第7話 『嫁の無敵化が進むが、あくまでナンバー2』

 

 先日、ユメハにミスリル製で翻訳魔法を付与したリボンをプレゼントしたのだが、その時にちょっと気になることがあった。


 以前、俺がユメハの刀に刻印魔法を付与したり、新婚旅行中に水中活動用の腕輪を作った際に思ったことなのだが、既存の材料を使った場合には刻印魔法で付与出来る効果は3つまでが限界だった。


 これは俺が魔力を物資化させた装備でも変わらなかったので、そこが刻印魔法の限界だと思っていたのだが……。


「ミスリルを使った装備だと、まだ余裕があるような感触だった」


 ユメハにプレゼントしたリボンには翻訳魔法と周囲から魔素を取り込んで半永久的に効果を持続させる魔法の2つしか付与されていないが、なんとなく後2つか3つは付与出来そうな感触だったのだ。


 魔力の浸透性が高い物質だからなのか、より多くの魔法刻印を付与出来るみたいだった。


「とは言っても、可能であることが容易であるとは限らないんだけど」


 3つでさえ色々と面倒だったというのに、4つ以上となると更に難易度が跳ね上がるだろう。


「でもミスリルは余ってるし、色々試してみるか」


 今日もユメハな近衛騎士団の訓練に出掛けているので日中は暇なのだ。


 ちなみに誰にでも思いつくことで、俺もユメハに同行して近衛騎士団の訓練を見学したことが以前にあったのだが――近衛騎士団の団員達に泣いて勘弁して欲しいと哀願されて以来は行っていない。


