第十二文「枯渇」
「枯れてしまったのだ」
彼は、遠くへ視線を投げたまま、そう言った。
「いや、枯らしてしまったのだと思う。我々が・・・」
生物の存在意義は、それらの持つ「遺伝子」の名の通り、「伝え遺すこと」だという。
次の世代へ伝え遺すこと。
それには、エネルギーが必要だ。
単純な構造の生物や、お粗末な文明(とはおおよそ呼べないレベルの単為生殖の繰り返しを含めて)の場合は、必要とされるエネルギーもさしたるものではない。
従って、当然のことながら。
構造の複雑化した生物や、それらが積み上げ作り上げてきた文明を遺し伝えることには、それ相応にエネルギーが必要なのだ。
「我々の世代では、惑星ひとつを消失するまでに至りました」
そして。
「この先もし我々自身、及び我々の文化文明が進化し続けるとしたら・・・」
どれくらいの犠牲が必要なのだろうか。
彼は言葉を呑んだ。
言わなくても察するに余りあると判断したのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます