第9話【岩の巨人】


「ぬ?!とんでもない力でござるな」


 海が刀でゴーレムの拳を止めた、が力が足らず、ゴーレムの拳を流すしか出来なかった。


「メナ、核は何処にあるの?そう長くは耐えられない」


「ゴーレムの核は大体隠れていて、ゴーレムが護ろうとしている所の近くにあるはずです」


「要するに、とにかく叩けって事ね」


「そうなります」


 私がゴーレムの方に飛び出す。

 ゴーレムがそれに反応して拳を出してくる。

 私はそれに応じ、避けようとした、が避けきれずガードしか出来なかった。


「ぐは!」


 押し飛ばされ、背にしていた森の木にぶつけられる。正直、あばら骨が少し折れた気がする。

 ここまで喰らうとは、油断していたのもあるがしかしなんか自分が脆い気がする。


「お姉様!」


「無事でごさるか?」


 2人とも心配してくれている。


「一応、ね」


 この痛み日本で味わうことなんでそうないな。


「回復します、【ヒール】」


 そうメナが言ったあと、薄緑の光が体を包んだ。


「おお、痛みが引いていく」


 折れている感じがするあばら骨は治っていないと思う、しかし痛みはひいた。シンプルなものだが異世界らしさと共に、実用性が高い。


「怪我してもおまかせ」


「これなら、行ける」


 <行くよ、狼牙>

 <ああ、死なないでくれよマスター>

 <分かってる>

 戦いを覚悟して、ゴーレムの方に向かった

 そして、ゴーレムとの戦いが始まって何分立ったか知らなかった。

 ゴーレムが一向に倒れる気がしない、が少しずつゴーレムの体が欠けている。

 そんな時。


「分かりました、ゴーレムの核の居場所が」


「どこでござるか?」


「多分背中です、このゴーレム、無駄に背中を向けようとしません」


 確信はない、けどここでは一番戦闘経験があるメナの指示がベストだと思い、ゴーレムの背中に回ろうとする。


「わかった。海、前は頼んだ」


 ゴーレムは叩いた方が剥がれる。そのため、多くのダメージを与えるために私が核を狙うことにした


「了解」


 そう言って海が足元にあった石をゴーレムに投げつけ引き寄せてくれた。

 その隙に後ろの森の木陰に隠れ少しずつゴーレムの背中に近づいていく。

 そして隙を見計らいゴーレムの後ろを殴る

 ゴンっと鳴り背中にヒビが入った。

 それに反応して拳をこちらに振り回す。

 <戦闘態勢に入っているんだ。そう当たらないよ。それに僕のサポートだってあるよ>

 <そう言えばそうだったな>

 <忘れないでよ、マスター>

 <忘れてもいいじゃん>

 <良くない。て言うか来てるよ、ゴーレムの手>

 <おっといけない>

 狼牙が私に教えてくれて、遅く見えたゴーレムの拳を避ける。

 そしてメナにあったことを伝える。


「何か中に、赤いものがあったんだけとまさかそれ?」


「ええ、多分それです」


「少しの隙間だから海、刺してくれ」


 隙間を叩くのは物理的に厳しい、だから細かな隙間に刃を入れ、一点突きして破壊しやすくできる海に任せる。


「承知した」


 こうして海との立ち位置を変えた。

 海と少しゴーレムに抵抗して、隙を見計らい海が隠れた。


「頼みます」


 海が頷いた。

 その時、ゴーレムが私では無く、後ろにいる海を警戒するように振り向こうとした。

 さっきので学習したようだ。

「おい!」とゴーレムを引き止めた。

 ゴーレムは言葉を聞き取れるようで、運良く引っかかってくれた。

 ゴーレムの拳が飛んでくる。


「前のようにはいかないよ」


 本気の拳をゴーレムの拳に当てにいく。

 ガコンっと、拳がぶつかり合い、音が鳴る。

 ゴーレムとの拳のぶつかり合いで、僅かに私が強く勝った。

 ゴーレムが体のバランスを崩し後ろに倒れ込む。


「海、頼んだよ」


「応」


 海が核と思われている、赤い所に刀を突き立た。

 少し踏ん張っていて覚悟を決めているようだ。


「ぬっ!」


 考えてみればそうだ。あのゴーレムの体重を耐える事になるんだ。海も頭の回転が速かった。


「大丈夫か?」