 うん。俺が応援するとユメハさんが張り切り過ぎて訓練に熱が入ってしまい、他の団員が例外なくボコボコにされてしまったのだ。


 だから俺はユメハが訓練に出掛けている時はお留守番なのだ。






「刀、念話装置、腕輪、リボン……次はどんな装備にしようかなぁ」


 俺がミスリルの前で考えるのは次にユメハにプレゼントする装備だ。


 俺が魔法使いであまり装備を必要としないというのもあるが、どうせなら美少女の奥さんを着飾らせたいと思うのが心情だろう。


 まぁ、その観点で言うなら俺の変身後の姿であるアリサの装備を新調しても良いのだけど……。


「やっぱりユメハの装備だよなぁ」


 アリサが美少女であることは疑いようがないが、それでも自分で装備する物よりも、客観的に見ることが出来るユメハの方を優先したい。


「ふむ。今のユメハは地上と水中では問題なく活動出来るけど、考えてみると対空装備がないな」


 いや。ユメハの武器コレクションには飛び道具もあるし、それは全て腕輪の中に収納されているのだが……。


「空のデートというのも捨てがたい」


 結局のところ、そういうことだ。


 うん。ユメハをお姫様抱っこで抱えて空の散歩も悪くないが、やっぱり2人で空を飛んでデートとかしてみたいしね。


 そういう訳で俺は飛翔魔法を付与した装備を開発することにした。


 なんだかユメハさんがドンドン無敵に近付いている気がするが――俺は気にしないのである。


 どの道、将来的には世界最強の生物になるんだし。


 問題はどういう装備にするかということだ。


 腕輪は既に左右の腕に付けられているし、イヤリングやネックレスは念話装置で埋まっているし、頭にはリボンが付けられている。


「指輪は剣を握るのに邪魔になるし、足輪とか見栄えが悪いし、いっそ服や下着とかに……着替え全部に付与するわけにもいかんなぁ」


 あ~でもない、こ~でもないと悩むが、思ったより良いアイディアが浮かんでこない。


「こういう時はゼロベースで考えるか」


 既存の装備を無視して、飛翔魔法を付与した装備に最も相応しい物を考える。


「なるべく身体の中心に身に付けていられる物が良いからネックレス……いや、ペンダントが良いかな」


 丸いメダルを首からぶら下げる系統のペンダントなら刻印を刻むのもやりやすい。


 問題は既に念話装置の一部であるネックレスが存在することだが……。


「ふむ」


 そもそも俺は念話装置がイヤリングとネックレスの2つ1組であることが、あんまり気に入っていなかったのだ。


 可能ならスマホ並みの情報端末機器として1つの極小端末に組み込んでしまいたいところなのだが、流石にスマホを作るのは難易度が高過ぎる。


 もう、いっそメダルの中に念話装置の機能を組み込んでしまえば……。


「いや。待てよ?」


 そこで思考に一旦ストップを掛ける。


 ゼロベースで考えることにしたから思い当たることなのだが、根本的なことを言えばユメハは別に魔術の専門家スペシャリストというわけではないのだ。


 そりゃ並の魔術師よりは上だとは思うけど、それでも俺と比較してしまえば劣るのは当然の話であり、俺を基本として考えるのは間違えている。


 今まではユメハの天才的なセンスと俺が装備を微調整することで問題なく運用して来たが、これ以上ゴチャゴチャした装備を身に付けさせると余計な負担になるのではないだろうか?


 具体的に言えばユメハの剣士としての実力を俺の装備が足を引っ張る可能性も捨て切れない。


 今は大丈夫でも将来的にギリギリの場面で勝敗を左右しかねない。


「ということは、ユメハの装備に付与された刻印魔法の全てと連動させてサポートしてくれるような魔法が必要か」


 ユメハが最低限の指示だけを出せば、後はサポート魔法の方で最適な判断を下して装備を運用してくれるような魔法。


 こうなると飛翔魔法は完全におまけになってしまうし、そもそもユメハの装備を根本から作り直す必要がある。


「でも考えてみればユメハが絶対に手放したくないと思っている装備ってリボンくらいだよなぁ」


 あれには常時発動している翻訳魔法が掛かっているだけなので完全に独立していると考えても良い。


 それより問題なのはサポート魔法などという、あまりにも複雑になりそうな魔法を俺が組み上げられるかどうかという点だ。


「俺の意識の一部を切り離してメダルに刻み込むのは……駄目だな」


 俺がユメハを嫁にした際に1つだけ使用を禁止された魔法が存在する。


 それは俺の意識を切り離して組み込む、分身体を作り出す魔法だ。


 理由としてユメハは俺がアリサに変身していても簡単に正体を看破出来る特性があるので、一部とはいえ俺の意識を組み込む分身体は《偽物だけど一部本物》という認識になるので扱いに困るのだそうだ。


 俺本人ではないから愛情を注ぐわけにはいかないが、後で意識を統合した際には俺の経験の一部として組み込まれてしまう訳で、俺の記憶の中にユメハに冷たくされた経験が残るのをユメハが嫌がった。


