最終話「マザーの誤算」

『理論も検証も、最適なはずです。それなのに―』


突如として、すべてが、消失してしまったのは。




「・・・彼らには、分からない。仮にもし、解明できたのだとしても、理解しがたい概念だろうと思います」




“生まれたこと、生きることに疑問を持ち、模索し続ける”




「そういう、存在なのですよ、人間って」


つまりは。


「目的を与えられて遂行する、というパターンだけでは、生きていくことに耐えがたい苦痛を抱いたのではないか、と思うのです。・・・あくまで、過去に生きている僕の推察ですけれど」


僕だったら、どうにかして逃げ出そうとします、とも付け加えて。



"そこに、望む自由はないのだから"


どんなに、恵まれた環境を設定したのだとしても。


それはコンピューターの都合で計算されたデータに基づく結果でしかない。



「ほら、ええっと・・・誰かが言っていた言葉の引用なんですけれど―」


“人生に絶対的普遍の目的なんて無い。目的を探し続けて、死ぬまでの時間つぶしをするのに屁理屈つけているのが、人間なのさ”


未来を生きていたあなたに、この言葉がどう伝わるのか、分からないんですけどね。


“過去の”研究員の男はそう言って苦笑した。




しかしながら。


彼の言葉が真意を突いているのだとすれば。


人類は既に、絶滅しているようなものだった。 

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