 そう言ったあと、パリンっとガラスが割れる音がなった。

 そしてゴーレムの岩のような体が砂のようになり、風に吹かれ、消えた。

 その場には、ゴーレムの割れた核が残っていた。


「ふう、何とかなったでござるよ」


「そうですね、スネ夫さんが少し心配です」


「確かに一人だからね」


「取り敢えず、スネ夫殿の所に参ろう」


「そうね」


 空を見上げ、スネ夫の心配をする

 周りから観れば、想い人を心配する恋する乙女に見えてもおかしくない表情をしていた


 ✤✿✤✿✤


 ゴーレムに魔法が聞かないと聞き、せめて戦力になる選択肢をした。


「コロシテヤルヨ」


「あら、物騒ね」


 ゴーレムを止めるために、早めに片付けた方が良いかもしれない。


「【ファイヤーボール】」


「【ウォーターボール】」


「クッ」


 周りに燃え広がる可燃物がないため、学んだ魔法の中で最も殺傷力が高い魔法を当てようとする。

 火には水、定番だけど、効くわねぇ。

 <油断はできないわ>

 睨み合いの状態が少し続き、スネ夫の汗が地に垂れそうになった。

 ポタッっと汗が地面に落ちた瞬間。

 <サンダーボールで素早く決めた方が良さそうね>

 そう心の声を出した時、杖からサンダーボールがゴブリンに向かい飛び出した。


「グフ」


「何今の?いや確か無詠唱ってギフトがあったわ、まさかそれが偶然発動したの」


 サンダーボールを放ったが、すぐさまよけられる、放った本人ですら驚くことはあったが、すぐさま気を引き締める。


「ムエイショウ?ソレヨリハヤクコイツヲ」


「いけない、よそ見が過ぎたようね」


 <疲れを確実に感じて来たわねぇ>

 ゴブリンの方は何故か余裕があった。

 アレをやるしかない、10回試して3回しか成功しなかったあの魔法をやるしかない。

 失敗すると、魔力を多く持って行かれるし、威力はウォーターボールよりも低くなるがやるしかない。

 <一か八かいって見るしかないわねぇ>

 魔力を多く練り、イメージを固める。

 だか、その変化をゴブリンが見逃してくれない。


「【ファイヤーボール】」


 足に力を入れそれを避けていく。

 少しかすり、左手がやげとになる、が詠唱に問題はない。


「【フラッシュ】」


 唱え終わる前にスネ夫は目を閉じ、唱え終わると閃光弾のように周りが光った。


「メガ、メガ、オデノメガ」


 効いたようだ、それにこのセリフ、何処かで聞いたようだ。

 そして目を開き、ゴブリンが失明している間に、杖で叩いた。

 魔法で殺ると、方向が分からなくても、避けられる可能性が有った、だから無音で頭を叩いた

 ぐしゃんっと、そんな音がなりゴブリンが痙攣をさせながら倒れていった。

 良かった、勝った様ね。ふうちゃんたち無事だといいけど、そうスネ夫は思い息を整える。


 ✤✿✤✿✤


 洞窟の中に再び入りスネ夫を探す。

 そんな時、奥から激しい光が見えた。

 <その光がスネ夫の魔法だといいけど>

 <大丈夫だ、あれはスネ夫の魔法>

 <何故、そう言えるの?>

 <ゴブリンの魔法適正に光はない、あの子はある>

 <分かるんだ>

 <まあね、でも見て見なきゃ状況は分からないけどね>

 その奥に私たちは向かう。


「スネ夫!」


「タイミング、バッチリね」


 そう言ってスネ夫がふらつき倒れそうになる。


「大丈夫でごさるか?」


 海が素早くスネ夫の元に行き肩を貸す。


「一応ね」


 こうして見るとBLに見える、スネ夫も高校生にして大人顔負けのイケメンフェイスをしている、海は海で悪くはなかった。


「どうやら、あっちは済ましたようね」


「まあね、スネ夫も無事ではないようだけど、倒せたようね」


「あっ、やけどしていますね、回復かけますね」


「助かるわ」


「【ヒール】」


「どうやら、これで一件落着って所ね」


「そうですね」


 クタクタになり地面に座り休憩を取っていた。

 この様じゃ、冒険者も簡単じゃないなぁとつくづく思った。

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