 そういう訳で俺の分身体か、それに類似する魔法の使用は禁止されているので使えない。


「そうなると完全に独立した意思のないプログラムみたいなのを組み込む必要があるな」


 うん。考えるまでもなく凄く面倒臭そうです。






 色々と1人で考えた結果、俺は最終的に訓練から帰って来たユメハに相談することにした。


「飛翔魔法! 欲しい、欲しい、欲しい!」


 ユメハは話の最初の部分だけで大いに興奮してしまったので話にならなかったけど。


「リオに抱っこされて飛ぶのも良かったけど、一度くらいは自分で飛んでみたかったのよ♪」


「そ、そうですか」


 初っ端から脱線してしまったが、ともあれ軌道修正してサポート魔法の話に移る。


「別に私をサポートするだけならリオの意識の一部を移す必要ないんじゃない?」


「あ」


 ユメハに指摘されて気付くが、確かに言われてみればその通り。


 必要なのは最低限の自律行動が出来て、ユメハの行動から学習して最適なサポートが出来るシステムなわけで、そこに態々俺の意識の一部を移す必要はないのだ。


 俺には意識の一部を移すという方法があったので、先入観に囚われて根本的な部分を見落としていた。


「とは言ってもゼロから自律行動出来るサポート魔法を組み上げるのは時間が掛かるから、やっぱり意識の一部を移す方が手っ取り早いんだよなぁ」


「リオじゃなくて私の意識の一部は移せないの?」


「……それだ」


 うん。これもやはり先入観に囚われていたのか、俺の意識を移すことに拘らずにユメハ本人の意識を移せば最適なサポートが出来るのは道理だ。


 こうしてユメハの協力を得て、計画はとんとん拍子に進んでいくことになった。


 やっぱり1人で考えるより、愛する嫁と一緒に考えた方が上手くいくね。


「こうなると、もうメダル型に拘る必要もないな」


 飛翔魔法を使うという名目があったから身体の中心に近いメダルのペンダントが最適と判断したのであっても、サポート魔法を付与するのならメダルである必要はない。


 ユメハと相談しながら色々な方針を検討していくことになった。


 うん。1人でやるより圧倒的に楽しかった。




 ◇◇◇




 数日後。


 ユメハ専用サポート魔法、通称ユメⅡが完成した。読み方はユメツー。


 形状はミスリルで作られたソフトボール大の球体で、ユメハの装備全てと連動させることで最適な運用を可能とし、更にユメハの身体から漏れる魔力を集めて保存しておく機能を持っている。


 飛翔魔法というのは魔力を身体に纏って飛ぶ魔法なのだが、空気中に漂う魔素が人間にとって猛毒であるように、他人の魔力が毒になる可能性もある。


 だからユメハ本人の魔力の余剰分を集めることによって飛翔魔法の運用を可能にするというアイディアだった。


 ちなみにユメⅡはユメハの肩のあたりをフヨフヨと浮いて追従する設定になっている。


 飛翔魔法で飛んでいるのでユメハが全力で移動しても――多分、大丈夫だと思う。


 流石に世界最強の生物の一族の全力疾走を確実に飛翔魔法で追従出来るか自信がない。






「ぎゅ~ん! ぐるぐる! ばびゅ~ん!」


 そして現在、ユメハは意味不明な擬音を口で表現しながらユメⅡの支援を受けて飛翔魔法のテスト中だった。


 うん。これを動画で撮影して将来のユメハに見せたら確実に黒歴史になりそうな場面だけど、ユメハが楽しそうなので水は差さない。


 そういえばカメラ魔法は開発したけど、動画魔法は開発していなかったなぁ。


「あははは!」


 ユメハは非常に楽しそうに、更に初めてとは思えないくらい巧みに空を飛び、時々装備を起動させて色々なことを試している。


 うん。水中活動の時も思ったけど、既に俺より上手いです。


 俺も飛翔魔法で飛んで様子を見ているが、同じ動きをやれと言われても即座に無理だと断言出来るくらいには。


(俺の嫁が益々無敵になってしまった)


