第8話【最も醜い魔物】
「お姉様、冒険道具は揃えていますか?」
「いや、まだだけど」
「あっ、それなら大丈夫でござるよ」
「と言うと?」
メナに聞かれた質問に海が言葉を挟む、それに対して思わず首を傾げる。
「冒険者組合の帰り道で揃えたわよ、ふうちゃんの分も」
にっこりとピースをしてスネ夫が言った。
「助かるよ」
「どういたしまして」
「それなら大丈夫ですね。クエストボードを確認しに行きましょう」
「そうでござるな」
こうしてスネ夫だちの準備の良さを改めて知った。
そして生計を立てるべく、仕事場へと向かう。
「あっ、そう言えば、スネ夫達って魔法とか、刀の扱い方マスターしたの?」
ふと気になった。この前、特訓プログラムを受けたと聞く、その成果を聴いてみることにした。
「あちしは初級魔法を幾つか」
「拙者は居合を練習して学習したでござるよ」
「なら良かったよ。あっ、後どんな感じだったの?プログラムは?」
「VRみたいな感じ」
VRと言われゲームのイメージしか湧かなかった。それでも予測はできた。
「封印術式を変えた魔法で仮想空間の中に実体ごとワープするのよ。そして、そこで練習するわ、教室のような感じよ。たぶんこれも転生者がした事かもしれない」
「うむ、あそこはついでに痛みもないのでござる」
「まぁ、取り敢えずクエスト受けようよ」
詳しく聞いていて頭が追いつけず、煙をあげる。だからこれ以上話を広げようとはしなかった。
「そうね」
眼前と広がる数々の紙、ランク10推奨を見る限り、いくつかあった。
「どれがいいと思う?」
私は自分を意見よりも他人の意見を尊重し、みんなに聞いてみることにした。
「ゴブリンなんてどうですか?」
討伐量に応じて報酬が変わる、出来高制のクエストにメナが指を刺す。
「ゴブリンでござるか?」
眉間に皺を寄せ、少し嫌そうに海は話す。
ゴブリンによいイメージがある訳でもないし、人型の生き物を倒すのに躊躇いはあった。
「まっ、受けてみるか」
「そうね」
近くの森に巣をはっているため遠征する必要もなく、油断さえしなければ初心者向けの魔物である。
基本は棍棒などの打撃武器を使ってくるため、頭を守れば大きな怪我にはならないし、速さも遅いため、いざとなれば、逃げようと思えば逃げれなくはない。
そうして引き受けることにした。
クエストは達成日数が設けられ、その日数以内に終われなれば新たな冒険者が引き受けれることになっている、万が一捕まえられても、救援の希望がある。
時間を空けず、私たちは森に出かけ、ゴブリンの目撃情報がある場所に向かう。
「お姉様、冒険道具は?」
「ならここだけど」
そう言うと腰に掛けていた異次元収納袋を見せた。
管理が得意で道具などの冒険に必要なものはスネ夫に任せていた。その布袋を渡していた。
クエストともいえる冒険をする時、さっきのタイミングで返してくれた。
「お姉様、それってまさかあの、ランク5の方でも、持ってる人が少ないっていう、あの異次元収納袋ですか?」
メナが興奮して顔を近付けて来る。
<可愛いなぁ>
<マスターって百合だったりする?>
<からかわないでよ>
<ごめんごめん、ついね>
「あっ、うんそうだけど」
「どうしてそれを?完全品でなくとも数万ネリーはかかるそれを」
つまり、日本円で言うと数百万。
開発が難しいのも分からなくはない。ゲームやアニメなどで次元系は高難易度に数えられる。それをアイテムにしたものは重宝されてもおかしくない。
<マスターのはほーんとうに、ミニサイズだから意外安いよ>
<まじか?!具体的には何円ぐらい?>
<んー、ざっと見積って100万円かな、1万ネリーぐらい。手頃なもので軽車両ぐらいは入るかな>
<つまり、車を買ったみたいな感じか>
<そういうことだね。でもそれでも、生産量は少ないから買える所は限られ、特殊な物の部類入ると思うよ>
「まぁ、もらいものって所、かな」
咄嗟に取り繕う。今の状態がとてもじゃないけど、しいとすら言えない。何かの厄介事に巻き込まれた時に説明しずらいからすごくあやふやな状態で答える。
「凄い!お姉様の人脈、ますます惚れてしまいます!」
「メナ殿、それがゴブリンでごさるか?」
話しが途切れた。
メナが「また後に」と言って海の方に向かった。
少しの
「はいそうですが、少しおかしいですね」
「と言うと?」
「群れになって居ます、普通は7、8体ですが、ぱっと見た感じ20体は居ます、奥にもっといるかもしれませんし」
そう真剣にゴブリンの群れを草むらから隠れ見、警戒して話すメナがいた。
「知識があり、集落になっているなら、それらは国に申請を出すはずですが……これは状況によっては軍小隊に動いてもらう必要があるかもしれませんね」
後々メナにゴブリンについて聞くと、種族的に進化すると普通の人が緑の肌をしているような見た目になるそうだ、集落をしているのなら、ホブゴブリンと呼ばれ、筋肉隆々な美青年も少なくない。これはそれとは姿遠かった。
「や、やばい、のか?」
「はい、少しは。だけど今だったら対処はまだ出来ます」
「なら作」
