映画「ハングオーバー!!」
俺は生まれつき人より体が小さかった。手の大きさも足の長さも、脳みその大きさでさえ勝てないかもしれない。物心ついたときには親はもういなかった。それまでどう生き延びてこれたのか、もう覚えちゃいない。なにせ泥水をすすりながら生きてきたようなもんだ。腐りかけのバナナを食って腹を痛めて苦しんでいたとき、目の前に現れたのが奴らだった。一目で悪い奴だと分かった。「俺たちの運び屋になれ、そうすれば飯は食わせてやる」目の前に腐っていない飯と透き通った水が置かれた。俺にもプライドはある。受け取った分の仕事はする。他に選択肢は無かったし、悪いことをしても死ぬよりはマシだと思った。その日から、街灯と看板の光を頼りに、濡れたアスファルトが目を光らせる鬱々とした広場が俺の仕事場になった。大抵の客は車で現れる。口笛を吹くのが俺たちのルールだ。クラクションを鳴らしたり、バンバンと叩いたりするやつも現れるが、そういうやつは相手にしない。吸っていたタバコを丁寧に地面に擦り付け、車へと近寄っていき金と引き換えにブツを渡す。その足で仲間の元へと金を渡して終わりの簡単な仕事だ。他に運び屋をやっていた連中はすぐに姿を消すことが多かった。サツに捕まったり、金を持ち逃げしたりな。俺は金には興味がねえ。俺みたいなもんには使うところが限られてるし、死なないだけの食べ物とタバコがあれば充分だ。欲は身を滅ぼす。この世界に生きていれば身をもって知ることだ。昨日の夜みたいな、飲んで食って騒いで頭のネジがぶっ飛ぶようなそんじょそこらのハングオーバーじゃない、ハングオーバーにビックリマークが2つ付くような経験を毎日してみてえと思うようなことはあっちゃならねえ。楽しかったけどな。口笛が聞こえる、新しい客が来たようだ。はは、あいつら、また来やがったぜ。
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