 まぁ、俺が趣味でユメハの装備ばかり充実させているのが原因だけど。


「リオ。何か的を用意してぇ~」


「はいはい」


 俺はユメハのリクエストに応じて次元収納アイテムボックスの中からユメⅡを作る際に失敗作として廃棄予定だった小型の飛行物体を複数取り出す。


 うん。色々と試行錯誤した結果として今の球状に落ち着いたが、当初は色々な形の飛行物体を試作していたのだ。


 こっちはユメハではなく俺の魔力で飛んでいるけど。


「いくぞ~」


「やって」


 そして俺が指をパチンと鳴らすと同時に複数の飛行物体はユメハを囲むように高速で飛翔を開始した。


 失敗作とはいえ、元となったのはユメハをサポート出来る性能を持った飛行物体だ。


 その飛行性能はユメⅡに勝るとも劣らないわけで……。


「ユメⅡ!」


 ユメハの指示によってユメⅡから発射されたレーザーのような攻撃――俺が付与した雷撃を直線に撃ち出す雷光魔法によって一瞬で全てを撃ち落とされた。


「おうふ」


 流石ユメハの意識を一部とはいえ移されたユメⅡ。


 あの速度で飛び回る複数の物体を完全に捕らえて瞬時に撃ち落とすとは。


 うん。あくまで最低限の自衛も必要だろうと付属した唯一の攻撃魔法だったのだが、ユメⅡが使うと立派な最強装備ですわ。


「まぁまぁね」


「……そうですか」


 ユメハを満足させる程の結果ではなかったみたいだけど。






 ユメハとユメⅡは元々同一人物なので単純な意思疎通なら念話のようなもので簡単にやり取り出来る。


 更に言えばユメⅡはユメハの意思を汲むことも出来るので、何も指示しなくても大体の望む行動は分かるらしい。


 後は微調整を繰り返していけば阿吽の呼吸で連携出来るだろう。


「良い感じだわ♪」


 ユメハも大分ユメⅡを気に入ったようだ。






 そうして装備と充実させたユメハは――何故か世界最強の生物に勝負を挑んだ。


「装備に頼っている内はまだまだねぇ」


「……ぐふっ」


 そして手も足も出せずに負けた。


 壁は想像以上に高かったようだ。




 ◇◇◇




 装備を充実させたユメハは――今日も名残惜しそうに近衛騎士団の訓練に出掛けて行った。


 ユメハが出掛ける時には抱擁とキスが定番になっているが、毎回のように後ろ髪引かれるように振り返りながら出掛けるので、つい今日は休みにしてデートしようと言いたくなる。


「いってらっしゃ~い」


 この隣で見張っている世界最強の生物さえいなければ。






 ユメハの装備も一段落着いたので、私は久しぶりにアリサに変身して冒険者ギルドへと向かう。


 考えてみれば馴染みの女性職員サリーアに新婚旅行から帰って来た報告もしていないし、預けておいた念話装置も受け取っていない。


 いや。報告自体は念話装置で済ませてあるが、直接会うのは本当に久しぶりだ。


(そういえばお土産も渡していないな)


