、森の中で男性の遺体が見つかったことが載っていた。

その新聞を、何を感じるでもなく、少年は時間を忘れたかの様にじっと見つめていた。

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紅い月 白夜 @byakuya11

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