第10話【任務の達成】


「ご無事の様で何よりです」


 竜の鱗亭から一番近い冒険者組合の受け付けのお姉さんにゴブリンの大量発生とゴーレムの件を報告した。


「それにしても、いきなり討伐クエストを受けるなんで、1歩間違えれば死んで居ましたよ」


 受け付けのお姉さんが心配してくれていた。「まぁ!凄いです、まさか……」とかよくある異世界転生系チートでは無く、ただただ心配してくれていた。


「まぁ、ちょっとね」


 それを、ちょっとね、で誤魔化す。詳しく説明しても余計に心配される。それにこの表情からは、言ったら叱ると読み取れる。

 傷とかは、メナが治したので報酬を受け取るだけだった。


「それでは報酬の方ですね」


 そう言うと半分白半分黒の色合いで、シンプルのデザインのベルを出した。


「素材のほうは回収しますので、隠し持っていませんね」


「ええ」


 そして受け付けのお姉さんが魔道具の方を見てしばらく待つ。


「大丈夫のようですね」


 多分嘘が分かる魔道具だろう。


「1体、現在の相場で、20ネリーになり、52体でして諸々の費用を差し引きし、値段調整をしますと800ネリーになります」


 そしてお金を受け取り、竜の鱗亭に戻り、相談し合った。


「お金結構、手に入りましたね」


「そうね」


「どうする?」


 料理を食べ終わり、私たちは見つめあっていた。

 料理を食べている途中で、「あっ、ほっぺにソースが」と、ハンカチを使いそれを拭き取りとった、相手は海。それを見たメナは羨ましそうな目で私を見た。


「せっかくだし、ぱっとやるのはどうでござるか?」


「少しは取っておいた方がいいんじゃない?」


「大丈夫じゃないんですか、また、クエストをやれば良いんですよ」


「大丈夫なの?」


「少しならいいんじゃない」


「楽になろうぞ」


「うんー、す、少しだけなら」


「うふふ」


「どこに行きます」


「スポーツはどうでござる?」


 悪くないが体が変化している事で、たまにバランスが取りにくいし服がチャイナドレスだから少し動きにくい、まぁ、変えればいいんだけど買ったし。


「あたしは麻雀」


 <おいおい、本当に学生?>

 子どもにしては、大人すぎるという年寄り感の遊びだ。


「ボーリングなんてどうでしょう?」


 良い案を言われて、私はそれに賛成した。


「悪くないね」


「そうね、それならみんなで楽しめるし」


「拙者も同意見」


 どうやら2人とも私と同じの様だ。


「なら、これにしますね。時間は明日にでもします?」


「多分明日は疲れると思うから、明後日なんてどうでござるか?」


「まぁ、そうね」


「じゃぁ、そうしましょう」


「明日も早いし、寝ましょ」


 そう言って私たちはそれぞれの部屋に入った

 部屋は男性2人と女性2人に分けていた。

 目覚めの良い朝でいつもの如く、メナが隣で寝ている。


「むにぁー」


「全く、でも可愛い」


 こういうとメナを少し強く抱く、がほぼどう身長なので変な感じがする。

 そして、気づくと2度寝をしていて、メナがいなくなった。

 下にでも行っているのだろうか。


「取り敢えず着替えるか」


 パジャマを脱ぎ、着替えの服ーーこの間買った服ーーに手を掛けていく、何かと視線をその時感じた、が気のせいだと思った。

 そしてその前買っていた服に私は着替える。

 演劇部をやっていて、小柄なせいで女性の役をよく回されているから、スカートなどは着替えるのも慣れた、がチャイナドレスは意外すぎる。

 そして着替え終わり、ドアノブに手を掛け扉を開ける。


「お姉様ぁ!」


 開けたと共に、メナが飛び着いてきた。

 さっき視線を感じたが、まさかメナだったとは。

 飛びつく力が思ったより強く、後ろに倒れていく、あれ?これって恒例のアレじゃない?て言うか逆じゃない?


「うわっ!」


 ゴンっと、重々し音が鳴る、反射に閉じた目を開けようとする、例の如く胸に違和感を感じる。


「す、すみません」


 謝罪をし頭を上げる、右手は添えるだけみたいに、私の胸をメナの手が包む。


「あ、あれ?」


 どうやら状況を理解していない様だ。何だこれと言わんばかりに数度さらに揉まれた。

 恥ずかしくなり、頬が赤らむ。


「あっ、す、すみませんー!」


 そして体制を立て直し、起き上がる


「もおー、まったく」


 確認を怠ったメナを軽く叱る。


「でも、お姉様小さいけど、柔らかかったです」


「でも、言わない、あと感想は求めていない」


「すみません」


 メナが少ししょんぼりする。

 肩をすくめ、残念そうにする、昔飼って居たハムスターの様だ。


「仕方ないなぁ」


 可愛いから、こうまでに簡単に怒りが鎮むとは、本当に可愛いは正義だなぁ。


「あっ、そうだ、お姉様お詫びに魔道具」


「ん?」


 メナがまだ話している間に私は感じたことに声が出てしまう。


「どうしましたお姉様?」


「なんか視線が」


「気のせいでは無いでしょうか?」


「まぁ、そうね街中だし」


 こうして魔道具屋に向かった、が、これが重大な事件になるとはこの時まだ気づかなかった。

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