第22話

「悪かった。

 今後は気を付ける」


 わしが世間知らずなのは間違いない。

 特に盗賊ギルドが絡む問題など、全く分からない。

 ここはヨハンに学ぶのが一番だろう。


「分かって頂ければ何よりです。

 では盗賊ギルドの連中が集まる前に、サッサとやりますよ」


「うむ」


 わしは言われた通りにしようとしたのだが、人の財布を奪ったり、衣服を脱がせるなどやったことがない。

 どうしてもモタモタとしてしまい、五人のゴロツキが腰に装備していた剣をはずのが精いっぱいでだった。

 その間にヨハンはテキパキとゴロツキから財布を奪ったばかりではなく、隠していた武器まで探り当て、衣服を逃がして丸裸にしていた。


「思った通りでした。

 若様が一瞬でこいつらを斃されてよかったです。

 この通り、毒を塗った暗器を隠し持っていました。

 中には降伏する振りをして近づき、ブスリと刺す奴もいます。

 暗器どころや、魔道具を隠し持っている奴もいます。

 これからも問答無用で先制攻撃してください」


「分かった。

 ヨハンの言う通りにしよう」


 ちょっと驚いた。

 もう盗賊ギルドともめないように、屋敷を抜け出すなと叱られると思っていたのだが、全くそのような素振りがない。

 それどころか、わしがまた屋敷を抜けだすのが当然と思っている。

 自分から叱られたいわけではないが、少々疑問に思ってしまう。


「ヨハンはわしを怒らんのか?」


「心底何かを知りたいという想いは、抑える事などできませんよ。

 私が注意して治まるような興味なら、こいつらともめた時点で跡形もなく消えてなくなっています。

 ですが若様は、直ぐに屋敷に帰るとは言われず、護衛を続けろと言われた。

 だったら若様が抜け出す前提で話さないと、どのような危険に遭遇されるか分かりませんからね」


 さすがヨハンだ。

 わし自身が理解していなかったことを、見事に言いあらわしてくれている。


「では行きますよ。

 遅れずついて来て下さい」


 ヨハンに言われて急いで後をついて行くが、ヨハンが身ぐるみはがした衣服どころか、わしが外した剣まで持っていない。


「ゴロツキ共の持ち物はどこにやったのだ?」


「魔法袋に隠しました。

 あのように目立つ物を持ってこの辺を歩いたら、たちまち盗賊ギルドに追い付かれてしまいます」


 全くもってヨハンの言う通りだ。

 わしの世間知らずはあきれるほどなのだろう。

 明日以降も屋敷を抜け出すのなら、よほど気を付けないと、命の保証がない。

 わし一人の事ならば、無謀の代償として受け入れられるが、クリスさんを巻き込むわけにはいかん。


「ヨハン。

 ある人と明日も会う約束をしているのだが、護衛を頼めないか?」

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