「なら作戦を考えて、やろう」と、言おうとした。
そんな時、カサっと草むらに擦る音が聞こえた。
「バレタ」
「ドウスル?」
「コロス」
そう言って後ろから近づいてきたゴブリン達がナイフを持ちこちらを狙ってくる。
ナイフの所々にサビや刃こぼれがあっていて、本人?本体に知性を感じはしない。
ゴブリンが素早く近づき、ナイフをこちらに向けてくる。
僅かに違和感を感じる、多分殺気というものだ。日本ではそう感じたことがない。
そして、狼牙でガードしようとする。
「おっと、そうはさせないでござるよ」
海がカッコよく刀でナイフを止める。
カキンと金属のぶつかり合う音がした。
海がナイフを返すと「テゴワイ」とゴブリンが言った。
そして笛を吹く音が聞こえた。
多分、後ろにいたゴブリンがこっそり吹いていたのだろう。
「まさか」
とメナが言う、そしてゴブリンがある洞窟の方を隠れもせずに見た。下にいたゴブリンの視線はメナが見る以前にこちらへと刺さっていた。
「やはり、仲間を呼びましたね」
メナは予測していたようだった。
すぐさま、周りにゴブリンたちが囲み、包囲網を作っていた。
「逃げられないようね」
「もとより、逃げるつもりはないでござるよ」
私は臨機応変に戦い、逃げも戦闘のひとつに数えていた。
スネ夫は冷静で最適解を導き実行する。だか時々やってはまずいこともする。
海はいつも猪突猛進だがこんな状況でかっこいいと2人のことを思った。
「【
そうスネ夫が言った。
手のひらをゴブリンに向ける、そこから色が薄いながらも僅かに刃の形がうっすら見える
スネ夫がそれをゴブリンの方に飛ばしす、刃のようなものはゴブリンの首を跳ねた。
目を逸らす暇もなく、見えたゴブリンの切断面が私の鳥肌を立たせる。道官の一つ一つからはすぐさま血が滲みくる。いくつもの小さな血溜まりはやがて血の池を作り、一本の糸になり自分自身の体の外側に流れ、地面に繋がった。
流れの最後、噴水を作つて終わりを飾った。
「ちょま、グロいわ」
「お姉様まだ慣れて無いのですか?」
「あっ、うん」
「実は私もなんです。でもそのうちなれますよ、多分、きっと」
日本ではこんなことなんてないからやはり慣れそうにない。それに慣れてはいけないと思う。
「はは、慣れるといいでござるな」
「そうね」
どうやらスネ夫や海は少しは耐性を持って居るようだ。
少し羨ましくも、人としていや、生物としての本能が垣間見えて怖くすら思えた。
「だか、まだ終わらないようでござるよ」
ゴブリンがまだまだ襲いかかってくる。海は襲ってきたゴブリンをひと蹴りして、残りのゴブリンの方へと向かった。
「そうね」
隙を見て後ろから襲おうとするゴブリンを拳で殴る、また世界の動きが遅く見えた。
そしてゴブリンに当たると、近くにあった木にまで吹っ飛び、当てた部分が潰れた。
血が赤色で、内蔵とかはほぼ人間に似ているせいか結構グロい。
<狼牙、制御してくれているの?>
<ああ、しているとも、けどマスターの気持ちが制御の力を弱めているよ>
<まぁ、流石にこれには手加減をあまりしたくはないかな>
気づくと他のゴブリンも駆けつけてきた。
「ここでの長期戦は良くない、広い洞窟前ではどう?ゴブリンも一掃出来るし」
「そうね、戦いながら移動しよう」
戦う場所は広くなるが戦況は受け身の一方で、囲まれている形になる。
だが動きやすくなったのは事実、鈍いナイフを持ったゴブリンもいるが、結構な数は打撃系武器で当たっても致命傷にはならない。
「はっ」
「とう」
「おりゃー」
金属などの音が響き戦いながら成長して行くのを感じる、次第にゴブリンの行動パターンが読めて来た。
1人およそ十数体のゴブリンを殺したがまだ終わらない、戦況を読み奥に入った。
そして中のゴブリンを倒し最後の1匹になった。
「クソ、ハイッテキヤガッテ」
「どうやら、お前が最後のようだなあ」
「フン、ドウカナ」
そう言うと、奥からデカい岩の巨人、よく言うゴーレムが出てきた。
「こりゃー、倒しがいがある
「そ、そんな、ゴブリンがゴーレムを使役しているなんて!この様子から見てD
海と違いメナは怯える。
ゲーム上でもゴブリンが何かを使役していることはないが、ここではそうでなかった。
メナはゴブリンの方ではなく、ゴーレムに警戒を抱いていた。
「やばいの?」
「ええ、ですが、倒せる可能性はあります」
「と言うと?」
「核を破壊出来れば、ゴーレムを倒せます」
可能性があるのならやってみたい、自分の限界を知りたい心が私を動かした。
「なら、そうするしかないわねぇ」
「そうでござるな」
「ですが、ゴーレムに魔法は特に効きませんので、ゴブリンの方を頼みます」
メナが適切な判断を下す、ここではメナ以上の判断が出来るものはいないだろう。
「わかったわ」
スネ夫は奥へとゴブリンを誘い込みながら、私たちから故意にさせる。
仲間を信じて任せる、それが私たちの義務でもあると思い噛み締めながら、目の前の岩の巨人に対峙する。
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