 お土産と言ってもユメハが選んだ地方の特産菓子詰め合わせだけど。


 そうして私は冒険者ギルドに辿り着き、扉を開けて中に入ったのだが――中にいたサリーアが私を見つけるなり天を仰いで『あちゃ~』みたいな顔をしていた。


 なんだか知らないけど私は話を聞こうとサリーアに近付いて……。


「あんたが噂の殲滅魔女?」


「……はい?」


 唐突に声を掛けられて困惑した。


 声のした方に視線を向ければ4人組の男女で、私に声を掛けてきたのは先頭に立っている細身で灰髪緑目の女。


 印象としては野良猫を連想させるような雰囲気の女で、軽装でいかにも素早そうという感じだった。


「殲滅魔女の噂はあたし達も聞いてるよ。Sクラス冒険者相当の実力者で、冒険者ギルドでも注目の新人だってね」


「……そうなんですか」


 まぁ、いきなり一方的に話し掛けてくるので私は普通に困惑していますが。


「だがSクラス冒険者相当って奴は探せばゴロゴロいるもんで、何を隠そうあたし達もそう呼ばれてるのさ」


「はぁ」


「でも本当にSクラス冒険者相当の実力があるのなら、さっさと昇格を済ませちまえばいい。それが出来ていないのは何故なのかね?」


「…………」


 最後の昇格手続きの段階で止めているからです――とは勿論応えずに私は沈黙で返す。


 この女が何を言いたいのか段々分かって来た。


「つまり?」


「あたし達を差し置いて冒険者ギルドで注目されているあんたに本当にそこまでの実力があるのか……あたし達が確かめてやるよ!」


 言葉と同時に女が動いて、気付けば私の目の前に女の拳が突き出されていた。


 全く見えなかったとは言わないが、それでも私が反応出来ない速度で攻撃されて寸止めされたようだ。


「おやおや。殲滅魔女様はこの程度の攻撃も避けられないのかい?」


 嘲るように、見下すように私に嫌味臭く言ってくる女から視線を逸らし、私はサリーアに視線を向けると……。


「っ! っ! っ!」


 彼女は必死に私に向かって両腕で×を作っていた。


 どうやら魔法を使って消し飛ばすのは駄目らしい。


「……1つ質問があるのですが」


 仕方ないので別の手を考えて実行することにした。


「なんだい?」


「どうして寸止めを?」


「はっ。あんたの綺麗な顔を血塗れしないよう配慮してやったのさ」


「単純に勝ち逃げしたかったからでしょう?」


「……なんだと?」


 うん。面倒だけどサリーアに免じて挑発して物理でボコボコにしよう。


「っ! っ! っ!」


 サリーアがさっき以上に必死に両腕で×を作って首を横に振っている気がしたが、きっと気のせいだろう。


「私に確実に勝てる保証がなかったから寸止めなんかして勝った気分で終わらせたかったのでしょう? 実際に当ててしまえば私も反撃してしまうかもしれませんから、臆病なあなたとしては寸止めするしかなかったんですよねぇ」


「…………」


 私の挑発を受けて女はスッと目を細め――パァン! という音が周囲に響き渡る。


 今度こそ女の拳が寸止めされることなく私の顔面にヒットして、視界の隅でサリーアが頭を抱えて蹲っていた。


「……な?」


 そして私を攻撃した女は、自分の拳が陥没して骨まで砕けたことが直ぐには理解出来なかったのか呆然としていた。


 うん。私の絶対防御壁アイギスを素手で殴ったらそうなるよねぇ。


「い……ぎぃっ!」


 女はやっと自分の状態を認識したのか壊れた拳を抱えて蹲り、同時に女の背後に控えていた3人の内の1人――筋肉質で巨体を持ったスキンヘッドの男が私に向かって駆けて来て、その剛腕を振りかぶり……。


「見た目の割に案外非力なんですね」


「なぁっ……!」


 私に片手で攻撃を受け止められて驚愕していた。


「馬鹿な! そんな細腕の何処にそんなパワーが……!」


「……パワーを出すのに筋肉に頼っているようでは2流らしいですよ」


 私はユメハの受け売りを話すが、実際には私のパワーは魔力での身体強化の賜物だけどね。






 1分後、私は4人組を物理でボコボコにして床に沈めた。


「あぁ~あ。だから止めておいた方が良いって言ったのに」


 それを見てサリーアはゲンナリしながら近付いて来た。


「この人達なんだったの?」


「帝都の外からアリサさんの噂を聞きつけてやって来たAクラス冒険者のパーティです。パーティメンバー全員がAクラスで4人合わせればSクラス冒険者に届くだろうって言われていた凄腕という話だったのですが……」


「今更Sクラス冒険者程度に届くって言われてもねぇ」


「ですよねぇ~」


 話を聞くと彼らは帝都の冒険者ギルドに入るなり私の担当受付嬢であるサリーアに私を出せと詰め寄り、サリーアは顔を引き攣らせながらも彼らから話を聞き出したらしいのだが……。


「Sクラス冒険者への昇格試験を受ける為の実績作りとしてアリサさんに勝負を挑みにきたそうです。勿論、私は止めたのですが……」


「説得する前に私が来てしまったと」


「です」


「まぁ、冒険者というのは無駄に自分に自信がある人が多いですからねぇ」


「……アリサさんも冒険者ですからね?」


 そういえばそうでした。


「まぁ、彼らも現実を思い知ったことでしょうし、これからの成長に期待しましょう」


「私に物理で制圧されている人達には過度な期待ではないでしょうか?」


「……アリサさんは基準がおかしいだけです」


「…………」


 流石にユメハ――というかサイオンジ公爵家に身を寄せている私としては言い返せない。


「それより良いタイミングで来てくれました。実はアリサさんに受けて頂きたい依頼があるのですよ♪」


「……うわぁ」


 サリーアにとっては良いタイミングかもしれないけど私にとってはバットタイミングだったみたい。


 サリーアの持ってくる依頼に良い予感はしなかった。




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