013 一発、二発。
一発、二発。
その鎌は何かを切り裂くことはなく、甲高い金属音だけを雪原に撒き散らす。
私にはゆっくり動いているように見えているとはいえ、その鎌の勢いに何ら変化はない。
その斬撃を弾く毎、衝撃による痺れがビリビリと全身を駆け抜ける。
三発、四発。
その斬撃のどれもが鉄を切り裂く必殺の一撃。
致命打を丁寧に受け流し、弾く。剣と鎌の衝突した部分が欠け、破片が飛ぶ。
その破片が私の頬を狙い撃つのが見えるも、それと同時、奴が緩慢に次の一撃を振りかぶる姿が見える。
避けている隙などないだろう。
大剣を鎌に間に合うように握り直し、備える。
破片が頬を切り裂き、血が滲む。
五発。
左腕で大剣の腹を支え、奴の鎌を受け止める。
ひときわ大きな火花が飛び散り、私と奴の顔を照らす。
踏みしめている雪原が沈み込み、ギシギシと粉雪が圧し潰される感触が伝わる。
軽さを犠牲にし、「硬さ」だけを追い求めた金属”シロガネ鋼”。
本来なら盾などに使われるその素材、この広刃大剣に使われているのはそれだった。
剣であり、盾ともなる私の最高の相棒だ。
舐めてもらっては困る。
しかしこれでは防戦一方だな。私は心のなかでひとり呟く。
だが、これでいい。何故なら―――
フードの中で妖しく光る眼窩、その右目に一条の光が差し込む。
瞬間、炸裂。
その射線の始点には、公国の魔術師たちが並んでいた。
顔面を半分吹き飛ばされた骸骨が、何かを吠えるようにその顎を開く。
声帯がないせいだろう、その咆哮は誰にも届かない。
長距離の爆裂魔法。
その正確性と威力は見ての通りである。
彼らに背中を預けている限り、私は防戦一方で問題ない。
これが人間の戦い方だ。
リーパーは体を反転、魔術師たちの方に向き直る。
彼らは巨大な魔法陣を空中に紡ぎ、次の爆裂の一撃をチャージしていた。
「行かせるわけがないだろう!」
そのフードを無理矢理掴み、力任せに引っ張る。
振りかぶった鎌は軌道をずらされ、空を切る。
その一瞬の隙に光の線がローブを貫き、爆裂。
バランスを崩した細腕に大剣を差し込む。
肉を裂くような感触は無く、骨だけが砕ける音がした。
主を失った大鎌は雪原に落下、重みで雪が沈む。
途端、ガイコツが首から弾け飛翔。
その顎が右腕に食いついた。
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