010 「どういうことだ?」
「どういうことだ?」
思いも寄らない事を言われ、反射的に聞き返してしまう。
「フェーズ7の魔物が出てるからって、共和国と公国の共同討伐部隊が出てたはず。」
フェーズ7といえば、数十年単位で生きている魔物だ。
魔物というものはマナを体内に取り込めば取り込むほど強靭になることが確認されている。
それは魔物となってからの時間とほぼ比例するため、早急な討伐が必要とされる。
だが、全ての魔物を狩り尽くすなどは夢物語。
取り零しや見逃し等、何らかの理由で野放しにされる魔物も少なからず存在している。
ある程度の強さを持つ魔物に対して、便宜的にギルドは危険度を「フェーズ」という単位で定め、人々に危険を周知している。
殆どの魔物なら、もはや原型など留めていないほどマナに汚染されているだろう。
「ほら、これ。」
ルカは懐から紙の束を取り出す。いわゆる”新聞”だ。
そこには国境付近の村に避難命令が出ていることや、一週間前から公国共和国の精鋭部隊が討伐に向っていること、その魔物について等が事細かに書かれている。
今朝まで行っていたキラーベア討伐、どうして俺たちに依頼が回ってきたのか不思議ではあった。
なるほどようやく合点がいった。
「共和国の冒険者ギルドはその危険性を認知し”エンシェント・リーパー”と命名した、だってさ。」
読み上げながら、ふむふむと頷く。
「『古代の死神』ねぇ・・・安直というか、なんというか。」
記事に添付された写真を見ながら、ため息交じりに呟いた。
フードを被り、鎌のようなものを携えた骸骨。
なるほど誰がどう見ても死神である。
「フェーズ7なら、運良く出会えれば儲けものだな。」
片隅に書かれた懸賞金をなぞりながら、俺は言う。
もっとも、ギルドの討伐部隊も雑魚ではない。
おそらく来週当たりには彼らの手で鎮圧されていることだろう、俺達の出る幕ではない。
しかし、万が一出会ったならば。
きっと至高の時間を得られるだろう。
どちらが死ぬか、ギリギリの命のやり取り。
今の俺にとって、これ以上の楽しみなどあまりない。
「ベルのそういうところ、好き。」
ルカは頬杖をつき、ニコニコとこちらを見ていた。
はっと、口の端が笑みで歪んでいた事に気付いた。
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